織本知之のデジカメ紳士録
あなたにとって最高の道具に
【ニコンZ8】


モノ・マガジン誌の長期連載「織本知之の電子写真機恋愛」がいよいよモノWEBに登場! 最新機種から懐かしのレトロ機種まで、掲載当時の熱量真空パックでお届け。誰もが立ち寄れる「デジタル一眼レフ、ミラーレス一眼情報の道の駅」だぞ!

写真と文/織本知之

Nikon Z8

ニコン/Z8

こんなトコロに戀をする!

ぐっとくるグッドな角度にひとめぼれ

当初はZのデザインに戸惑うという方もチラホラおりました。でも最近はどうでしょう、もうこのカタチじゃなくちゃ嫌だというカメラマンも多いのではないでしょうか? ええ、わたしもそのクチです。シンクロ接点や各種通信ポートなど必要な機能、操作系統など練りに練られたこの構成から醸すフォルムの美しさにぞっこんlove。

SDカードも使っていたい

時代は連写動画時の書き込みスピード至上ですから必然ですねCF Expressカード。でも高いんですよコレ、1枚ならなんとかできても2枚必要なダブルスロットはマジ勘弁。SDカードは手ごろな価格で助かったのに……え? Z8のダブルスロットは片側メディアスロットはSDカード対応ですって! かたじけなさに涙こぼるる!

こんなレンズ&テレコンに恋しちゃう

神描写のNIKKOR Z 70-200㎜ f/2.8 VR S に焦点距離を2倍にするZ TELE CONVERTER TC-2.0xを 装着して400㎜ F5.6として撮影してみました。単体なら何を撮っても切れ味鋭い描写とわかっているので2倍テレコン使用時にどこまで懐が深いのかに挑戦したかったのです。結果はやはり神がかっておりました。テレコンOK、トリミンだってバッチコイの実力。

こんな寫眞に戀をする

NIKKOR Z 70-200㎜ f/2.8 VR S+Z TELE CONVERTER TC-2.0x + NIKKOR Z 70-200㎜ f/2.8 VR S

ニコンZ8のオートフォーカスは完全に人間の眼と技量を凌駕しているようです。少なくと50がらみのベテランカメラマン(儂)のフォーカス力ではまったくZ8には太刀打ちできません。スポーツ撮影では選ぶ機材の質が写真の質に直結いたします。そして、これまでなら非常用的な扱いだった通称“倍テレ”もZマウントでは常用使いできる描写クオリティです。さらにZ8なら1.5倍のクロップ時でも1936万画素もありますので最大600ミリ相当の望遠撮影が可能な組み合わせです。

【撮影DATA】
シャッター速度:1/6400秒/絞り:f7.1/撮影感度:ISO1600/撮像範囲:クロップ(DXフォーマット)

NIKKOR Z 20㎜ f/1.8 S

居眠り寺猫さま。お賽銭箱と鰐口の間にてガフーガフーと気持ちよさそうだったのでそっと20ミリとZ8を隙間に差し込んでスナップ。近接撮影での超ワイド絞り解放ならではのこの立体感。被写体をドンピシャで認識するZ8のAF被写体認識の精度と速度、そして静音シャッターにより、ひげの1本もゆらがず快眠続行。正直、絞りの明るい超広角ワイドレンズってあまり使う機会がなかったのですが、このレンズを一度知ってしまうと……。

【撮影DATA】
シャッター速度:1/800秒/絞り:f1.8/撮影感度:ISO100/被写体認識:動物

ニコンZ8で撮ってみた!

先だって名野球選手のイチロー氏がある質問に答えた内容がカメラ好きな一部のひとびとに話題となりました。それはカメラ初心者へ向けた「一番良いモノを買って」というアドバイスであります。

さすがはイチロー! 言い得て妙! よーし俺もいっちょ最上最高フラッグシップ機から始め……少々おまちくださいませ。そこにはイチロー氏の「あまりに実力のレベルが機械と乖離した状態では上達している感触が得られない」という但し書きがついております。カメラの場合は「撮影機材の扱いに慣れる」というのも実力に含まれております。

