
「ああ、コーヒーが好きでたまらぬ」のタイトルも目を引く最新号・コーヒー特集は、ただ今好評発売中(2月2日発売2-16号)。目玉記事のひとつ「神保町コーヒー座談会」で、数ある名店から神保町で働く人のレコメンド店を、WEB記事でさらに深堀りする。ぜひ足を運んで、多くのコーヒーファンを魅了する、名店の味、香り、インテリアを楽しむ豊かな時間を。
写真/熊谷義久 文/モノ・マガジン編集部
ジャズが流れる活気に満ちた名店
Kanda Coffee(カンダコーヒー)

【DATA】
東京都千代田区神田神保町2-38-10 多幸ビル 1F 営業時間 月~金7時~17時 土日祝 12時~18時 自家焙煎のスペシャルティコーヒーのみを扱い、オーナーの石毛弘幸さんやスタッフの藤原理子さんの鮮やかな手付きでドリップされるコーヒーは、丁寧で明るい接客でいっそう味わいを増す。石毛さんの趣味のジャズが流れ、カップは石毛さんが吟味したフランスの名門ジアンのコレクション。
開放感のある店

神保町交差点から靖国通りを九段下方向へ進み、専大前交差点を水道橋方向へ向かったオフィス街の中に、落ち着いたたたずまいのカフェ「Kanda Coffee(カンダコーヒー)」がある。
黒く塗られた木枠の引き戸はガラス張りで見通しがよく、外のプランターに大小の植物があしらわれて、広すぎず狭すぎず、開放感があり、入りやすい店構えだ。

敷居を越えると目の前がカウンター。入ってパッとオーダーできて、カウンターに腰かけて飲んだり、すぐテイクアウトできる作りで、ビジネスピープルにはタイパも魅力だ。自家焙煎した豆が小袋で販売され、コーヒー豆の麻袋が、インテリアに素朴さとあたたかみをそえている。
コーヒー豆を焙煎する香ばしい匂いと、店内に流れるジャズの調べにも惹かれて、「ちょっと一杯飲んでいくか」「テイクアウトしていくかな」と、コーヒー好きならずとも五感を絶妙にくすぐられ、ホッとひと息ついて、リフレッシュしたくなる。目に入れば素通りできない魅力がある店だ。
小気味よいドリップ

店の看板スタッフは、キャリア10年の藤原さん。この店に入ってコーヒーのおいしさ、奥の深さを知った。「コーヒーは同じ豆でも淹れ方で味が違うし、浅煎り、中煎り、深煎りでも全く違う。すべて当たり前なんですが、最初は驚きでした。いまではお客様に好みを聞いて、おすすめのコーヒーを提供するのが楽しいんです」。
店内で飲むお客、テイクアウトのお客に加えて、オフィス街のためデリバリーの注文も多く、藤原さんはいくつものドリッパーとサーバーを並べ、鮮やかな手つきでポットを操って湯を注いでコーヒーを仕上げていく。小気味よい仕事ぶりだ。

飲み終わると
「いってらっしゃい!」
飲み終わって店を出るお客さんや、テイクアウトするお客さんを、明るい声で送り出す。常連さんにも「元気が出る」と好評だ。

オーナーの石毛弘幸さん。かつて10年ほど勤務したコーヒー店で、神保町の路地裏の喫茶店「きっさこ」の先代オーナーと縁が深まり、店を任され継ぐことになった。
そして「きっさこ」を経営する一方で、もっと自分らしい店を持ちたい思いが募り、2011年にオープンしたのが、ここ「Kanda Coffee」だ。
根っからのコーヒー好きの石毛さんは、自家焙煎のスペシャルティコーヒーのみを扱い、シングルオリジンのストレートコーヒーだけを提供する。基本的にブレンドコーヒーは出していない。
その方針について、石毛さんは、「今のコンビニのコーヒーやチェーン店のコーヒーを、勉強も兼ねてよく飲むようにしているんですが、非常にどれもレベルが高いんです。だから私たちは別の方向性で、万人受けするコーヒーではなく、個性のあるコーヒーで勝負しようと。単一生産国、単一農園のものを提供しています」と話す。
今は14種ほどのシングルオリジンの豆を提供している。
取材に行った日は、エクアドルで近年誕生したハイブリッド種で、フルーティーなフレーバーで注目の「シドラ」も提供されており、外国人の女性が笑顔でオーダーしていた。
ドリッパー

