ウィークポイント返上
スバルのストロングハイブリッドが話題である。ついに出た! とか、ようやくか……と巷の反応は様々。なんといってもスバルファンの泣きどころはライバル車の燃費になかなか追いつかない面が指摘されていた。それが今回、引けを取らないどころか左右対称のシンメトリカルAWDに低重心の水平対抗ユニットなどメリットがより光るようになった。
ストロングハイブリッドとか言うと、どこかのアルコール飲料的響きになっているが、もちろんそーではない。スバルの魂、水平対向エンジンがモーターと手を結んだ。メカニズム的にはトヨタのハイブリッド方式、THS-IIと同じモノで、モーターだけでも短距離ならば走行可能。
スペックはエンジンが160PS/209Nm、モーターは119.6PS/270Nm。エンジン排気量も2.5リッターと余裕があるので流す分にはゆとりが感じられるし、燃費の面でもWLTCモード燃費で18.8km/Lと大きく改善されている。
しかしスバルのこだわりはここから。ハイブリッドといってもAWD方式は死守しているし、それも後輪はモーターでね、と言う生半可なモノではなくキチンとフロントからプロペラシャフトを使っているのだ。しかも定速巡航時などAWD性能が過剰である、とクルマが判断するとプロペラシャフトに備わったクラッチで前輪駆動になるという優れモノなのだ。
しかし。ストロングハイブリットの方はお値段も420万2000円からと高額だし、納期も長い、らしい。それなら燃費も少し向上した純内燃機関こそ運転好きの多いスバルファンにはぴったりなのではないか。ということで、ここは敢えての純ガソリンモデルなのだ。

複雑なマニア心!?
試乗車はスポーツEX。純内燃機関車の装備充実系と思えば間違いない。


現行モデルはフォレスターとしては6代目になる。デビューは2025年。用意されたパワートレインは純ガソリンエンジンとストロングハイブリッドの2つ。グレード体系は前者2つ、後者4つの全6モデルになる。そして試乗車は前述の通り純ガソリンエンジンなのだ。
オメー、話題ならストロングハイブリッドだろう! とお叱りの皆様、ごもっとも。しかし体育会系スバリストの皆様なら共感いただけるはず。それはスバル車の魅力は低重心エンジンとシンメトリカルAWDのもたらす気持ちのいい走り。それならばガソリンエンジン車の方が色濃いハズ。それにストロングハイブリッドはアチラコチラで話題になっているし、車両価格を考えるとガソリンモデルの方がコスパ抜群ではないか、と。先代の5代目は車両価格だけならば最も上級グレードであっても約390万と400万円の大台を超えることはなかったけれど、現行モデルは400万超えのプライスからスタートであるからして。
それに、マニアックな話で恐縮だが、クルマの速さを図るモノサシとして0-100km/h加速というのがある。1.8Lターボは8.6秒。ちなみにストロングハイブリッドは9.6秒。排気量も大きくモータードーピングもしているのに純内燃機関車の方がちょっとだけ速い。嗚呼、マニアってフ・ク・ザ・ツ。
盛りすぎな標準装備品
運転席に陣取るとフォレスターとしては初採用の縦型ディスプレイが目をひく。大きさは11.6インチ。もちろん自分のスマホと繋ぐこともできるし、各種操作、情報はここから確認できる。筆者が安心したのは空調の温度設定ボタン。こちらはディスプレイのタッチ式でなく、押した! と分かる物理的なモノ。風量はオートでも良いけれど、温度は自分で設定しなくてはならぬ。そうすると「お触り感覚」があった方が実感がわく。

また装備の面でいうならばETC2.0やステアリングヒーター、前席だけでなく後席左右のシートヒーターも全モデル標準装備。先代より大きくなったボディは後席の広さにも貢献しているので頻繁にアウトドアへ行くファミリー層にもピッタリだし、未舗装路を送迎に使うペンションオーナーの営業車としても最有力候補と思われる。なお後席はリクライニング機構も備わる。


