買い物から遊びまで、レディGO!! キックスに試乗!

いくぜ日産!

日産のコンパクトSUV、キックスが約6年ぶりのフルモデルチェンジ。新しくなったキックスは「タフ&アジャイル」がコンセプトで、アメフト選手のような力強い軽快感を表現したという。なるほどフロントフェイスはアメフトのヘルメットを彷彿させるデザイン。リアまわりは口の字型の黒いグラフィックが特徴。両端に設けらえたテールランプが幅を広く見せ、存在感を高めている。

一方、インテリアはGoogle搭載のNissanConnectインフォテインメントシステムと12.3インチのデュアルディスプレイの統合型インターフェースディスプレイ(グレード別設定)などモダンで開放的がテーマに。

グレードはXシンプルパッケージ、X、X+、Gの4つ。どのグレードでもFWDとe-4ORCEの4WDが選択可能。パワートレーンはもちろん日産の看板技術の一つとなったシリーズハイブリッド方式のe-POWER(以下eパワー)。車両の価格帯は299万9700円から424万8200円となんと! ベーシックなモデルは300万円を下回るのだ。値上げが当たり前のご時世に。

骨太なSUV

アメフトや柔道はぶつかりあったり、投げられたりして体の芯が鍛えられる。キックスも芯から見直され、その基本骨格にCFM-Bプラットフォームを使う。コレは先代同様ノートの骨格を使う法則と同じなのだけれど、ノートが大きくなったことでキックスもボディサイズが一回り大きくなった。先代では後席の足元スペースがもう少し広ければなぁ、と長距離を乗ると思うこともあったけれど新型は十分な空間が確保されている。加えてカップホルダー付きのセンターアムレストが全モデルに標準装備に。この辺りは先代にはなかったので後席の快適性はかなり向上している。

荷室の容量は後席を使った状態でFWDが476リッター、4WDはモーターなどの制約(荷室の床が高くなる)で340リッターと若干落ちるけれど、定員分の1泊2日旅行の荷物なら十分以上の広さだ。

BEVと言われれれば信じるカモ

骨格変われば何でもできる、電気ですかー! と萌える闘魂、故アントニオ猪木氏みたいな口調になってしまったが大きな骨格になれば少し大きなエンジンも載せられる。搭載されたのは、現行セレナと同じ1.4リッターの直3。もちろんこれは発電に徹する黒子だが排気量が大きくなった分、発電も力強くなった。

さて試乗会ではFFと4WDの両方が用意されていた。まずはFFのGグレード(389万8400円)から。室内は先代の華やかで明るい雰囲気から一転、高級志向なんだけれど、華美さはない。そう、仕立てのいいモノに囲まれている印象だ。フロアコンソールの前方にあるシフトセレクターからDレンジを選択し、スタート。

まず感じるのは会場から出る時の段差のこなし方。最上級グレードということでタイヤは19インチを履くのだが、突き上げ感がうまく抑えられている。新型は先代よりもショックアブソーバーの外筒も内筒も大きくなっていて、路面からの力の入り方に応じてクルマの動きを穏やかにする緻密な調律をしているというが、まさにソレ。先行した某ドイツの高級SUVが大きく動いたのに対して、コチラはゆるりと通過。アイポイントの大きな変化もなかった。

次にタクシーの路駐が多いエリアを抜けていく。狭い道の路駐車両をパスする時などボンネットの左右の膨らみがよくわかり、車両間隔が掴みやすいのは嬉しい。

またアクセルの動きにクルマがキチンと反応してくれるので、もう少し! なもどかしさもない。ステアリングも同様で手応えも軽い方がいいなあ、と思う時はキチンと軽く、少し手応えがあるといいね、な時はキチンと反応し、運転のしやすさがまず感じるトコロ。

そして何よりもクルマが静かでエンジンを載せているコトを忘れてしまいそうなこと。新型の最大の目玉はモーター、インバーター、減速機、増速機、ジェネレーターを一体にした5-in-1の第3世代のeパワー。このちゃんこ鍋ふうなeパワーは何がすごいのか。まず剛性が従来型比に対して+60%。静粛性の向上しエンジンの回転数を低減することもできる点。さらにエンジン始動の回数を大幅に減らせていること。確かに従来は頑張って電気作ってます感アピールはあった。特に夏場。エアコンを効かせ、ラジオにスマホの充電となると数分に1回はそんな感じだった。日産曰くエンジンの始動は従来型は市街地で約10分走ると約4回だったのに対して新型は1回というが、なるほど。感覚的にはBEVみたいだ。もうひとつBEV感になるのがブレーキフィーリング。今回からは100%協調回生ブレーキを使うのだ。従来モデルはアクセルを抜いた時だけエネルギーを回収していたが、新型はブレーキを踏んだ時もエネルギーを回収し、必要に応じて途中からパッドで挟む油圧ブレーキが介入するのだ。

4WDはe-4ORCE!

