EVでも長距離OK! アウディ SQ8 e-tronに500km試乗!

クルマもオール電化の時代!?

 街中でも頻繁に見るようになってきた電気自動車。2024年のデータで恐縮なのだが、EVの新車販売台数は約2万5000台。そして保有台数は約30万台という。

 EVもこれだけ増えてきたのだからかなり「使える」に違いない。しかしながら。「ウチには充電器ないし」「集合住宅だからウチの分だけつけるわけにはイカンのよ」と身の回りのハードルの方が高い場合も。それなら実際に試してみましょう、と自宅に充電設備どころかタブレットを触ったこともないアナログ派な筆者が乗り出したのはアウディブランドにおけるオール電化のフラッグシップモデル、SQ8 e-tron。

 e-tronは同ブランドの生粋の電気自動車に付くネーミングで、Q8のEV版と思って間違いない。そして「S」の称号はアウディ内でもスポーティなベクトルのモデルに付与されるモノ。スポーティモデルであるからしてお家芸ともいうべき4輪駆動技術クワトロを搭載し、専用のエクステリアを持つ。特にオーバーフェンダーは優雅さの中にも迫力満点。

 試乗車はスポーツバックで、SUVのQ8シリーズに比べてルーフ後端が緩やかなカーブを描き、クーペライクなシルエットを持つ。

 さてお伝えしたとおり筆者の住宅環境には充電設備がない。でもアウディにはそんなユーザーにも力強い味方でもあるプレミアムチャージングアライアンス(以下PCA)があるのだ!

 心強いPCAについては後述。

痺れる性能!

 借り受け時はほぼ100%の充電状態で可能航続距離は450kmと表示されていた。SQ8はマイナーチェンジでそれまでの95kWhから114kWhへとバッテリー容量が大きくなり、航続距離も大きく伸びた。メーターの電費は4km/kWhとなっているから4km×114kWhで456km、なるほどである。なおカタログ値での最高後続距離は482kmとなっているが、400km前後と思っておけばまず大丈夫だと思う。まあ保険をかけて350kmと筆者は想定して街へ出た。

 走り出してすぐ感じるのは乗り心地の良さだった。スポーティなベクトルの「S」モデルだから、のある程度の硬さを想定していたのだけれど、そんな素ぶりを見ることもなく快適至極。装備されるアダプティブエアサスペンションがクルマの姿勢を安定させてくれる。タウンスピードから高速巡航でもその印象は変わらない。特に定速で巡航可能な高速道路ではアイポイントの上下が少ないから運転していても疲れが少なかった。

 SQ8のパワートレーンはフロントに1基、リアに2基の計3モーター搭載。最高出力は370kW(約503PS)、最大トルク973Nmを誇る。500PSオーバーとはいえ2.7tを超える車重じゃあ、と斜め目線で見ていたが、とんでもなかった。一度踏み込めば超絶な加速を披露してくれる。モーター音がターボ音の如くシュワァァーーンと途切れない加速で、スポーツモードを選択すればより切れ味が増す。そしてその超絶な加速中でも驚異的な安定性を誇るのだ。筆者のようなボンクラが加速しても、直線という条件だけならばSQ8の性能をフルに堪能してもクルマが安定しまくっているので安心だった。余談だが0-100km/hは4.5秒という。

 さらに切り返しの多いクネッた道でも安定性は変わらない。床下にバッテリーを敷き詰めるEV方程式の低重心はさすが。コーナー進入から脱出まで見た目から受ける印象以上の速さなのだ。筆者程度の腕ではコーナーにレールが敷いてあるようにオンザレール感覚。同車の3モーターシステムは後輪の2モーターは左右独立で制御可能になっておりコーナリング時の車両姿勢どころか旋回性能をも向上させている。

 もちろん電力消費量を考え、通常走行時はリアのみの後輪駆動になったり、トラクションが必要な強い加速を必要とする時や滑りやすい路面になるとフロントモーターも積極的に介入したりする賢いモノ。

 室内空間はクーペライクながらも後席へのアクセスはもちろん、頭上スペースも余裕がある。

 余裕といえば多くの内燃機関車でいうところのエンジンが鎮座するフロントのスペースはトランクになっていて、後部ハッチの荷室と合わせて大人4人の小旅行では十分以上の積載量を誇る。

