プリンス・オブ・ウェールズとF-35B

先週末に発売となった『航空ファン』11月号の特集で扱っているイギリスの空母HMSプリンス・オブ・ウェールズ(R09)は、2021年に来日したクイーン・エリザベス(R08)の同型艦で、同クラス2番艦です。アメリカの空母にはおよびませんが、全長約284m、満載排水量65,000tとかなりの大きさで、40機もの航空機を搭載できるといいます。

今回は8月12日から28日まで横須賀に、28日から9月2日まで東京国際クルーズターミナルに寄港、横須賀では乗員の休養や整備、補給が行なわれ、その後東京では親善と国際協調のシンボルとして各行事の舞台ともなりました。

操艦用と航空機運用用のふたつの艦橋を備え、艦首にはSTOVL固定翼機を運用するためのスキージャンプも装備した特徴的な外形を持つ空母ですが、その運用機種はF-35B、哨戒/早期警戒型と輸送型のマーリンです。現在固定翼航空機(F-35B)の洋上プラットフォームとして機能するために段階的に改修が進められている海上自衛隊の護衛艦「いずも」型の運用思想にも通じる任務内容を有しています。

誌面でも紹介しているとおり、今回「いずも」型2番艦「かが」に同艦所属のF-35Bがクロスデッキで着艦するなど、海上自衛隊にとっても同艦との訓練は今後のための経験蓄積になったのではないでしょうか。また、搭載されているF-35Bは、空軍が機体を管理し、空軍と海軍のそれぞれの部隊から人員が派遣されるという特殊な運用方法となっています。

イギリスでは戦闘機の一括管理が進んでおり、F-35Bもマーラムという基地にまとめて配備しており、機体の所属を限定せずに空軍の2個飛行隊と海軍の1個飛行隊が共同でそれらの機体を飛ばします。垂直尾翼にも共通のマークとしてF-35のポピュラーネーム「ライトニングⅡ」にちなむ電光が共通のマークとして垂直尾翼に描かれています。

今回、横須賀寄港を前にそのF-35Bが航空自衛隊機とも訓練を実施しており、その際福岡県の築城基地を訪問する計画が立てられていましたが、空域での訓練は行なったものの、築城への飛来は直前にキャンセルされ、イギリスのF-35Bの自衛隊基地公式訪問は実現しませんでした。一方で8月10日に1機のF-35Bが鹿児島空港に緊急着陸、この機体は東京出港後の9月10日に艦に戻ったのですが、これが同機の日本初飛来の記録となっています。

なお、出港後にも、日本海で航空自衛隊とプリンス・オブ・ウェールズ搭載機の訓練は行なわれています。これらプリンス・オブ・ウェールズとF-35Bの動き、さらにイギリス海軍の航空部隊と空母については、ぜひ11月号の特集をご覧ください。

また、今月号の表紙写真を提供してくれた田嶋健一カメラマンが、2021年のクイーン・エリザベスと今回のプリンス・オブ・ウェールズを上空から撮影した作品を集めた同人写真集、『空撮本舗田嶋堂の持っていても役に立たない書籍集 Vol.4 ROYAL NAVY AIRCRAFT CARRIER HMS “QUEEN ERIZABETH” & HMS “PRINCE OF WALES” VISITED U.S FLEET ACTIVITIES YOKOSUKA BY AIRIAL PHOTOGRAPHS』(なんと長いタイトルなのでしょう…)を発表しています。今月号では田嶋カメラマンから同書を読者プレゼントでご提供いただいていますが、購入ご希望の方は田嶋カメラマンの公式サイトをご確認ください(東京の書泉グランデ・書泉ブックタワーでも販売しています)

  • 1967年千葉県生まれ。1991年4月に(株)文林堂入社。『航空ファン』『世界の傑作機』『航空ファン・イラストレイテッド』など航空雑誌の編集に携わり、2022年10月から『航空ファン』編集長。
  • https://note.com/bunrindo_kokufan

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