
現在絶賛放送中の『ウルトラマンオメガ』でオメガの人間態オオキダ ソラトの相棒である、青年ホシミ コウセイ。毎回、地球の習慣や文化に慣れていないソラトに振り回されるのが特徴で、宇宙人と地球人がぎこちなくも次第に信頼を深めていくバディ関係が『オメガ』最大の魅力。常にテンションの高いコウセイだが、オメガの戦いをサポートするメテオカイジュウという怪獣たちを操る〈怪獣使い〉でもあるのだ!
演じる吉田晴登さんは若手ながら子役から活躍された実力派俳優。時折、若者らしい感情の微妙な揺れを見せるコウセイに人間的な奥行きを与えている。もうひとりの〈等身大ヒーロー〉と言うべきコウセイを魅力たっぷりに演じる吉田晴登さんにお話を伺った。
取材・文/今井あつし






●第一印象は怖かったソラト
——吉田さんは映画『6人ぼっち』(25年)での屈折した高校生役など、今まで陰のある、いわゆる「陰キャ」なタイプを演じることが多かったとのことですが、『ウルトラマンオメガ』のホシミ コウセイはテンションの高いキャラクターです。演じるうえで意識されたところを教えてください。
吉田 確かに僕が演じるコウセイは常にハイテンションですが、一本調子にならないように気をつけましたね。第1話に関して言えば、劇中で「おい!」と呼びかける台詞が3回出てくるんですけど、それぞれニュアンスを変えて違いを加えていきました。
さらに第1話のオオキダ ソラトは宇宙から落ちてきたばかりということもあり、宇宙人としての異質さが丸出しで、普通の人間とは異なるテンポで会話をするんですよね。それに引っ張られないように、自分のテンポ感はキチンとコントロールしようと意識しました。
——『オメガ』はソラトとコウセイのバディ関係が軸になりますが、ソラト役の近藤頌利さんはインタビューなどで、「自分は第一印象で怖がられやすい」と話されています。吉田さんは初めて近藤さんとお会いした時の印象はいかがだったでしょうか?
吉田 やっぱり怖かったです(笑)。初めてお会いしたのは衣装合わせの時だったんですけど、頌利くんは室内なのにサングラスをかけていて(笑)。しかも本人はフラットのつもりなのでしょうけど、少しぶっきらぼうな挨拶で、さらに怖さに拍車をかけてきて(笑)。
——お互いに趣味がカードゲームということがわかって、打ち解けたそうですが。
吉田 そうなんです。僕の方から「休みの日は何しているんですか?」と聞いたところ、同じ趣味ということがわかって、一気に距離が縮まりました。それ以降、撮影の休憩時に対戦したり、ロケ帰りに一緒にカードショップに遊びに行ったりしています。
それに頌利くんは関西出身ということもあって、本来はすごく陽気な方なんですよね。番組の座長としての責任感もあって、僕らキャストだけではなく、スタッフさんたちも引っ張ってくれる。本人は「マイナスからのスタートの方が、あとは良い方向に上げていくだけだから」と言っていますけど、実際に撮影を重ねるごとに印象は上がっていく一方でした。

●リアルな感情で演じ切ったファーストカット
——『オメガ』のクランクインされた時の印象を教えてください。
吉田 クランクインは、第1話でコウセイのバイト先である太陽倉庫にソラトが忍び込んで、勝手に焼きそばを啜っている場面でしたね。それでソラトが勝手にラジオを弄ったり、ティッシュペーパーをまき散らしたりして、僕が振り回されるんですけど、実はあの一連のシーンは長回しの1カットで撮ったんですよ。完成作品ではところどころカットが入っていますけど。
ファーストカットというだけでも緊張感があるのに、そのうえ長回しで、しかも頌利くんとはまだ共通の趣味が判明する前という(笑)。だけど、まだ打ち解ける前の僕と頌利くんのリアルな関係性が、そのままソラトとコウセイの初対面のシーンに活かされたと思います。
——第2話でヒロインのアユ姉ことイチドウ アユム役の工藤綾乃さんが合流されるわけですが、工藤さんの印象を教えてください。
吉田 綾乃さんも10代の頃からいろんな現場を経験されていて、芝居の向き合い方がプロフェッショナルなんですよ。それでいてプライベートの相談に乗ってくれたりして、本当に僕にとって姐御でした(笑)。現場では基本的に頌利くんが僕をいじって、綾乃さんが傍で見守るという感じなんですけど、綾乃さんがいじってくることもあれば、逆にいじられることもあって、可愛らしい妹キャラの時もあるんです。スタッフさんからも「今日、綾乃ちゃんはいないの?」という声が上がるぐらい、本当に姉御で、癒しで、女神でした。

