【腕時計を読む!#16】アメリカ軍用時計MIL-W-46374の系譜

第二次大戦からこちらもっとも数多く使われてきた軍用時計はフィールドウオッチである。特殊な機能を持たないごく普通の時計だ。呼び名も地味である。「ジェネラルパーパス」、汎用時計である。華々しくもないし、ドラマチックでもない。けれど考えるべき点がひとつある。この時計の最大のユーザーである歩兵がいるフィールドとは戦場なのである。軍が求める「ごく普通の時計」とは非日常の極みであるバトルフィールドを日常にしている時計ということになる。

Photo/WPP Archives 構成/ワールドムック編集部

MIL-W-46374のミルスペックコードを与えられたアメリカ軍の腕時計は見た目こそ普通の腕時計と変わらないが、“使い捨て式” として開発されたという大きな特徴がある。

その多くは一般用途(General Purpose)の腕時計として、歩兵などの地上部隊に支給された。

高価な精密機器として不動の地位を確立していた腕時計を使い捨てにしてしまうのはユーザーの視点では全く考えられないことなのだが、国内外で勤務するとてつもない人数の兵士に一度支給した腕時計を返納させ、メンテナンスして再支給する手間を考えれば兵站面のロスが少なくなるのは確かで、強大な軍事力を持つアメリカ軍ならではの発想と言える。

1964年に生まれたこの腕時計はその多くが風防だけでなくケースにまでプラスチックが用いられるなど見るからに使い捨て式の外観となっているが、精度は軍の要求をしっかりと満たしており、納入メーカーの中にはベンラス、ハミルトンといった名門の姿もある。

汎用腕時計、あるいは
フィールドウオッチMIL-PRF-46374G
にいたるエヴィデンス

MIL-W-3818A(1956年〜)

MIL-W-3818B(1962年〜)

GG-W-113(1967年〜)

ここで登場する「GG-W-113」。なぜ、「MIL」ではなく「GG」なのか。「GG」は特定の言葉の頭文字をとった略称ではなく、アメリカ政府の調達分類コード(Federal Supply Classification)における「楽器・精密機器・時計」グループに割り当てられた記号。「MIL」は国防総省(DOD)によって管理されているのに対し、「GG」は一般調達局(GSA:General Services Administration)によって管理・発行された連邦仕様(Federal Specification)である。

GG-W-113は、1967年から1980年代後半にかけてアメリカ軍のパイロットや地上部隊向けに支給された、機械式ミリタリーウォッチ。ベトナム戦争時代を象徴する時計の一つであり、視認性、耐久性、そしてメンテナンス性を重視していた。

MIL-W-46374(1964年〜)

コストと量産を重視した「ジェネラルパーパス」がここからスタートする。ディスポーザブル(Disposable)、つまり使い捨て腕時計という実にアメリカ的な思想を纏っている。

MIL-W-46374A(1973年〜)

MIL-W-46374B(1975年〜)

TIMEX CORP製

MIL-W-46374C(1983年〜)

MIL-W-46374D(1986年〜)

MIL-W-46374E(1989年〜)

MIL-W-46374F

MIL-W-46374F

MIL-PRF-46374G(1999年〜)

現在も有効な最新の性能仕様規格、フィールドウオッチ「MIL-PRF-46374G」は、突然現在という時代にピンポイントで舞い降りてきたわけではない。直前にはMIL-W-46374Fいたわけだし、その前にはE版、もうひとつ前にはD版、C版、B版、A版があってゼロベースのMIL-W-46374になる。その前は1956年のMIL-W-3818。

ここまでが、かつての「使い捨て時計」という位置付けだった「46374」規格が、リビジョンを重ねるごとに「高性能なプロ用ツール」へと再び昇格していった、第二次大戦以後のフィールドウオッチの系譜とみることができる。

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