
日本橋とやま館は、富山湾の海産物から、井波彫刻や越中和紙といった工芸まで、富山の “本物” を都市の中心で体験できるアンテナショップだ。食・技・文化を横断するセレクトは、単なる物販を超え、富山の地勢と気質をそのまま写し取ったミュージアムのようでもある。Deepな富山を発見・発掘をしにさっそくmonoWeb編集部は取材にいってみた!
富山料理「富山はま作」


暖簾をくぐれば “富山湾直送の海鮮” と “富山の郷土料理” を本格和食で味わえる、日本橋とやま館併設の和食店が会場だ。富山はま作は、コースから定食、単品まで幅広く、富山の名物を食べ・体験することが出来る。
豪快で贅沢な富山の食材

海と山の恵みが、そのまま暖簾の奥で “料理” として立ち上がる。東京にいながら富山の季節を最も鮮明に感じられる豪快な食材。ます寿司、鮮魚、白えび、ホタルイカ、そして地酒。富山湾の短い旬を逃さず、素材の輪郭を崩さず、 “富山の食材を使った料理” ではなく、富山そのものを食べる体験が待っている。

富山県観光推進局長山下章子(やましたあきこ)さん
富山が “熱い” 理由は3つ。まず、世界的な注目の高まりと、県が自ら「寿司といえば富山」と発信する “寿司県” キャンペーンの存在。次に、今年新たに開放を予定する「黒部宇奈月キャニオンルート」。そして、富山の本質である “上質(じょうしつ)”、歴史・文化・地域に根ざした “本物” の価値だ。にわかづくりではなく、土地に積み重なった本物こそが富山の魅力の源泉だと締めくくった。
富山の恵み食べてみた!

その恵みは、富山独特の地形。海抜0mから水深1000mの富山湾、そして標高3000m級の立山連峰へと一気に立ち上がる、約4000mの高低差が生み出す豊かな漁場によって育まれている。

「桜鱒を笹で包んで押し固めた、富山発祥の押し寿司」。そのルーツは江戸時代の献上品にさかのぼり、のちに駅弁として全国に名を広めた。富山といえばまず思い浮かぶこのます寿司は、笹の香り、鱒の淡い紅色、木製わっぱの丸い形が織りなす “三位一体の美しさ” を味わえる逸品だ。

川上鱒寿し店・丸龍庵・高田屋の三店を食べ比べてみると、同じます寿司でも味わいは驚くほど異なる。川上鱒寿し店は、厚みのある桜鱒を半レアで仕上げたジューシーなタイプ。丸龍庵は、桜鱒の風味が最も強く、ふわりとほどけるような柔らかさが特徴だ。そして高田屋は、奇をてらわない王道の味わいで、ます寿司の“基本形”ともいえる落ち着いた一枚に仕上がっている。

「富山湾の神秘」と称され、春の訪れを告げる代表的な味覚。富山のホタルイカはほとんどがメスで、ひときわ大ぶり。旨みが濃く、味わいの深さが段違いだ。豊かな漁場で水揚げされるため刺身でも鮮度は抜群で、口に含むと海の香りがふわりと立ち、噛むほどにワタの甘みがひろがる逸品となっている。

白えびは「富山湾の宝石」と称される希少な海の恵みで、透き通るような美しさと上品な甘みが魅力だ。漁期は4月〜11月。富山市岩瀬地区や射水市を中心に水揚げされる。サクサクとした軽やかな食感に、海老の旨みがぎゅっと凝縮され、ひと口で富山の豊かさを感じられる。


富山のバイガイは、富山湾の深海が育んだ “富山ならでは” の名物貝。噛むほどにシコシコとした強い歯ごたえが際立ち、旨みがじわりと増していく。河内屋の昆布巻かまぼこは、北前船文化を受け継ぐ富山独自の逸品。肉厚の昆布を “板の代わり” に使い、昆布の旨みをすり身へ移すという、昔の人の知恵が詰まった一本だ。
肴に合う富山の地酒