●ウルトラマンはファミリーだ!
——吉田さんはコウセイを演じるにあたって、『ウルトラマンデッカー』(22年)で松本大輝さんが演じた主人公、アスミ カナタを参考にされたとお聞きしました。
吉田 『オメガ』のオーディションを受けさせていただく際に、復習として観返した作品が『デッカー』だったんですよ。
——『デッカー』のメイン監督は、『オメガ』と同じ武居正能さんですから、参考にされたのですね。
吉田 いえ、その時点ではまだメイン監督は武居さんだとは知らされていなくて、まったくの偶然だったんです。コウセイのキャラクターを演じるには、熱血漢のカナタをイメージとして落とし込むのがいいと思って。
それまで僕はマッシュルームっぽい髪型だったんですが、コウセイ役が決まってからは、それもバッサリ切ろうと思って。僕から監督にカナタを演じていた頃の松本大輝くんの写真を見せて「この髪型でいきたいんです」と提案しました。
——髪型もカナタの短髪を参考にされたのですね。
吉田 実は大輝くんとは以前から共通の知り合いがいて、『オメガ』の出演が決まった時に、その知り合いを介して、大輝くんとサシで飲みに行ったんですよ。初対面なのに大輝くんは僕がコウセイ役に決まったことを自分事のように喜んでくれました。その時のキラキラとした表情がすごく印象に残っていて。ウルトラマンシリーズの撮影現場の雰囲気など、丁寧にアドバイスをいただいて、とても貴重で贅沢な時間を過ごさせていただきました。
——松本さんもやはりウルトラマンへの想いが強いんですね。
吉田 ウルトラマンってファミリーなんだな、と思いました。大輝くん以外にも個人的にお世話になっている先輩に、『ウルトラマンギンガ』(13年)主演の根岸拓哉さん、『ウルトラマンX』(15年)でワタル隊員を演じた細田善彦さんがいて。しかも『ウルトラマンジード』(17年)の濱田龍臣くんとは高校の同級生で、いろいろとウルトラマンの話を聞いていましたから。今回の『オメガ』でやっと点と点が繋がって、自分もファミリーになったんだなって。

●虚構が本当になる瞬間

——コウセイは第3話でメテオカイジュウであるレキネスを使役する能力を手に入れます。以後、オメガの戦いをサポートしていくわけですが、怪獣使いという役柄を初めて聞いた時、どのような印象だったでしょうか?
吉田 もうビックリしました。僕は『ギンガ』や『X』をよく観ていて、この2作品は味方となる怪獣と一緒に戦っていくウルトラマンの話じゃないですか。今回の『オメガ』で、まさか自分も怪獣を操って戦うことになるなんて思ってもいなかったので、幼い頃の夢が叶ったようで嬉しかったです。
——実際に怪獣を操るという演技はいかがだったでしょうか?
吉田 第3話で、怪獣ペグノスに吹き飛ばされたコウセイがスリープモードのレキネスをかざして、レキネスを起動させる場面がありますよね。その時にコウセイの目が青く光って、気がつけば巨大化したレキネスの手のひらに乗っている。この一連のシーンはグリーンバックの前で撮影したんですけど、撮影中は「どういう画になるのか」と実感が湧かなかったのが、正直な気持ちだったんです。
だけど、完成作品を観た時に、見事に僕が怪獣とリンクしていたんですよ! もう泣きそうになりました。今までの芸能活動でなし得なかった経験で、それが映像として形になっている。虚構が本当になる瞬間に、心は完全に少年時代に戻りました。

