Italian Design Day2026 ~これからの公共デザイン~「アーバン・ラプソディ 共同の家としての都市」

常にトレンドの最先端を牽引する、芸術の国イタリア。そんな中、イタリアの卓越したデザインを、世界中に広めるイベント「イタリアン・デザイン・デー(Italian Design Day)」が開催された。

イタリアの外務・国際協力省が、毎年春に開催するイベントで、今年は、デザインアンバサダーとしてマラ・セルヴェット氏をゲストスピーカーとして、桐山登士樹氏を迎え、講演会「アーバン・ラプソディ 共同の家としての都市」が、イタリア文化会館(東京・九段下)で開催された。

「イタリアン・デザインデーは世界中で開催されるデザインのイベントです。開催を祝福します」と、オープニング・スピーチを述べる、イタリア文化会館(東京)の館長シルヴァーナ・デマイオ氏。

また開催を記念して、駐日イタリア大使のマリオ・アンドレア・ヴァッターニ(Mario Andrea Vattani)氏が登壇し、デザインのビジョンについて言及した。

「イタリアン・デザインデー」は、イタリアの高品質なデザインを紹介するイベントとして、デザイン製品のみならず、インフラや空間も含めて広い分野で展開されます。製品の輸出のみならず、日伊の協力関係を生み出していくことが大切なのです」とスピーチを述べた、マリオ・アンドレア・ヴァッターニ(Mario Andrea Vattani) 駐日イタリア大使。

また、貿易促進部 部長のジャンパオロ・ブルーノ氏が登壇し、デザインが社会にもたらす価値について触れた。

「広場を中心に発展したイタリアにとって、公共空間はコミュニティの場として機能します。そのため、都市は人々の日常生活や関係性を育み、文化を形成するエコシステムと言えるでしょう」

「こうした空間へのこだわりは日伊に共通する価値観です。つまり、デザインは都市の声を調和へと繋ぐ役割を担うのです」と語る、ジャンパオロ・ブルーノ貿易促進部 部長。

2050年までに、世界の人口のかなりの割合が80歳を超えると予想されている今、私たちの都市を、いかにデザインによって「共同の家」へと変えていくか、新たな発想の転換が必要になっているという。

講演会では、現代都市と、そこに暮らすコミュニティのアイデンティティ形成をテーマに、これからのデザインに必要な役割が語られた。

まず、ミラノを拠点に活動するイタリアの建築家・デザイナーである、マラ・セルヴェット氏が登壇。

自身の代表的なプロジェクトを通じて、ヒューマニズムに富んだ、イタリアのデザイン・アプローチを紹介した。

ミラノに2021年にオープンした、デザインの美術館「ADI デザイン ミュージアム」は、ADI コンパッソ ドーロ財団の歴史的なコレクションを収蔵する美術館だ。マラ・セルヴェット氏は、このミュージアムのデザインを手掛けた。

マラ・セルヴェット氏が重点を置いたのは、エンタメのための美術館ではなく、来訪者に語りかけるようなインターラクティブな美術館にすることだった。

そのため、多様な文化レベルのニーズに応え、鑑賞者である “人” を中心に据えたデザイン設計を施し、貴重なアーカイブ作品が、ミラノから世界に発信される空間を創出した。

「デザインが語りかける体験は、子供から大人まで生涯忘れることができない経験となるだろう」と語る、マラ氏。

さらに、マラ氏が手がけた、イタリアを代表する世界遺産である、古代ローマの円形闘技場「コロッセオ(Colosseo)」の中にある、ブックショップもユニークだ。

考古学やコロッセオそのものに関する豊富な種類の出版物が販売されるブックショップであるため、訪れることで、歴史的建築物を学ぶことができるような、デザインに工夫を凝らしたという。

建物全体を通してモダンな内装ながら、見学経験の一部になるような連続性を演出した。

イタリアを代表する建築家 レンゾ・ピアノ氏(Renzo Piano)が設計した、イタリア・トリノに君臨するオフィスビル「インテサ・サンパオロ本社ビル(Intesa Sanpaolo Office Building)」。

周辺環境との調和を重視し、人と自然との調和を目指して設計されたこのタワーは、環境責任、建築美、そして市民参加の象徴として機能している。

マラ氏は、ビルの37階にある、大空間のインスタレーションを手がけた。無数のスクリーンを有機的に組み合わせたもので、外部からの光が加わった時、光沢のある色彩の波を生み出すのが特徴だ。

「トリノの広場や通りを照らす毎年恒例の野外光の祭典『ルチ・ダルティスタ(Luci d’Artista)』の一環で行われたインスタレーションで、100枚の葉が昼夜問わず美しく光り輝き、自然と対話する ”森“ をイメージしてつくった作品です」

「これからのデザインとは、こうしたポジティブな変化を推奨していくものではないでしょうか。デザインが、より良い明日を作る、大切な役割になるでしょう」と語る、マラ・セルヴェット氏。

桐山登士樹氏は、デザインの可能性を追い続けるデザインディレクターだ。現在、富山県美術館美術館副館長、富山県総合デザインセンター所長、TRUNKファウンダーなどを務めており、1991年より国内外のデザインの展覧会をキュレーション、プロデュースしている。

デザインの新たなビジネスモデルを常に展開し、「JDN」では、25年間のあいだ若手デザイナーにもフォーカスし、その育成に力を入れるなど、幅広い活動を行なっている。

講演では、「イタリアと日本生活のデザイン展」、ミラノ・サローネ、ミラノ国際博覧会など世界的な場で発表してきた、自身のこれまでの展示作品に言及。

富山県では、資源を持続可能な形で効率的かつ循環的に有効活用し、経済成長につなげるサーキュラーエコノミー(循環経済)の推進にも力を入れていると言う。

「高齢化時代に突入した今、未来を見据え、“幸せとは何か” を改めて考える必要があるだろう」と、語る桐山氏。

公共的なデザインとは、単なる装飾ではなく、社会を根本から革新する方法として、包摂的かつ人々の感情に訴える空間を、創出することができるものだという。

こうしたデザインは、近年の人口動態の変化に対応できる手段として、人々に新たな行動を促し、帰属意識や共有の感覚を強めるとも話す。

都市や公共空間のあり方を考えるうえで、こうしたデザインそのものの役割を考察していくことが、今後重要になるだろう。

今年開催される、ミラノサローネでは、「A Matter of Salone」をテーマに、デザインの意義に関する考察を経て「素材」に焦点が当てられる予定だ。

デザインが、対話と人々の関係性を育む革新的な要素として機能する時、世代の垣根を越えて、都市に人々が集い、新たな文化が生み出され、育まれていくことだろう。

イタリア大使館
イタリア文化会館
イタリア大使館 貿易促進部

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