紳士の国のSUV
ランドローバー ディフェンダー110に試乗!

安心してください、復活しています!

前回の「DEFENDER EXPERIENCE TOKYO 2023」で普段なかなか体験できないランドローバーの性能を身を持って体験した筆者。それならば日常では違った顔が見られて「ギャップ萌え」になるのだろうかと、年の瀬の渋滞の中にディフェンダーを突入させた。

ディフェンダーの現行モデルは2019年にデビュー。初代は1948年から大きな構造変更を受けることなく2015年に生産終了を迎えていた。もしかしたら生粋の英国製オフローダーがなくなってしまうのかとファンはコブシを握りしめたというが、めでたく復活。加えてもっとも大きなトピックスは本格オフローダー御用達でもあるラダーフレームからアルミモノコックボディに変更されたことだ。舶来製本格オフローダーの筆頭でもあるランドローバーが、である。

しかし、本気組から見れば「この軟弱者!」とお叱りを受けそうな構造でも前回お伝えしたように、ブランド信条でもある悪路走破性はキチンと残しているところがスゴイのだ。また現行モデルを大きく分けるとランドローバー学上、90、110、130の3モデルに分類される。これはホイールベース(前輪から後輪までの長さ)の長さ違いで数字の小さい方が短い。機動性に有利なショートボディの90、3列シート8人乗りのロングボディを持つ130、そして主力車種でもあるバランスに優れた110といった具合だ。

街中でもカッコかわいいSUV

試乗車はそのバランスに優れた110の7人乗り仕様。しかもしかも好きモノでなくともオシャレさんに見えるスタイリングも魅力。リング状に近いヘッドライトデザインも先代を彷彿させるし、それでいてエレガント感や風格といったモノも感じられ、「カッコイイ」と「かわいい」雰囲気が同居しているシルエットなのだ。

また現代的雰囲気の中にもクラシカルな印象を受けるのがホワイトのホイールやボディのデカールなども、思わず「いい!」と言ってしまいそうなのだ。コレは先代モデルにラインナップされたCOUNTY(カウンティ)グレードを再解釈したエクステリアパックによるモノ。ボディのデザインと相まってモダンな印象の中にどこか懐かしさを感じるレトロ感がベストマッチで、これは2024年モデルに設定された特権。余談だが見た目のアクセントのホワイトのホイールだが、なんと鉄っチン(編集部注:いわゆる鉄製のホイールです)ではなく、アルミホイールというから驚く。

そして、2024年モデルはグレードのラインナップもより充実し7グレード展開に。もちろん、「DEFENDER EXPERIENCE TOKYO 2023」で初披露された限定車も含めればなんと8グレードになり、多くのユーザーの使い方や好みのベクトルに応えている。

上質な道具感がタマランばい!

運転席に陣取るためにドアを開けると、フロアは汚れに強い樹脂製がむき出し。もちろんフロアマットはあるけれど、このあたりはさすがワークホースの異名を持つクルマだ。そして水平基調のダッシュボードは本格オフローダーの方程式通り。またこのデザインはグリップも兼ねていて、その無骨さがカッコイイ。それでいてどこか英国車っぽい品の良さを感じるのも魅力のひとつ。

前席のシートはオプションの12ウェイ電動シートが装備されていた。これはシートヒーターやベンチレーション機能も備えて快適なモノ。またステアリングヒーターは全周が温まるのが末端冷え性な筆者にはありがたい。後席も専用のエアコンを備えるなど上質なファミリーカーなのだ。もちろん後席スペースは広々。3列目はそれなりの範疇かもしれない。普段から3列目を使わないのであれば、格納しておけばフラットで広い荷室になる。荷室床面は滑り止め加工され雰囲気どころか実用性も高い。

試乗車はエアサスがオプション設定されており、重量物やかさばるモノを乗せるときは荷室側からスイッチ一つで車高を下げることもでき、日本車並な至れり尽くせり感なのだ。

ディフェンダーはエンターテナー

試乗車に搭載されるエンジンは、ガソリン仕様の2リッターの直4ターボである。え? 車両重量2tオーバーで、このボディサイズで2リッターですかい!  と思った皆さま。筆者もそう思ってました。

ところがですな、走り出すと意外や意外、パワフルどころか粘りもある扱いやすいモノだった。そのスペックは300PS、400Nmなのだが、トルクはわずか2000rpmから味わえる。つまり街中をはじめ、悪路でも扱いやすい味付けと思われる。組み合わされる8ATも絶妙。50km/h巡航中の緩く長いカーブのある上り坂でもギアが落ちることなく5速のままクリアできたのにはびっくり。高速では80km/hでも1500rpm付近だし、100km/hにあげても2000rpmを超えることはなかった。

さらにオプション設定になってしまうが、エアサスが超快適だった。これならランドローバーブランドの上級車種、砂漠のロールスロイスの異名を持つレンジローバー並ではないか! と思うほど。もちろんベクトルが違うけれど本格派でも快適は魅力でしょう。

夜間は夜間でニクイ演出がある。ダッシュボードの間接照明に「映え」なクルマのロゴやキーをアンロックした時に足元を照らしてくれるのもディフェンダーなのだ。

東京サファリツアー?

とても乗りやすいディフェンダーだが、ボンクラな筆者には注意が必要だと感じたのはやはりボディサイズ。一般道へ出た時に筆者の狭く少ない脳裏に浮かんだのは「東京サファリツアーへようこそ」と言う文言。オプションのファブリックルーフは開放感抜群で気分はサファリツアーなの。

しかし、走りやすい街中だけではないのが現状。試乗車は110である。数字はボディの長さに比例するのだが、ホイールベースは110インチ、すなわち3020mmある。全長はかろうじて5mを切る4945mm。その長さにスペアタイヤを背負っている分、少し長い。つまりデカイのだ。

おまけに外からラゲッジスペースへのアクセスも大きなドアを開く必要がある。その分のスペースを考慮しなくてはならない。それ以外は拍子抜けするほど乗りやすい。渋滞中でも見晴らしがいいし、オフローダーらしい「ゆるさ」を持たせたステアリングもすぐに慣れる。ただ、駐車場や狭い路地に入ると上記の絶対的なボディサイズを気にしなくてはならない。それをフォローしてくれるカメラはあるけれど。余談だがリアカメラはアンテナの「ちょんまげ」の中に見えないように控えている。

しかし、ディフェンダーはホンモノなのだ。渡河水深性能は900mmと世界有数の性能。これを普通に買えると思えば安いのかも。ディフェンダー110の価格帯は758万円のSグレードから。

ランドローバー ディフェンダー110 SE County Pack


価格836万円〜
全長×全幅×全高4945×1995×1970(mm)
エンジン1995cc直列4気筒ターボ
最高出力300PS/5500rpm
最大トルク400Nm/2000rpm
WLTCモード燃費8.3km/L

ランドローバー
ディフェンダー110
問ランドローバーコール 0120-18-5568

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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