●怪獣使いとしての見せ場

——怪獣と戦う時もコウセイは生身で戦況を見守って、レキネスに指示を出していく。そういった意味で、主要人物の中でも吉田さんの演技は特にカロリー消費が高いと思います。
吉田 考えたらコウセイって、戦闘中もずっと叫んでいるんですよね(笑)。それだけ台詞量も多いですけど、台詞に関して言えば、専門用語が多いアユ姉役の綾乃さんの方が大変だと思います。コウセイは四六時中、怪獣に吹き飛ばされてリアクションを見せる専門なので(笑)。
——戦い終わって、レキネスがスリープモードとして手元に戻ってきた際にコウセイが倒れ込むところも、激闘ぶりを物語っていて印象深いです。
吉田 僕自身アクションの経験もあって、実際に攻撃を受けているように見せる練習もしているので、レキネスが手元に帰ってきた時に伴う疲労感もその経験が活かされていると思います。でも、ストーリーが進むごとにレキネスの扱いにも徐々に慣れていって、熟練度が増していくんですよ。怪獣使いとしてレベルアップしていく(笑)。
あと、第7話でもう1体のメテオカイジュウ、トライガロンも登場するんですけど、日常生活においても人それぞれに対して接し方が異なるように、トライガロンは新参者ですから、レキネスとは扱い方が少し変わってきます。そういうところも注目していただければ。
——怪獣使いということもあって、吉田さんは他のインタビューなどで「『オメガ』は怪獣を単に倒すだけの物語ではない」と仰っていますが。
吉田 第2話のドグリドにしても水源を求めて行動していただけなんですよね。身体から毒液を出して周囲の草木を枯らしましたけど、それにしてもオメガスラッガーで傷つけられたからであって。僕らが選択を誤らなかったら、倒す必要はなかったかもしれない。『オメガ』は「怪獣と言えども、全てが悪ではない」ということを改めて真正面から描いていくシリーズでもあるんです。

●ウルサマで感じた生の熱量

——7月26日、27日に開催された「ウルトラヒーローズEXPO 2025 サマーフェスティバル IN 池袋・サンシャインシティ」のライブステージで、吉田さんはコウセイ役として出演されました。観客の小さいお子さんたちと実際に触れ合って、いかがだったでしょうか?
吉田 客席から声援をいただいて、僕らがこの作品でやってきたこと、そして僕らのヒーローであるウルトラマンオメガが現実に存在しているんだと実感できた瞬間でした。特に今日(7月26日)は会場にコウセイのぷちマスコットを10体も持っているお子さんがいて、本当にウルトラマンシリーズが愛されていることが改めて伝わりましたね。
しかも、『X』で主人公の大空大地を演じた高橋健介くんやウルトラマンブルの小池亮介さん、ウルトラウーマングリージョの其原有沙さんらも観客として遊びに来ていて、ウルトラマンへの愛の強さを感じましたし、そのバトンを受け継いだ想いです。
本当にウルトラマンという作品を通して、皆さんに出会えたことに感謝ですね。これからまだまだ夏の暑さに負けないぐらい、ソラトとの熱いバディエピソードが控えていますので、一緒に『ウルトラマンオメガ』を盛り上げていただければと思います。

©円谷プロ

吉田晴登(よしだ・はると)
俳優。2000年生まれ。東京都出身。BOOSTAR ENTERTAINMENT所属。子役として今まで数多くのドラマ、映画に出演。若手実力派俳優として注目を集める。特技に乗馬(乗馬ライセンス3級)、殺陣、所作。趣味は将棋、タロットカード、アクション、カラオケ、ギター、古着巡り。代表作に日テレドラマ『なんで私が神説教』(25年)宮沢圭太役、映画『6人ぼっち』(25年)飯島祐太郎役など多数。

今井あつし(いまい・あつし)
編集・ライター。『映画秘宝』本誌と公式noteで『侍タイムスリッパー』関係者のインタビューを担当。批評家・切通理作のYouTubeチャンネル『切通理作のやはり言うしかない』撮影・編集・聴き手を務める。
『ウルトラマンオメガ』は
TSUBURAYA IMAGINATIONで!