扱いやすいエンジンも魅力
アイドリングでは水平対向ユニットのビートを聴きながら、と言いたいがほぼほぼ聞こえない。ガソリンエンジンでも車内の静粛性は想像以上だ。走り出せばそれなりに聞こえなくはないが「SIドライブ」の燃費とバランスを重視する「I」モードではスバルの魂は完全に黒子な印象。そのエンジンスペックは177PS、300Nm。1.8リッターターボであえてトルクを太くした味付けは、1600rpmも回しておけば最大トルク域に入るので、「出だしが遅い」とか「もう少しなんとか」はまったく感じない。むしろ扱いやすさの方がまず感じられた。ボディも先代よりも大きくなり、車重も70kg増えているのに。そして上まで回した時でも回転の伸びは気持ちよく、回転に合わせ車速が乗っていく楽しさはさすが。
ミッションはリニアトロニック(CVT)。体育会系スバル乗りでう〜んとなるミッションとも言われるが、「S」モードにしておけば右足の微妙な動きも見逃さないくらい。これがホントなのだ。高速で90km/h巡航では約1500rpm。これを同じ速度で「S」モードにすると2500rpmになる。いつでも加速OK! ということなのだが、「S」モードでステアリングに備えてあるパドルシフトを操作してもシフトアップしなかったこともご報告。高速を流していると絶妙な乗り心地と静粛性は1クラス上の高級車並で、ドライブ依存症的なユーザーも大満足。加えてグレードにEXの称号がつくモデルはアイサイトXを備えており、渋滞時にはハンズオフドライブが可能。
高身長のドリブラー
クネッた道に入るとまず、この地上最低高(220mm)でこのアイポイントの高さなのにドライバーの思ったように曲がってくれることに感動を覚えるはず。いやホント。なんいってもフロントがスッとインに入っていくのが気持ちいい。サッカーで相手陣地に切り込んでいくドリブラーのごとく。
ボディはスバルグローバルプラットフォーム(以下SGP)とフルインナーフレーム構造によるモノ。SGPは筆者、3代目XVの試乗会でその素晴らしさに感動した記憶がある。ステアリング操作のダイレクト感はアタックNo.1(編集部注:浦野千賀子先生の人気漫画です)ではないけれどまさに「三位一体」。ブンガク的な表現ならば三重の光が一つの輝きとなった、であろうか。

スバルブランドのお家芸とも言えるAWDも内燃機関車ではトルク配分をフロント60、リア40が基本のアクティブトルクAWDを採用する。メーカー曰く「レーンチェンジした時の初期操舵の応答性とライントレース性の向上」というが切り返しの多い道でも安心感は高い。組み合わされるサスは内燃機関車に路面からの入力に対してスムーズに動く超飽和バルブ付きダンパー。そしてボンネットを開けるとエンジン本体は低い位置に鎮座しているのが分かるほど。

これらを持ってしても芯に「走り」にこだわりがあるのが分かるし、「誰もが安全で快適にそこまでも走りたくなるクルマ」のスバル哲学そのモノを体験できる。サスペンションを良く動かせる堅牢なボディはクルマが余計な動きをしない。それはは乗っていても疲れが最小限で済むのだ。それでいて「お楽しみ」も可能。高速4割、山道4割、流れの速い幹線道路1割、渋滞1割で800km近く走ったトータル燃費は13.1km/L。高速では13.8km/Lまで燃費は伸びたが、思ったより伸びなかった。しかしながら。これだけパワー感を感じるのにレギュラーガソリンでOK! はセールポイントでもある。ストロングハイブリッドも魅力だけターボモデルもオススメー!

フォレスター SPORT EX
価格 | 419万1000円〜 |
全長×全幅×全高 | 4655 × 1830 × 1730(mm) |
エンジン | 1795cc水平対向4気筒ターボ |
最高出力 | 177PS/5200-5600rpm |
最大トルク | 300Nm/1600-3600rpm |
WLTCモード燃費 | 13.5km/L |