PHEVのSUV レンジローバー・ヴェラールに試乗!

見返り美人なSUV

うっとりSUV滑らかボディ選手権やその曲線を愛でるクロカン大会があれば間違いなくグランプリを獲得しそうなクルマといえばレンジローバー・ヴェラールが元祖だ。特に斜め後ろから見るとこのクルマはバックシャンである、と思ってしまうほど計算された曲線が美しい。同車は紳士の国、大英帝国のクロカンブランド、ランドローバーが2017年に世に送り出したモデル。車名の由来は初代レンジローバーのプロトタイプのネーミングから。

ランドローバーは75年以上にわたる高度なテクノロジー、車両アーキテクチャー、オフロード性能に関する豊富なノウハウを持つメーカーとして知られ、その上級ブランドがレンジローバー。ローバー、ローバーとややこしくなりそうだが、トヨタにおけるレクサスと思っても大きく間違いはないと思う、たぶん。

英国では貴族が自分の領地を巡回する時にランドローバー車を使うことが多いといい、そんな時でも普段乗っているような高級セダン同様の乗り心地や内装を持つクルマの需要がある。そのニーズに応えるようにデビューしたのが高級SUVブランド、レンジローバーだ。車名の頭文字、RRからオフロードのロールスロイスとも言われるのは有名な話。レンジローバーは1970年に登場し、今やそのラインナップも最高級志向のレンジローバー、レンジローバーの雰囲気をそのままにスポーティさにベクトルを向けたスポーツ、美的なボディラインのヴェラール、エントリーモデルの役割も担うイヴォークと同じレンジローバーのネーミングでも用途に応じてバリエーションが豊富。そしてヴェラールはスポーツとイヴォークの中間に位置付けられるモデル。口の悪い人に言わせれば、英国的階級社会がここにある、という。なるほど昔ふうに言えば、公爵、侯爵、伯爵、子爵と表現した方がいいのかも知れぬ。根が庶民の筆者から見ればどれも貴族であるが。

スッピンでショーブなのだ!

せり上げってくるドアノブをひき、車内へ。なお今でこそ格納式ドアノブは珍しくないけれど、ランドローバー車としての初採用はヴェラールだった。

インテリアもエクステリア同様にシンプル。センターコンソールにはシフトノブしかない2024年以降のレンジローバー同様の簡潔さを強調したモノ。それでいて何かつけ忘れてない? と思わないのがデザインの妙。なおメーカー曰くヴェラールは「エレガントながらもシンプルなデザイン。視覚的にも無駄のないすっきりとしたモノで、利便性を高める革新的なテクノロジーが特徴のクルマ」という、いわば引き算の美学といったところか。お釣りの計算も怪しい筆者にわかりやすく下世話な話だと、厚化粧しなくても美しい方は美しい、ということか。なるほど納得。

シートはデンマークの著名なテキスタイルメーカーのクヴァドラ社のモノが自動車業界では初採用。家具への使用は知られるところだが、スーツの如く仕立ての良さでもショーブしている。

リアのなだらかなボディラインから受ける印象よりも後席は広い。エアコンも4座独立式に加えシートは電動リクライニング採用。センターアームレストを出すと後席用のUSBポートが用意されていた。

無理やり粗を探すのなら撮影車両は車高が調整できるエアサス仕様(後述)ではなく、荷室の床面が若干高く感じられたことくらいだが、スペース的には十分以上だ。

モーターはスゴイ!

