商用車大戦? 歴史で見る商用車ヒストリー


 モノ・マガジン888号(発売中)では17年ぶりにフルモデルチェンジしたハイゼットを特集しているがハイゼット、軽商用車としてはモチロン、趣味のベース車両としても注目される1台。そこで今回は商用車をテーマにお送りいたす。ウン。登場車種は筆者の独断と偏見でありますのでご了承lくださいませ。

 その昔商用車といえば多くはトラックと表裏一体で、それ以外となると黒塗りの輸入車というのが戦前の日本だった。無論、トラックも輸入車が多かった。ちなみに日本初の国産自動車は1904年の山羽式蒸気自動車とされている。動力は車名の通り蒸気。1911年には日産の源流でもある「快進社自働車工場」が純国産車を開発。その頃になると中国大陸での戦争へのキナ臭ささが立ち込め始め、「輸入に頼ったモータリゼーションではいかんのではないか」的な風潮で東京瓦斯電気工業(IHI、いすゞの前身)が国産初のトラックを生産、翌年には三菱A型が三菱造船によって量産された。1936年にはトヨダAA型が誕生。こんな感じでとても商用モデル専用と高らかに謳うモデルはなかった。そんな中、1937年(昭和12年)に発売されたのが日産バンだ。

車名もそのままバンというわかりやすい元祖商用車。これはアメリカのグラハム・ページ社から機械設備を買取ったり譲渡されたりして生産された。3670ccの直6エンジンは85PSを発生。

 次の商用モデルはトラックなのだが、たま電気自動車(のちのプリンス自動車)が1947年に手がけた貨物自動車。

コレはなんとEVなのだ。これは戦後でガソリンが統制され手に入りにくい時代がその誕生背景。荷台の下にバッテリーを置き、ボンネットの中にはエンジン代わりのモーターを設置したモノ。1充電あたり65km走れ、最高速は35km/h。

 1959年には商用モデルの主役はオート3輪に。小さくて機動性や燃費も良く、荷物を積めることが支持され、トラックの72%はオート3輪という時代もあったほど。そんな中で人気の1位2位争いをしたのがマツダのK360。

いわゆるケサブローの愛称で親しまれた。このモデルのスゴいところは空冷V型2気筒エンジンをミッドシップに搭載し、ドライサンプ方式でオイルを潤滑。まるでスポーツカーな並のメカニズムなのだ。1105ccの排気量で最高出力は11PS。

 商用車は時代を映す鏡でもある。巨大なアメ車がテールフィンを装着してその優雅さを競う1960年代の商用車もしかり。1960年登場のスカイウェイ。1957年登場の名車初代スカイラインのバンモデルとしてデビュー。

エンジンは1500ccの直4で70PSを誇る。この馬力は1500ccとしては当時世界最強だった。

 1963年。4輪分野で遅れをとっていたダイハツが自動車市場に送り出したのがコンパーノ。あ、あのスポーツモデルでしょ、と思い浮かびがちだが、ジツはバンモデルの方が先行発売されていた。

バンモデルながらもラダーフレーム採用、4速MTのギア、すべてにシンクロメッシュ(シフトを入り易くするための機構)を採用するなど商用車とは侮れないメカなのだ。

 ここで一つレア車を。今や日本では色即是空なトラックのイメージが強いいすゞだが、当時はベレットをはじめ乗用車にも超こだわりのメカやデザインを採用するトンガッタ自動車メーカーで、そのいすゞが手がけたのがワスプ。

ベレットのビジネスモデルでセダンのベレットと共通部品が多い。ボンネットまわりがそうでしょ、と見抜いたアナタ、通ですぜ。

 もう一つレアメーカーを。国産最速の誉れ高いR35型GT-Rなどのミッションを手がける愛知機械工業はその昔立派な完成車メーカーだったのだ。そこがリリースしたのがコニーグッピー。1961年から63年まで生産された商用モデル。ドアヒンジが後ろにあるところに注目だ。

 1968年にB360からバトンを渡されたのがポーター。デビュー当初は4気筒OHVが搭載されていたが途中から32PSの2サイクルの2気筒エンジンに。

 忘れちゃイケナイモデルが1972年のレオーネバンだ。1971年デビューのレオーネに追加されたバンモデルには4輪駆動が用意され国産初の乗用車タイプの4駆といわれている。窓枠のないサッシュレスドアを採用しエンジンはスバルの魂、水平対向4気筒を搭載。

セダンかSUVかとチマタで次期型の噂が流れるクラウンのビジネスユース向けモデルは3代目から8代目に設定されていた。ここでは1979年の5代目モデルをご紹介。5代目クラウンといえばハードトップをそれまでの2ドアから4ドアモデルに展開するなどデザイン上で大きな転換点を迎えたモデルとして知られる。バンモデルは保守的なデザイン採用。バンといえども価格はクラウンで大卒初任給が6万円前後だった時代に119万円のプライスを掲げていた。

黒猫マークの宅配車でよく見るクイックデリバリーはありきたりなので、その弟分として1989年にデビューしたデリボーイをご紹介。

キャンピングカーといったカスタムベースとしてジツは中古車市場でも人気の一台。もう一つ同じ年で必ず試験に出そうな商用車が日産エスカルゴだ。

日産のパイクカーシリーズ唯一の商用車。デザインは今のEVに見られるようなグリルレスを採用し、丸いデザインでカタツムリの車名が言い得て妙。

 国民的大衆車、カローラ最後のビジネスモデルが1991年にデビュー。モデル末期には助手席エアバッグを標準装備に。エンジンは1300ccの直4。

4輪駆動車は路面の状況に応じてトルク配分をする凝ったメカニズム搭載のビジネスモデルが1999年に登場した日産エキスパート。5ナンバーサイズに収まりディーゼルユニットもラインナップされていた。

そして最後は商用車の基本中の基本、四角いデザインを採用したトヨタのプロボックス/サクシード。同車はカルディナバンの後継モデルとして位置付けられ、それまでの曲線貴重デザインのカルディナから一転、四角いボディは実用性を重視してのモノ。

デビュー当初は1400ccのディーゼルターボユニットもラインナップしていたが、モデル途中で姿を消してしまった。基本設計の高さ、商用モデルとしての耐久生の高さに注目され、一部の愛好家でワンメークレースをしたり、カスタムカーのベースとして今も人気がある。

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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