君にも見える日産の星
日産のラージサイズミニバン、エルグランドが16年ぶりのフルモデルチェンジ。そのCFも「ELGRAND IS BACK」と帰ってきたエルグランドに。帰ってきたといえば円谷プロが手がける名作「ウルトラマンシリーズ」にもあるし、一昨年には「帰ってきたあぶない刑事」というのもある。いずれもいわば作品復活! と印象付ける渾身の一作で、エルグランドもそうなのかもしれない。7月に開催された発表会では「前席で運転を楽しむ方にも、後席でゆったりと過ごす方にも、それぞれの過ごし方に応える時間をお届けしたい」と杉本全氏は相当な意欲作であるとアピールしていた。

グレード体系はエントリーモデルのX、充実装備で主力のG、豪華仕様のVIPの3つ。オーテックモデルや福祉車両もラインナップする。いずれも日産の電動技術、eパワー搭載で7人乗りの3列シート車になる。


エルグランド is バック!
エルグランドは1997年にデビューした日産ミニバンのフラッグシップで計3代を数える。現行モデルは4代目となり、前出の通り16年ぶりのフルモデルチェンジだ。同車はミニバンでありながらも「らしからぬハンドリング」が特長で、4代目もキチンとそれを受け継いでいるという。試乗前の説明でも「ぜひそういった点をご体感ください!」と言っていた。笑顔ながらも「コイツはあのクルマやそのクルマとは違うんだぜぃ」と頑固ラーメン店の主人のセリフのごとく筆者は脳内変換で聞こえていた。
試乗車はGグレードでボディカラーはオプション設定のプリズムホワイト。見た目でわかるIRカット&スーパーUVカット高遮音ガラスなどがオプションされている1台。
大きなドアをしっかり感のあるドアノブで開くと迎えてくれるのは直線基調のダッシュボードと14.3インチの大画面統合型インターフェースディスプレイ。このダッシュボードの形状は視覚的にもサイズ以上に室内を広く見せているようだ。広がり感があり「さすが」という雰囲気。

スタートボタンを押して起動させる。新型に採用されたのは3.5リッターのV6でもディーゼルでもなく、ハイブリッドのeパワー。日産のeパワーはエンジンは発電に徹する黒子で走行のための駆動はモーターだけで行うモノ。専門誌的表現ならばシリーズハイブリッドシステムで、エンジンとモーター、発電機、インバーター、減速機、増速機の5つが基本構成になっている。そして今回搭載されたのは主要パーツを一つにまとめた第3世代のeパワーになる。パーツをまとめることで剛性面やスペース面、自身が生み出してしまう振動面を抑える意味でもメリットに。
システムを起動してもエンジンがかかることがないため、すぐにでも走り出せる状態ながらも車内は静かだ。イメージは遠くで獅子おどしがコーーーン! となっている感じ。

ボタン式になったシフトで「D」を選択し出発進行! その静粛性は走行しても変わらず、驚いたのはタウンスピード域ではタイヤノイズやガラスの風切り音もほぼほぼ感じないこと。先代のガソリンエンジンモデルも静かだったけれど、コチラはまったくの次元の違うモノだ。自分の息遣いが聞こえてきそうなほど。アクティブノイズコントロールが搭載されているのだが、コレほどとは思わなんだ。そのシステムは従来のエンジン音だけでなく、ロードノイズの低減も可能という。eパワーはモーター駆動のハイブリッド。エンジン音よりもロードノイズを抑えた方がより静粛性高く感じる、ということだと思う。

