個性爆発すぎるドイツ製高級レンズ「メイヤー ビオター75㎜ F1.5Ⅱ」を装着して久しぶりにフルサイズデジ一眼レフで撮ったら驚きの連続だった、という話。


カメラ趣味の喜び、それは豊富な交換レンズの存在に尽きる。そこにはカメラメーカー純正品に留まらない選択肢の広さがあるからだ。で、今回目を付けたのがドイツのメイヤー・オプテック・ゴルリッツの新作「ビオター75㎜ F1.5Ⅱ」。撮って吃驚のその描写、というウワサなので試してレポートしたくなった次第!

写真と文/モノ・マガジン編集部

フィルムからデジタルへ、一眼レフからミラーレスへと21世紀カメラは歩みを進めてきた。モノ好きの皆さんのお手元にはきっと、キヤノン、ソニー、ニコン、はたまたルミックスやライカのフルサイズミラーレスがあるのではと察します。

そしてこれらデジカメに装着するレンズの群雄割拠が著しい。メーカーにとってはライバルが増えたわけで大変だが、ユーザーにとっては喜びだ。

カメラメーカー純正品はもとより、日本やドイツのレンズブランドに加え、中国でもたくさんのオモシロユニークなレンズが生まれている。今回紹介するメイヤーは1896年の創業。ドイツ生まれのドイツ製をうたう、正真正銘のドイツブランドである。

メイヤー・オプテック・ゴルリッツとは?

1896年、ドイツ東南に位置する都市ゴルリッツにて眼鏡技師のヒューゴー・メイヤーと商人のハインリッヒ・シャッツェによって創業。東西ドイツ時代には東ドイツで操業を続け、ドイツ統一後には時に経営難に見舞われながらも暖簾を守り現在に至る。120年以上の歴史をもつ老舗光学ブランドである。

日本にたくさんのカメラメーカーがある(あった?)ように、ドイツにもカメラやレンズメーカーがあった。ライカ、コンタックス、ローライを始め、レンズ屋ではツァイス、シュナイダー、ローデンシュトック、そしてメイヤーもそのひとつ。

今回使用したレンズはメイヤーの新製品「ビオター75㎜F1.5Ⅱ」だ。

ちょっとクラシックカメラ方面に詳しい人なら「あれ?」と思うに違いない。そう、ビオターとは、かのカールツァイスが開発したレンズだからだ。

ビオターの開発者は1889年ドレスデンで生まれた。ウィリー・メルテ氏。1913~1945年までカールツァイス社に勤め、テレテッサー、オルソメター、ビオターほか、軍事レンズの開発にも従事した。

ビオター75㎜F1.5というレンズの誕生は戦前に遡り、当初は反射防止コーティングがなく、戦中・戦後になりコーティングが施されたらしい。開放値の大きな「明るい中望遠レンズ」としては草分け的なレンズであり、対応マウントを増やしながら製造され続けた息の長いレンズでもある。

メイヤー社は戦後東ドイツの光学メーカーとして継続。1970年代に入って東独ペンタコン社の一部として吸収され、活動は続けられたものの、レンズ名としては「ペンタコン」に統一されてしまう。ベルリンの壁崩壊に続く東西ドイツ統一ののちに、メイヤー・オプテックとして再び製品を送り出すがまもなく倒産。2016年にドイツのnetSE社がブランドを復活させたが倒産に伴い生産が停止。再度のオーナー変更を経て現在はOPC OPTEC社がその商標をもつ。

さて、なぜメイヤーがカールツァイスのビオターを手掛けられたのか? 本国に尋ねたところ、以下の事情が判明した。

実はビオター(Biotar)というレンズの商標権がフリーとなっていたタイミングで、新たにOPC OPTEC社が「ビオター」の商標権を申請、取得した。つまりこの歴史的レンズ名称はとうにカールツァイスの手を離れていたのだ。OPC OPTECではビオターを現代によみがえらせるべくオリジナルをベースに再設計し、21世紀のビオター75㎜を作り上げたというわけだ。

いずれにしろ、戦前型か戦後型か、あるいはレンジファインダー用か一眼レフ用かを問わず、ビオター75㎜F1.5の人気は高い。理由は開放値の明るさと、特長的なデフォーカス/ボケの表現にある。

丸い玉であるレンズの中央部は解像しながらも、四隅が激しくボケる、これは写真レンズとしての大きな欠点なハズだが、いま、それらは「個性」と呼ばれる。クセをもつこうした独特な描写が、あえて高価な、そして不便なフルマニュアルレンズを購入する価値なのだ。

そのビオターのもっとも特徴的な描写は、これ。

【作例1:男性】
ぐるぐる巻きの背景である。「アプリで加工した?」というくらいの個性的な画。中望遠75㎜でF1.5という大口径、かつ開放時の描写がユル目なため、ピント合わせには慣れが必要だ。

【作例2:遠景風景】
写真の善し悪しは別として、描写面は面白い。周辺部のボケが大きくまるでミニチュアを撮ったように見える。いわゆる虫眼鏡っぽい見え方だ。

こちらもわかりやすい。

【作例3:窓ふき】
ピントは青い作業者なのだが、その前景にあたる桜のボケかたはもはや芸術的?

最短撮影距離である75㎝付近で撮った一枚。開放。妙に愛らしい。

【作例4:ぬいぐるみ 最短75㎝付近】

むろん絞り込めば現代中望遠レンズとしてシャープに撮影できるが、実絞りでの撮影となるため、一眼レフだとファインダーが暗くなる。ミラーレスカメラでの使用を推奨したい。

F2.8くらいが柔らかさと背景描写のバランスがよいように感じる。

【作例5:晴天、桜F2.8】

今回はニコンFマウントレンズでの試写となったが、マウントは、キヤノンEF、RF、ニコンF、Z、フジX、ペンタックスK、ソニーE、Mフォーサーズ、ライカM、Lと豊富に用意されている。とはいえこのレンズの魅力をしゃぶり尽くすならフルサイズマウントを選ばない理由はないだろう。

価格は24万5000円。もとより趣味性の高いマニュアルフォーカス、実絞りのネオクラシックレンズゆえ、プライスタグが高いか安いかはアナタ次第。ただしカメラは中古マーケットが確立されているので、いずれ手放す気持ち、つまり「長期間レンタルする」つもりで居れば、清水の舞台から飛び降りる勇気がもてるかも知れない。

4群6枚のレンズ構成はオリジナルに準じた新設計、レンズコーティングも最新レベルという「ビオター75㎜F1.5Ⅱ」。四隅までビシっと解像する最新レンズとは違うじゃじゃ馬を、君も乗りこなしてみないか?

問い合わせ:ケンコープロフェショナルイメージング
電話:03-6840-3622
ビオター75㎜F1.5Ⅱ

  • モノ・マガジン&モノ・マガジンWEB編集長。 1970年生まれ。日本おもちゃ大賞審査員。バイク遍歴とかオーディオ遍歴とか書いてくと大変なことになるので割愛。昭和の団地好き。好きなバンドはイエローマジックオーケストラとグラスバレー。好きな映画は『1999年の夏休み』。WEB同様、モノ・マガジン編集部が日々更新しているFacebook記事も、シェア、いいね!をお願いします。@monomagazine1982 でみつけてね!

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