立山連峰から届くミネラル豊富な名水と、富山県産米が生むプレミアムな日本酒、IWA、満寿泉、三笑楽を唎酒する贅沢な時間。IWAは、ドン・ペリニヨンの元醸造最高責任者リシャール・ジョフロワが手がける一本。香りは華やかで、口当たりはなめらかかつ軽やか。後味はキレがよく、長い余韻が続く。桝田酒造店の満寿泉は、富山を代表する “食に寄り添う日本酒”。吟醸酒ブームの源流をつくった蔵として知られ、料理の旨さを引き立てる繊細な味わいが魅力だ。そして三笑楽酒造の三笑楽は、世界遺産・五箇山の厳しい自然が育んだ “骨太の旨味” を持つ地酒。力強い旨味と厚み、しっかりとしたキレがあり、富山の山海の恵みと抜群の相性を見せる。

三郎丸蒸留所のスモーキーハイボールは、北陸最古の蒸留所が生んだ、日本初の “スモーキー特化型” ハイボール。多層的で力強いピート香、キレのある味わい、そして糖質0・香料0・着色料0の無添加仕様が特徴だ。富山の恵みの食材と相性は抜群で、スモーキーさが旨みを引き立てる。喉ごしの良さが食欲を刺激し、食中酒としても優秀な一杯に仕上がっている。
立山黒部アルペンルートは2026年に開業55周年

黒部ダムは、日本一の高さを誇るアーチ式コンクリートダム(186m)で、電鉄富山駅を起点に立山連峰(最高峰3,015m)へと向かうルートの象徴的存在だ。全線開業から55周年を迎えたルートの途中にあるこの巨大水力発電施設は、北アルプスの中心部、中部山岳国立公園内に位置し、世界有数の山岳観光ルートの名物として揺るぎない地位を築いている。観光地としての人気も高く、なかでも夏の見所である観光放水(毎秒10トン以上)は、黒部ダムを象徴する迫力の光景だ。
黒部宇奈月キャニオンルート、10月開通にむけて準備中

電源開発の軌跡を辿る地底18kmの冒険
黒部川第三・第四発電所の建設に合わせて整備された工事用ルートが、「黒部宇奈月キャニオンルート」として一般開放される。黒部峡谷・欅平から黒部ダムまで、約18kmにわたって続く新たな山岳ルートだ。2018年には関西電力と富山県が協定を締結し、長年 “関係者以外立ち入り禁止” だった道がついに旅行商品として実現した。


新ルート「黒部宇奈月キャニオンルート」は、立山黒部アルペンルートと黒部峡谷鉄道を結ぶ、これまで一般人が立ち入れなかった関西電力の施設群を巡る新たな観光ルートだ。黒部峡谷鉄道の鉄橋工事進め、2026年10月の運行開始を目指している。全線開通の見通しは、2026年7月上旬に公表される予定だ。

このルートの魅力は、普段は関係者しか乗れない5種類の乗り物、坑内トロッコや竪坑エレベーターなどを乗り継ぎながら進む、唯一無二の移動体験にある。さらに、ルート上でしか見られない限定の絶景や、裏側から望む剱岳など、特別な景観が次々と現れる。そして今も関西へ電力を送り続ける黒部の電源開発、その100年以上にわたる歴史を “現場で体感できる” ことも大きな魅力だ。参加は事前申し込み制のツアーのみで、2026年は約2700万人に限定されている。専門ガイド、安全添乗員、警備員が同行し、参加者は建設会社のマークが入ったツアー参加用ヘルメットを着用して進む、万全の安全体制が整えられた探訪ルートだ。

日本橋とやま館は、東京の真ん中で富山の質感を確かに体験できる場所だった。取材を通じて距離の概念がぐっと近づき、その手応えが「次は現地で、もっと深く掘りたい」という余白を静かに残した。


