「Kanda Coffee」はコーヒーをペーパードリップで淹れる。ハリオのドリッパー「V60」を使用する。形は円錐形で大きなひとつ穴。ドリッパー内部のリブ(凹凸)はスパイラル形状で高く上部まであり、「渦巻き状に流れるのが特長で、使っている店は多いです」と石毛さん。ペーパーフィルターとドリッパーの間に空間ができ、蒸らしでコーヒー粉を適度に膨張させ、コーヒーの美味しさを最大限に引き出すと言われる。

深さのあるハリオV60に注いでいく。ふくよかに膨張して、うまいコーヒーが出来上がる。

店内のカップはフランスの陶器ブランド「ジアン」のもの。石毛さんがひと目ぼれしたコレクションを使用している。本国からスタッフが店を視察に来たほどの充実度。また、カップを並べた水屋もアンティークでこだわりの品。

コーヒーは日替わりで「深煎り」と「中煎り」の2種類ずつ4種類から選べる。コーヒーそれぞれの味と香りの個性を感じられる。

店のライトは、石毛さんの趣味で「オールドノリタケ」のランプシェードが使われている。格調の高さが神保町に似合う。

割れたシェードに藤原さんが丁寧に金継ぎを施している。これもまた味わいがある。
コーヒー、インテリアのほか、石毛さんは自分が愛してやまないジャズを聴かせる店としてもこだわっており、心地よい時間が過ごせる。

左がオーダーカウンター。右が自家焙煎豆の販売コーナー。自家焙煎豆の販売は100gの小袋からあり、気軽に試せる。プレゼント包装も豊富。

コーヒー豆の自家焙煎機が回り、香ばしい空気が流れ、店内を活気づける。

神保町について、石毛さんはこう語る。
「20年ほど神保町で仕事をさせていただいていますが、最近、東京下町の神保町らしさが薄れてきているのではないかと感じています。店の軒先を利用して、季節の野菜を販売してみると、近所のおじいちゃんやおばあちゃんも店に立ち寄って顔なじみになってくれますし、店内では絵画や写真の展示で、近所の会社にお勤めの方々にも、休憩中にひと息ついてもらったり、この間はご来店いただいた海外のお客様のスナップ写真を撮って、どこの国から日本に来たのか尋ねながら、壁一面の世界地図に写真を貼っていき、お互いに笑顔になれる楽しい機会でした」。
こうありたいと目指すのは「音楽・文化・芸術を体感できる場所であること」だという。
「“文化の中継基地” という言葉は自分が目指す場所です。これからもお客様参加型の企画や、コーヒーの香りにふと立ち寄った方が楽しめるような、神保町らしい店づくりをしたいと思っています」。

常連さんが描いた石毛店長と藤原さんのイラストが、カウンターの中に貼られている。お客さんに愛される店の証。「いろいろな方が描いた自分を並べた『石毛展』を店の壁でやったこともあります(笑)」と石毛さん。

春~夏になると、ジャスミンと葡萄の葉が生い茂る。系列店は「きっさこ」の他にも、専修大学の1階のカフェで誰でも入りやすい「SENDAI-Kaffee(センダイカフェ)」、石毛さんのお母さんの料理店「おつまみ母さん」がある。
「Kanda Coffee」でコーヒーを味わうのはもちろん、神保町に広がる各店を巡るのも、また楽しいだろう。
【モノマガ本誌もどうぞ!】
神田神保町で働く人が好きなコーヒー店を語り合う「神保町コーヒー座談会」も掲載。
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