 路面を選ばない終始安定した走りといい、使い勝手の良さといい、まさに「シビレる」クルマなのだ。ただし筆者が唯一、コレは絶対に慣れが必要と感じたアイテムもある。それは試乗車にオプションされていたバーチャルエクステリアミラー。ドアミラーの位置にカメラが装備されていて、夜間でも後続車の輪郭がはっきりとわかるくらいなのだが、車内のモニターの位置が意外に下の方になっていた印象で、つい一般的なドアミラーの位置を見てしまい「イカンイカン、もそっと下じゃ」と見直すことが何度もあった。加えて映し出される映像の距離感が掴みにくかったこともご報告。慣れの問題だけれど、先進性が魅力のブランドだし、オプションしてしまおうかな、と考えるオーナー予備軍の皆様は一度体験された方がいいかも知れぬ。

後戻りできないネットワーク?

 さて、今回は500km近くを走破したのだが冒頭にあるように筆者の自宅には充電設備がない。今までは大型ショッピングモールや高速のSA、コンビニなどで充電していたのだが、アウディには天下御免のPCAがある! PCAはアウディ、VW、ポルシェブランドで展開する急速充電器ネットワークでその3ブランドなら正規ディーラーで90kW規格以上、最大150kW規格の急速充電器が使えるという感涙モノの。さらに2025年の7月からはここにレクサスの参加が表明されている。

 コレはアウディの提案する出先充電(ゴルフ場やリゾート地でクルマを使わない時に充電する)に磨きがかけられたカタチで、いずれか1つの正規ディーラーだと地域によっては数が限られてしまうが3ブランドになると意外に多い。

 今回の撮影にあたって借り受けから自宅までの電費が3.0km/kWhと低迷。翌日の片道200kmは理屈上可能だけれど、精神衛生上ヨロシクない。そこで出かける前に充電してみようかと近所のVWディーラーへ。この時点でのバッテリー残量は63%。充電開始30分もかからずで80%へ。

 そして高速走行。EVは速度一定の高速だと加減速での充電が出来ず、電費が伸びないのはもはや昔の話。それにバッテリーに最高のパフォーマンスをさせるようにフロントバンパーには温度調整用のシャッターも備えている。

 100km/h巡航でメーター内の電費は4.0km/kWh。当たり前だけれど距離を稼げばバッテリー残量は減っていく。無事に撮影し帰路に着くのだが、残り40%だとやはり高速は不安。そこで最寄りのPCAの場所を調べたら、アウディの正規ディーラーを発見セリ。そこには150kWh規格のモノがあるという。実際に使ったところ、これが早っ!! 150kWh規格ってこんなに早いのか!! と感動モノ。最初のVWディーラーは90kWhだったが、それでも早かったが150kWh規格はもっと早い。待ち時間はスマホでメールチェックして何本か電話をしている間に終わってしまった。なので急速充電を謳いつつも確実に30分待たねばならないと「待たせやがってよぉ」なんて不遜な考えが出てしまうけれど、PCAはかなり使える。実質80%まで20分もかからなかった。

 ジツは高速のSAでも充電を試みたのだが、そのSAの充電器は40kWh規格。さらにもう一台充電中ということもあって、なかなかバッテリー残量が増えず、30分待ったのだが、ええい!

 的に充電を終わらせてしまったのだ。前日の90kWh規格に感動したのもあったし、PCAのディーラー網は想像以上に数があるので、そっちでもいいか、と思ったのがバックボーンなのだが。

 それにしても。PCAでの充電は早い。それは間違いない。例えば最近目にするショッピングモールなどでは30kWhに満たない規格も多く、複数台充電しているとなかなか充電されず、「この後予定があるんだけどなぁ」的に時間に追われていると精神衛生上ヨロシクない。

 アウディではPCA以外でも利用可能な150kWh規格の充電器を備えたチャージングハブを整備している。紀尾井町を皮切りに芝公園、厚木と増やしている。

 PCAなら充電や充電時間のハードルが低くくできるのは間違いなかった。EV入門は意外にも輸入車なのかも!?

アウディSQ8 e-tron

価格1492万円〜
全長×全幅×全高4915×1975×1615(mm)
フロントモーター最高出力213PS
リアモーター最高出力375PS
システム最大トルク973Nm
最大航続距離482km

アウディ
SQ8 e-tron
問 アウディコミュニケーションセンター 0120-598106

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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