次に乗ったのはXグレードの4WD。筆者、e-4ORCEはアリアなど日産でもミドルクラス以上の高級技術と思っていたが、新型キックスにはドーン! と投入。

さて今回もFFと同じようなルートを通るのだが、会場出口の段差の身のこなしがFFより優しく感じる。17インチタイヤというのも相性がいいのかも。Gグレードは19インチ(!)だがそれ以外は17インチサイズが標準だ。なお試乗車が履いていたハンコックのタイヤは車両開発時から専用に開発されたこだわりの逸品。キックス専用といっても過言ではない、とのことだ。

乗り心地に関しては車重がFFよりも80kgくらい違うのも影響があるのかもしれない。しかしながらそれだけの重量増ながら、走ると微塵も感じさせないどころか、非常にパワフル。街中ではトルクフルな走りでまさにBEV感覚。

eパワーの燃費や遮音性に不利と言われる高速へ。レインボーブリッヂを経て湾岸線に入るのだが、筆者コレは若干のオーバースピードか!? をやらかした。アクセルを抜くと後ろがムズムズするかもしれない。そこで気持ちアクセルを抜いてウンヌン、と考えたのだが何事もなく安定した姿勢でコーナーを抜ける。スゴイ、スゴイぞe-4ORCE! クルマが前後の駆動力を精細に配分し曲がってくれる、この安心万能感はいい。ドライブが楽しくなる。アイポイントの高さもあるSUVなのに結構なハイペースでカーブを抜けていることに気づく瞬間でもあった。

首都高湾岸線の中央車線で巡航速度から右車線への合流。今まではエンジンも発電頑張ってマスな雰囲気だったのが、新型の再加速はソレより静かなうえ、かなり力強い印象。また高速巡航中の静粛性もびっくりするくらい。遮音性の高いアコースティックガラス採用もキャビンの静粛性を高めている。

巡航中にちょこっとだけプロパイロットを使用したところ、車間による加減速がかなりいい印象。速度差を考慮しての力強い加速になる場面が少なく、車間のとり方もイイ感じ。コレならば不必要な加減速による疲労はだいぶ軽減されるはずだ。

地味でもこりゃあいいゾなトコ

さて、新型キックス、ドーン! と派手に5-in-1の第3世代eパワーとか、e-4ORCEとかに目が行きがちだけれど、ジツは細かいところも秀逸なのだ。例えばディスプレイ前のフィンガーレスト。ディスプレイを操作する時にコレがあるのとナイのでは操作性が全然違う。老化で指の高さを維持するとプルプル震えてしまう筆者はディスプレイの操作時に違うトコロをお触りして、何度も操作を試みるなど大変ストレスなのだが、この指置きがあればそんな心配なしに操作可能。

給油口も便利。キャップがないのでキャップをスタンドに忘れることもないし、カバーのどこに引っ掛けようかと悩んだり、そのまま下にダランとさせてしまってボディに触れたり、キャップの内側を触って手がガソリン臭くなることもない。キックスのソレは挿し込むだけ。便利だ。

ついに掲げるZ旗?

全方位的に進化した新型キックス。ジツは日産にとって重要な役目を持っている。「新型キックスは事業を支えるコアモデルとしています」と発表会で日産の執行職、杉本全氏は言う。

そう言うなればキックスは日産のZ旗。Z旗は船舶で使う国際信号旗で、アルファベットのA旗から始まる。その旗の中でおそらく一番有名なのはZ旗だろうか。その意味は「私は引き船が欲しい」が基本で、ヨットレースなどではペナルティ方式スタートを告げるモノ。また小説や映画などで知られるのは日露戦争・日本海海戦で掲げられた方だと思う。Zは最後の文字で、すなわち「もう後がない!」の意で掲げられ、兵士の士気を鼓舞した。

杉本氏の言葉通り新型キックスは気合いが入っている。いや入りまくってむしろこんなにしてもらって大丈夫? と思えるくらいの出来だったのだ!

キックス X e-4ORCE

価格359万9200円から
全長 × 全幅 × 全高4365 × 1800 × 1610(mm)
エンジン1433cc直列3気筒
エンジン最高出力98PS/6000rpm
エンジン最大トルク115Nm/6000rpm
フロントモーター最高出力105kW/4800-10700rpm
フロントモーター最大トルク315Nm/0-2000rpm
リアモーター最高出力50kW/3500-10000rpm
リアモーター最大トルク140Nm/0-3300rpm
WLTCモード燃費21.5km/L

日産
KICKS
問 お客様相談室 0120-315-232

海野大介(daisuke unno)
  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

関連記事一覧