テスラ・モデルYを「雪道」で試乗!!


EVは雪道に強いのか!? 体験してみた!

クルマのバッテリーはいわゆるバッテリー液である希硫酸が化学反応を起こし、電気の供給をする。ところが外気温度が低くなるとその化学反応が鈍くなりバッテリーが本来持つ性能を発揮できなかったり、性能低下したりする。

よくいわれるのがいざエンジンをスタートさせよう、という時にバッテリーの電圧が足らずにエンジン始動ができなくなってしまう……。つまりバッテリーは寒さに弱いのだ。

それを防ぐ意味でも皆様ご存知の容量の大きなバッテリーを積む寒冷地仕様というモデルがあるくらい。では生粋のEVはどうなのよ、ということで体験してきた。

近未来的なテスラ モデルY

EVメーカーの代名詞的存在のテスラから連れ出したのはモデルY。それは2019年にアメリカで発表され、引く手数多で2022年にようやく日本上陸を果たした人気の1台。

同モデルはテスラ史上最量販セダンを記録したモデル3のSUV版といえばわかりやすいと思う。事実、コンポーネンツは75%ほど共有している。

カテゴリー的にはコンパクトSUVになる。デザインはフロントグリルに穴の空いていないいかにも近未来的EVデザインなモノ。

一回り大きいモデルXと違い、ドアは撫でるだけでは開かない。幅の広い部分を押し込むとレバーがコンニチワの仕掛けだ。降車時はボタンなのだけれど。

EVならではの室内空間

ドアを開けると眩しいくらい白い内装が迎えてくれた。これだけ白いと、どこぞの悪徳政治家は眩しくて乗れまいて。

このシート、見た目は本革っぽいのだがジツは動物性素材を使わないビーガンレザー採用。ちなみにこのブラック/ホワイトの内装は12万6000円のオプション設定。

それにしても車内は広い。デフギアやミッションがないEVだからといえばそれまでだけど、海外では3列シートの設定があるくらいといえば、その広さがおわかりいただけると思う。

今のところ日本仕様は後席で大人が余裕で足を組める2列シート5人乗りだけだ。また収納も豊富に用意されている。

フロントフード下にも旅行バッグが入るくらいのスペースはあるし、リアのラゲッジスペースも通常で854L、4:2:4の分割可倒式採用の後席を倒せば2041L容量の広さになる。

EV界の演歌歌手?

運転席に陣取ると、筆者のようなアナログ人間にはビックリな何もない(ように見える)インパネ。あるのはステアリングから生えたウィンカーレバーとメルセデスよろしくのシフトセレクター、ステアリングにある2つのダイヤルのみ。

メーターパネルもない。ぢゃあヘッドアップディスプレイ……もない。まるで吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」(編集部注:1984年リリース)の実写版みたいと思ったが、そこは21世紀のクルマ、ほぼすべての操作や情報確認はセンターにある15インチのディスプレイから行う。

それはグローブボックスの開閉までと、気持ちいいくらい徹底しているモノ。ユニークなのはハザードランプのスイッチ。これは天井にある。またテスラ乗りは自分のスマホアプリとクルマをつなぐのも必須項目。

連動したスマホを持って近づけば開錠され、運転席に座ればいつでもスタートOK。このスマホアプリは他にも充電の状況や空調、メインテナンスの予約から狭いスペースでの乗り降りに便利なサモン機能(クルマをリモートで前後進させる)と一度使ってしまえばナシではいられないほど。

航続距離は595km

さて。試乗車モデルYパフォーマンスグレードの航続距離はカタログ値で595km。ジツはRWDモデル(507km)よりも長いのだ。

今回の行程は往復で約360km。満充電で十分往復できる距離だ。走り出すとアクセルペダルの量に忠実な走り。モーター特性による抜群のトルクレスポンスでスロットルの操作に遅れはないモノ。

その図体からは想像できない俊足っぷりでメーカー発表の0-100km/h加速は3.7秒。実際この数値はBMWのM3やポルシェ911並。いかにイージーに速いか、である。

高速を90km/h巡行で抜け、山道に。登りのコーナーでは若干クルマの重さを感じる場面もあるけれど、俊敏。昔のスポーツカー的な表現ならパワーでカバーしている印象。

モデルYはSUVゆえ、モデル3よりもやや重心が高めになる。もちろんメーカー側もそれを熟知しているので足回りは強化されており、スポーツモードを選択すればかなりのペースで走れる。

気になる積雪路での走りも同様でトルクモリモリなEVでも急に滑るとかはない。試しにクルマのいない駐車場で無理やり挙動を乱すような運転をしても乱れるのはほんの一瞬。滑るかな、と思う時にはクルマの方で修正完了、という具合で終始安定。

そんなことをしていたらバッテリー残量が必要以上に減ってしまったので、保険をかけて充電を考えることに。

検索すると充電スポットが意外にも多いことにびっくり。そこで一番近い場所を選択。しかしながら筆者は普段からハイオクをがぶ飲みするクルマを使っているので充電カードの持ち合わせはない。

けれど充電はゲストとして可能なのだ。充電器の種類にもよるけれど、充電器にあるQRコードを読み取ればその指示に従って操作すればOK。

充電は計画的に

ということで充電を始めたのだが、充電器の出力が6kW。充電ポートにつなげたから安心、と思ってしまったがこの出力では小一時間充電しても20km分くらいしか充電できなかった(筆者の支払いは45分で275円だった)。

帰りは下り坂も多く、残りの走行距離が示す数値自体十分だから精神衛生上いいのだが、ギリギリだとそのあとの行程に響いてしまう。

今回はガソリン車から何も考えずに乗り換えた感じで動いたが、やはり下調べは重要である。日帰りで出かけるときなどは例えば、ゴルフをしている間、スキーをしている間、日帰り入浴をしている間、など隙間時間をうまく使えば問題はないはず。

自宅に充電設備があって、下調べをキチンとすれば冬でも普段使いから遠乗りまで今やEVでもハンデはないことを確認できた。

またテスラ独自の充電網でもある「スーパーチャージャー」を使えば充電時間も短くて済む。充電器の出力が90kW〜250kWだし、ナビで目的にしておくとクルマの方であらかじめバッテリー温度を上げてくれ、差し込めば大容量の充電が即対応可能。

EVビギナーにも嬉しい価格設定

昨今の物価高にあってモデルYは最大80万円の値下げを断行。その価格はシングルモーターのRWDで579万9000円から、AWDのパフォーマンスで750万9000円からに。

間違いなく深夜の通販番組では拍手が起こるところだ。値下げ分で慣らし運転兼ねて家族旅行も可能だ。ブラボー!

テスラ モデルY


価格 750万9000円から
全長×全幅×全高 4750×1921×1624(mm)
フロントモーター最高出力 215PS
フロントモーター最大トルク 240Nm
リアモーター最高出力 320PS
リアモーター最大トルク 450Nm

テスラ
https://www.tesla.com/ja_jp
問 テスラ 0120-966-774

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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