Re:STYLING MONO #26 足首を保護する斬新なデザインで歴史に残る傑作シューズとなった「コンバース」のキャンバス オールスター

#26 コンバース


6月のアメリカはNBAファイナルに進んだどちらのチームがチャンピオン・フラッグを掲げるのか? が国民的な関心事となる。全米4大スポーツのひとつであるバスケットボールがこれほどの人気になった理由としてはこのスポーツがアメリカ生まれであることが大きいだろう。源流にクリケットやラグビーがある野球やアメフトとは異なりこれはマサチューセッツ州の学校講師であった人物が19世紀に冬期の室内運動として考案し、ルールやスタイルなどすべてがアメリカで作られたものだ。ジェームス・ネイスミスというその人物が考案したルールでの初めての公式試合は1892年に彼が勤める学校で行われた。たちまち大人気となったバスケは急速に世界へと広まり、1904年にはオリンピックの公開競技となる。そんな時代に一足の専用シューズがマサチューセッツで誕生する。1917年発売のコンバース「キャンバス オールスター」である。

降雪量が多く、森林率も高いニューイングランド地方の地域的な自然条件下で機能するシューズを作ることから始まったコンバース。同じマサチューセッツ州で、やはり冬期の室内スポーツとして誕生したバスケットボールとは深い縁があった。


1917年誕生のバスケットボール専用シューズ「キャンバス オールスター」は足首を保護する斬新なデザインで歴史に残る傑作シューズとして知られる。驚くべきはその素材やデザインが、21世紀に入ってもほとんど変わっていない点でその完成度は発売当時から高かったのである。そしてキャンバス オールスター発売から95年目の今年、クラシックなルックスはそのままに非加硫製法によって軽量化を実現(同社比で片足約100gの軽量化)し、屈曲性やクッション性を高めた進化系モデル『キャンバス オールスター カラーズ エヴォ HI』がいよいよ発売されることになった。着目すべきは95年間も変わらぬ完成度を誇っていたオールスターが、素材やデザインはほとんどそのまま、ソールの製法を中心に片足約100gの軽量化を実現したこと。

また、アウトソールに入った屈曲溝で歩きやすさを向上しており、ミッドソール、クッション材、そしてカップインソールの圧縮E.V.A.3層構造がクッション性を約10%も高めている。過去の名品との比較はナンセンスだが、これが21世紀のテクノロジーでようやく95年目の進化を遂げられたと考えればこの“進化系オールスター”の存在意義が理解できるのではないだろうか。新しいコンバースの履き心地はまさに21世紀のクラシックモダンなのである。

20世紀初頭のバスケットボールは高校や大学を中心としたアマチュアの競技。現在もNBA以上の熱狂が伝えられる「3月の狂乱」と言われるNCAA、全米大学バスケットボールトーナメントはプロリーグよりも歴史が古く、コンバースはそんな時代から知名度を上げていった。

キャンバス オールスター カラーズ エヴォ HIに採用されたカラーは4色。これはキャンバス オールスターがバスケットシューズからストリートへと飛躍した記念すべき1971年モデルのカラーリングを採用したもの。クラシカルな色合いがとてもカワイイ。

デザインを見てもほとんどオリジナルのキャンバス オールスターと変わらないが、実際に手にしたり、あるいは履いてみたりするとその軽さが実感できる。絶対的な定番の進化はそれだけでニュースなのである。

翼が生えた履き心地。進化系オールスターの奇蹟


コンバースは1908年、米国マサチューセッツ州モールデンで創業された。創業者はマーキス・M・コンバース。雨や雪の中でも作業できるラバーシューズの製造からスタートした。創業者の視点は正しく、そうしたシューズの需要は増えるばかりだったが、冬場に集中する販売量の偏りを是正するため、年間を通しての需要が見込めるシューズの製作を思いつく。マーキス・コンバースが着目したのは、まだ誕生して間もないスポーツであったバスケットボール専用のシューズ。この競技の将来性を見込んでの決断だったが、足首を保護するハイカットのデザインは斬新で、シューズが目立つ室内競技の特異性も手伝って「キャンバス オールスター」は人気を博していく。


特に同社シューズの宣伝・普及活動に功績があったのはチャック・テイラーという人気選手で、いまもオールスターのアンクルパッチには同選手のサインが入っている。このサインが製品に入れられるようになったのは1946年から。奇しくもこの年は、アメリカで初めてプロバスケットボール・リーグが発足した年でもある。以降、コンバースはオールスター以外にも数多くの名品を世に送り出すブランドとなるが、70年代に入ってから、このスポーツシューズがストリートのシューズとしても人気となっていく。

特に「キャンバス オールスター」はデニムやコットンパンツ、そしてTシャツとの組み合わせでアメリカンカジュアルとして世界的な流行となり、世界に知られるようになる。コットンのアッパーとゴムのソールというシンプルな素材と、100年近く経ったいまでもほとんど変わらない完成されたデザインは「絶対的定番」として強固な地位だが、登場から95年目の今年、その進化系とも呼ぶべき「キャンバス オールスター カラーズ エヴォ」が登場。スタイリングはそのままに、軽量化やクッション性などを高めて“翼が生えた履き心地”を実現している。

考えてみて欲しい。10㎏の製品を100g軽量化するのではないのである。わずか数百gのシューズを片足約100gも軽量化できたというこの驚くべき事実に感動すべき。軽量化だけではなく、クッション性と屈曲性も高められた21世紀のオールスター。その履き心地を、昔からの愛用者ならばとりあえずは試してみるべきだと思う。

キャンバス オールスター カラーズエヴォ HIに採用されたカラーは、ゴールド、グリーン、パープル、ライトブルーの4色。そのカラーリングはまさに70年代の色。デニムやコーデュロイパンツ、あるいはアウターの色に合わせて軽快な足もとを楽しみたいもの。ちなみに、ライトブルーは真新しいものもいいが、洗濯を繰り返して色落ちさせたものと同じく、色落ちしたデニムの組み合わせで最強。

白系パンツの足もとをさわやかに演出してくれるゴールド。オールドモデルのフェイスをきちんと踏まえた、マニアにも嬉しいデザインなのである。


キャンバス オールスター カラーズ エヴォ HI
グリーン

キャンバス オールスター カラーズ エヴォ HI
ゴールド

キャンバス オールスター カラーズ エヴォ HI
パープル

キャンバス オールスター カラーズ エヴォ HI
ライトブルー


初出:ワールドフォトプレス発行『モノ・マガジン』2012年3月2日号


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土居輝彦(teruhiko doi)
  • 1982年より㈱ワールドフォトプレス社の雑誌monoマガジン編集部へ。 1984年より同誌編集長。 2004年より同社編集局長。 2017年より同誌編集ディレクター。 その間、数々の雑誌を創刊。 FM cocolo「Today’s View 大人のトレンド情報」、執筆・講演活動、大学講師、各自治体のアドバイザー、デザインコンペティション審査委員などを現在兼任中。