そりゃ最高級フラッグシップ機に最長最高級望遠レンズを組み合わせた写りは別次元です。が、忘れちゃいけないのはその組み合わせのレンズとボディもろもろ含んだ総重量約5㎏近いオペレーション(三脚含まず)。コレを振り回すには筋力だけでなくカメラしぐさも構えのコツも必要となってきます。いきなりではまず無理でしょう。

なので「一番いいやつ」というカメラを職業写真家として補足しますと(注・今のアナタに見合う中で一番の)としたいのであります。

そんな折に世に出たこちらのZ8。シリーズ最高峰Z9のちょい下、中堅上位Z7Ⅱのちょい上という位置付けになっています。あくまでラインナップ上です。

機能的にはZ9のままボディサイズだけスケールダウンしたかのようなZ8は、質量約910gに抑えたコンパクトなボディに最高の機能を積み込んだ取り回し最強のまさにミニZ9。

搭載するセンサーはZ9相当の有効約4571万画素積層型FXフォーマットCMOSセンサー、映像エンジンはZ9と同じくEXPEED 7。これによりZ8はまったくローリングを感じさせない電子シャッターによって動画のようなコマ連写速度、強力無比なオートフォーカスはほれぼれするような食いつきでターゲットをロックオンし続けます。

Z9と大きく異なる点は軽量コンパクト化とトレードオフして小さくなったバッテリー容量。たしかにZ9ほどガンガン撮れませんが、そもそもZ9のバッテリー容量がデカすぎるのです。あれは報道写真ガチ勢が脚立の上で犯人の出待ちを終日構えて待つのに必要とか、スポーツカメラマンがプロ野球のカメラマン席から超高速の20コマ/秒連写ですが、ここ一番のチャンスは逃すまじプリ連写120コマ/秒とかでBluetooth接続したノートパソコン経由で本社の写真デスクに切れ目なし一試合まるまる写真を送るためとかそんな使用を前提にした容量なのです。わしらのような一日300カットほどの雑誌カメラマンだとその週いっぱいはバッテリーが足りそうです。むしろZ5からZ8まで共通のバッテリーがありがたし。

そして4軸チルト液晶、給電充電可能なUSB-Cポート、CF Express & SDカードのダブルスロット。撮影業務にも、映像用使用にも万全なプロ機種であるZ8は大口径望遠レンズをつけても良し、コンパクトな単焦点レンズで軽快スナップも尚よろしのマルチな活躍をしてくれるのです。

たとえばNIKKOR Z 70-200㎜ f/2.8 VR S はいわゆるプロ向け大三元ズームの根幹を成す望遠ズームですが、しっかりしたグリップを備えたZ8に装着すると優れたバランスでホールドできる充分なボディのサイズ感。そして切れ味鋭いズームレンズはテレコンバーターの装着も画質に余裕をもって倍の焦点距離で活躍してくれるのです。これは高速で高い精度のオートフォーカスを備えたZ8との組み合わせだからこそストレスを感じないのかも知れません。

そして取り回しの軽いZ8は単焦点レンズでの撮影も楽しく軽快。NIKKOR Z 20㎜ f/1.8 S といった明るいf値を持つワイドなレンズで新鮮なアングルを狙ってみるのも新鮮。4軸チルト液晶とコンパクトなボディサイズを活かした姿勢にチャレンジすることも可能です。大柄なZ9などのボディでは物理的に不可能な狭隘なポジションからZ8ゆえのダイナミックな演出も狙えます。

最初の一台にあなたが選ぶ『一番良いモノ』にいかがでしょうかニコンZ8。

※本企画の情報、コメントはすべて、機種発売当時のものです。ご了解ください。

  • フォトグラファー。1972年千葉県出身。1999年平凡社動物写真アニマ賞の最年少にして最後の受賞者、撮影テーマは「ニホンザル」。以降、カメラ誌、情報誌、タウン誌、ミリタリー誌など幅広く撮影・執筆。私鉄協会誌「みんてつ」表紙などを長年担当。monoマガジンではこれまで150機種300本を超えるデジタルカメラ、交換レンズをレポート中。甘党下戸。You Tubeの「サバ三ちゃんねる」@sabasan 鋭意更新中!

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