Re:STYLING MONO #3 チマヨベストの源流はオルテガ。ここからすべてが始まった。

#3 CHIMAYO


深い歴史をもつチマヨ織りによるベスト。
ニュースペインにとっての最後の未開拓地、リオ・グランテ峡谷北部の開拓者集団が入植した村の名前をとってつけられた伝統的機織り技術の産物だ。
遠くスペインの祖先が見てきた風景がこのベストをはじめ、バッグ、コートなどさまざまな形になって、世界に広がっている。

1918年、雑貨店を開いたオルテガは店内に木機を置き、手織りのブランケットを販売した。
水平の足踏み式木機によるチマヨ織りの人気は第二次大戦後、さらに広がり、バッグ、コート、ジャケット、ベストなども販売されるようになったのである。
初代ガブリエル・オルテガがこの地で始めた伝統の機織り技術は、1918年に五代目のニカシオが開いた雑貨店での木機によるブランケット類の販売へと至る。第二次大戦後、現在のようにベストやバッグなども家内工業的に生産し販売するようになった。

“チマヨ織り”の歴史はおよそ17世紀後半にさかのぼる。ニュースペイン(現在のメキシコの前身)からリオ・グランテ峡谷北部(現在の米合衆国ニューメキシコ州チマヨ村)へやってきたスペイン系開拓集団のなかにガブリエル・オルテガという若者がいた。辺境地での生活は厳しく、当時の人々は衣類、毛布、敷物などをつくりだす機織りと、それらの材料をとるための牧羊や紡績技術を脈々と受け継ぎながら自給自足の生活を続けていた。四代目まではそのような暮らしが続くが、1885年、チマヨ南西約24キロにあるエスパニョーラ近郊に鉄道が敷かれ、アメリカ東部の文化様式が流入し、トタン屋根、缶詰食品、ミシンなど多種多様の生活用品がもたらされるようになると、村の環境も激変する。

 この地を訪れた東部の人々はその文化様式に驚き、チマヨ織りのブランケットや手工品を土産、または新たなる商材として買い求め、チマヨ織りに産業の芽が出始める。1918年、五代目ニカシオとその妻がチマヨに雑貨店を開き、木機によるブラケット類の販売を始める。第二次大戦後、現在に続く店舗を構え、バッグ、コート、ジャケット、ベストなど、チマヨ織りの伝統を表す商品が拡大、広く知られるようになった。今日販売されている製品の大半は、チマヨおよびその周辺に住む織り手たちによって、昔ながらの製法で家内工業的に生産されている。

チマヨベストの源流はオルテガ。ここからすべてが始まった。


敬虔なカトリック教徒であるスペイン系の移民と、ナバホ族に代表されるネイティブ・アメリカンの文化などが、交じり合いながら独自の発展を遂げたチマヨ・カルチャーは、独特の風景、匂い、リズムで異国のひとびとを時に温かく迎え、時に厳しく拒絶する。唐辛子を糸でつないだ“リーストラ”は赤唐辛子を乾燥保存する伝統的な方法。辛口スパイスとして知られるが、虫よけとしての効果もある。

オルテガと並び称される高品質の手織物ショップ、トルヒーリョス・ウィーヴィング・ショップのもの。

こちらもオルテガから分家した
センチネラ工房のオリジナル。
チマヨファンの間では一番芸術的との評価も!?

チマヨの元祖、オルテガファミリーが手がけるベスト。
民族的なテイストが強く、王者の風格が漂っている。

AMERICRAFT社の製品で70’sくらいのもの。チマヨ製品ではないが、すでにこの時代このスタイルはコピーされている。

SOUTHWEST ARTS&CRAFTS社のチマヨベスト。少し横幅があり、前合わせにボタンとループがついている。

東京・高円寺のヴィンテージ・クロージングショップ「D Clothing」の石川渉さんはチマヨベストの魅力について「数百年にわたり同じ手法で代々作り続けられている工芸品。天然草木染なので、年代が経つにつれ褪せていく感じも魅力。ヴィンテージではウールの詰まった風合い、現行にはないスペックも魅力です」と語る。

同じデザイン、配色がふたつとない、手工芸品チマヨベストの魅力


スカーレットレッドを基調に、スカイブルー、ブラック、ホワイト、グレーの濃淡を組み合わせたオルテガのチマヨベスト。
くるみボタンを4つ使っている。

オルテガのチマヨベスト。
同じスカーレットレッドを基調にしても、生成りのホワイト、ブラウンのグラデーション、
グレーなどの配色で赤が落ち着いて見える。こちらはブラウンのくるみボタン。

ソニックブルーを基調としたオルテガのチマヨベスト。
オルテガ社は先祖代々8代にわたって入植当時と同じ生産方法を続けていることに強い誇りをもっているという。
創業一家の家族、血縁者、近隣の親類縁者が中心となって事業を続けている。

表はブラックの無地、裏にはドクロのマーク。参考商品。
チマヨベストの魅力として、同じ配色やデザインが
ふたつとしてないことがあげられる。
手織りならではの、仕上がりのファジーな感じも他の衣類にない魅力。

こちらはセンチネラ工房のチマヨベスト。元祖オルテガから分家するような形でセンチネラやトルヒーリョスなど、有名チマヨ織り工房が散在する。これはジッパー仕様になっている。

チマヨアイテムをはじめニューメキシコのお土産まで当時の空気感たっぷり


※モノ・マガジン2011年2-16号に掲載された情報となります。

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土居輝彦(teruhiko doi)
  • 1982年より㈱ワールドフォトプレス社の雑誌monoマガジン編集部へ。 1984年より同誌編集長。 2004年より同社編集局長。 2017年より同誌編集ディレクター。 その間、数々の雑誌を創刊。 FM cocolo「Today’s View 大人のトレンド情報」、執筆・講演活動、大学講師、各自治体のアドバイザー、デザインコンペティション審査委員などを現在兼任中。