試乗車は上級モデル、オートバイオグラフィーのP400e。パワートレーンは2リッターの直4ターボにモーターを組みあわせ、外部充電が可能ないわゆるPHEVだ。バッテリーがフル充電ならば67kmのEV走行が可能。充電は普通充電のみ対応だが約2.5時間で満充電になる。

PHEVのデフォルトはハイブリッドモードで、バッテリー残量が豊富な時は極力モーターのみで走ろうとする。他にはモーターオンリーのEVモード、バッテリー残量を保留するセーブモードがある。ただしセーブモードはいわゆるバッテリー残量を走らせながら増やすチャージモードではなく、現在のバッテリー残量を減らさないようにする、と思えば間違いないモノ。走りながらチャージをするのならアイドリングストップをオフにしてシフトの「S」レンジで走ると多少の充電がなされたが、素直に充電ポートより充電したほうが早い印象だった。

しかしその走りの上品なこと。モーターだけでも2tオーバーの車体を軽々加速させてくれるし、エンジンが介入しても車内は静かで、見晴らしの良いアイポイントでスタイリング優先でもレンジローバーだねぇと思わせてくれる。ただAピラーの傾斜は結構あるのでスポーティな印象でもある。乗り味はコイルサスでもストロークたっぷりな印象で以前のようなほんの少し突っ張った印象から変わり、「しなやかサン」でタウンスピードから高速まで優しく感じた。なおガソリンエンジンやマイルドハイブリッドのディーゼルはエアサス仕様も選べるがPHEVはコイルサスのみの設定。

さて。充電環境のない筆者はとりあえずセーブモードで走っている。組み合わされる8ATは概ね2000rpmあたりでシフトアップ。エンジンパワーの必要がないとクルマが判断した場合はエンジンが止まる。その停止、再起動もメーターを見ないとわからないほどスムーズ。またモーターで走っていても自分でシフト操作をした場合は即座にエンジンがかかる。

ステアリングに設けられたパドルシフトを使うと、なんと1500rpmでシフトアップ可能。もちろんギアが維持できない時は自動的にシフトダウンされるが。また車間の調整や信号待ちなどで自分でシフトダウンして停車した場合、次の発進はMTモードのまま1速で引っ張るので忘れずにシフトアップするかDレンジにする必要があった。

高速では8速120km/hで約2000rpm。同じく100km/hならなんと1500rpmくらい。回転計だけ見ているとそんなに踏んでいる意識もないのに結構な速度になってしまうので、メーターの速度表示はキチンと確認したい。それだけ静かに速い、ということなんだけれど。

それにしても、100km/hで1500rpmくらいというのはかなりなハイギアード。一般論ならばハイギアードなモデルほど低速トルクを犠牲にする傾向があるけれど、ヴェラールはモーターの強力なトルクが補ってくれる。また2t超の車重ながらもクネッた道では想像以上に軽い身のこなしで重量級SUVを運転している感覚は少ない。基本のアーキテクチャーはアルミ製。同じグループのジャガーブランド初のSUV、Fペイスと共通という素性の良さもあるのだろう。純ガソリンエンジン車は未試乗だがこちらだと図体以上の軽さを感じるという。

今回は高速4割、山道3割、流れの速い国道1割、街中、渋滞1割づつの行程で約600km走った満タン法での燃費は11.5km/L。カタログ燃費が10.5km/Lなのでかなりいいと思うのだけれど、高速での燃費は思ったほど伸びなかった。とはいえこれだけ美しいボディラインでも渡河推進性能は600mmとランドローバーブランドの名に恥じないモノだし、リッター150PSのターボエンジンと考えれば納得。ヴェラールは仕立てのいいスーツ。高級だけれども、華美に走らず、品の良さをアピールするのだ。

レンジローバー・ヴェラール
オートバイオグラフィP400eプラグインハイブリッド

価格1232万円から
全長 × 全幅 × 全高4820 × 1930 × 1685(mm)
エンジン1995cc直列4気筒ターボ
エンジン最高出力300PS/5500-6000rpm
エンジン最大トルク400Nm/2000-4500rpm
モーター最高出力105kW/3650rpm
モーター最大トルク278Nm/1000-3700rpm
WLTCモード燃費10.5km/L

ランドローバー
レンジローバー・ヴェラール
問 ランドローバーコール 0120-18-5568

海野大介(daisuke unno)
  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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