このサイズでも曲がってしまうんだなぁ
新型の足回りはスカイライン譲りのインテリジェントダイナミックサスペンションを採用する。試乗前の説明でハンドリングは前出の通りで、さぞかし硬めにセッティングされているのだろうと思っていたが、まるで違った。一言で申し上げればふわふわ系だった! ふわふわ系だけれど、ずっと上下にふわふわしているわけでもなく羽毛を敷き詰めたところを走っているがごとく、なのだ。
そんなふわふわ系だと条件によってはボディ上部が揺れる気がする、と思ってドライブモードを確認すると、「コンフォート」になっている。新型に用意されたドライブモードはスノー、エコ、コンフォート、スタンダード、スポーツー、パーソナルの6つ。パーソナルはステアリングやサスの特性を自分好みにカスタマイズできるモードだ。なおデフォルトはスタンダードになる。
最初に選択されていたコンフォートモードは50km/hくらいのタウンスピード域か路面のいい高速道路だと即座に寝れそうなほど快適傾向だと思う。次にスタンダードを選択。これにすると乗り心地は大きく損なわれることなく、筆者のような未熟な加減速やステアリング操作に起因する上部の揺れは少なくなった。コーナー進入の挙動もわかりやすいし、ドライバー次第のクルマの姿勢変化という面ではこれ一択で十分なのかもと思う。そしてエコモードはスタンダードから全体的に数%パワーを抑えたような印象だった。
また新型の目玉の一つ、スムースストップ機能もいい感じだ。これは停車直前の微妙なブレーキコントロールをクルマがやってくれるモノなのだが、でしゃばらないのもポイントが高いと思う。
クネッた道に入り、スポーツモードに。すると足回りが全体的に引き締められた印象で、高いアイポイントのミニバンでも穏やかに車体がロールし、不安なく旋回していけた。コレだけ粘ってくれるサスならパドルシフトでも欲しいかな、と思ったのも事実。しかしながらいわゆるワンペダルモードの「eペダル」を選択してみたら、クネッた道では絶妙な減速感でアクセル操作だけでコーナーをクリアできる。コレが楽しく、次のコーナーはまだか! と思ってしまうほどだ。クルマの背の高さは感じるけれど、ドライバーの意思に忠実に動いてくれ、何よりも減速、旋回、立ち上がりとフラつかないのは気分がいい。
コレはサスだけでなくモーター駆動の制御の恩恵もある。新型には前後のモーターとブレーキを統合制御するカシコイ技術、e-4ORCE(イーフォース)が使われている。電動車レースの最高峰、フォーミュラeにも通じるこの技術は、いわば4輪の駆動力をそれぞれにコントロールするモノで、イン側とアウト側でトルクを調整してより曲がりやすくしているのだ。

メーターにはその作動状況も表示可能。そこにモーター特有のオンデマンドなトルクでコーナーの立ち上がりはよりスムーズに。なお、現行モデルの動力性能は先代の3.5リッターモデル並という。体感的にそれは大袈裟でもなくまさにその通りだと思う。

ビックリした、セダンかと思った
そして使い勝手や取り回しは大きいけれど、アイポイントは高いしボンネットの左右が盛り上がっているので車両感覚は掴みやすい。撮影のためにキャンプ場に入った時に、なかなかに狭い道で直角クランクもあるのだが、想像以上に前輪が切れる。カタログ値の最小回転半径は5.8mだけれど、感覚的にはそれよりも小さい印象。
また撮影時にしか座ることができなかったが2列目、3列目は3列目に行くほど座面を高くするシアターレイアウト採用。つまりは3列目になると全体的に上に位置するため、頭上空間はどうかなと思ったが窮屈とか圧を感じるとかもなかった。さらに3列目のシートの出来も秀逸。背もたれ部分も肉厚で長距離でも苦にならなそうだ。日産側も「罰ゲーム的空間から普通に座れ、どの席でもハズレなしです」といっていたがサンシェードも装備するなど、なるほどなぁ、と頷いた次第。


そして上席とされる2列目は広さ、座り心地ともにさすがだ。シートヒーターやベンチレーションはG以上のグレードには標準装備で、電動調整機能やオットマンは全モデルに展開される。なおオットマンは助手席と2列目に設えてあるが、そのすべての席で同時に展開できる足元の広さがあるのだ。
またF31レパードで初採用された世界初のシート中折れ機構も健在。40代以上の方なら「助手席マニアの日産」だったことをご存知かも。そんな助手席にいたパートナーが後席に移っても、このシートに座ると感慨深い? 2列目シートのネックはシートを倒した時に左右のアームレストがそのままそびえていることくらいかも。車内の静かさといいまるでセダンのようなのだ。

最後にバイパスで少しだけプロパイロット(もちろんステアリングは握って)を使ってみた。先行車がいなくなった時の設定速度までの加速が進化している。世の多くの自動車メーカーは事故防止の観点から後続車との速度差をいかに早くなくすために「レッツ猛ダッシュ」的に加速をする。しかしエルグランドでは自分で加速するように速度を乗せてくれる。あくまでも交通量の少ないバイパスでの印象だけれども。残念ながら今回は高速を走っていないけれど運転の楽しさはよぉーくわかったのだ。走って楽しいミニバンが復活だ!

エルグランド
G-e4ORCE
| 価格 | 757万9000円 |
| 全長 × 全幅 × 全高 | 4995 × 1895 × 1975(mm) |
| エンジン | 1498cc直列3気筒 |
| エンジン最高出力 | 140PS/5000rpm |
| エンジン最大トルク | 228Nm/3600rpm |
| フロントモーター最高出力 | 205PS/4400-8500rpm |
| フロントモーター最大トルク | 330Nm/0-4300rpm |
| リアモーター最高出力 | 136PS/5500-10900rpm |
| リアモーター最大トルク | 195Nm/0-3000rpm |
| WLTCモード燃費 | 16.8km/L |



















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