祝!! マジメなクルマ、フォルクスワーゲン・ゴルフが50周年を迎えたゾ! 初代からレアモデルまでゴルフ一族の全貌! ~前編~

ポストビートルとして誕生

いきなり余談だが、ゴルフのネーミングはスポーツではなく、メキシコ湾から大西洋を横断する潮の流れの意。そのゴルフだが、コンパクトモデルのベンチマーカーとされるだけあり、ブランドポリシーでもある質実剛健なクルマ作りや価格帯を超えたオーバークオリティな品質などその魅力は今も受け継がれている。クルマ自体の品質はもちろんなのだが、ジツは現行セレナのパワステまわりも先代のゴルフのソレをお手本にしていると言われている。そんなマジメなクルマ、ゴルフの歴史や最新のホットモデルをご紹介。

政治や企業のトップ人事でもそうなのだが、次期エグゼクティブ候補をポスト○○という。ドイツの巨人フォルクスワーゲン(以下VW)に当てはめれば1960年代後半には(編集部注:VWの創業はナチス政権下の1937年設立)世界的大ヒット車種ビートルの販売台数が落ち込み、後継モデルの開発が急務になっていた。そこでビートルつながりだったかは定かでないが次期型ビートル、つまりゴルフの設計をポルシェ社に依頼する。コードネームEA266といわれるモデルだ。このコンセプトカーはポルシェらしいアイデア全開で1.6リッターの4気筒エンジンはリアよりのミッドシップレイアウトを持っていた。しかしプロトタイプが何台か生産されたが2台だけが残されただけで、白紙撤回に。

1970年になるとイタリアのカロッツェリアに開発を依頼、その指揮をとったのがイタルデザインを立ち上げたあのジョルジェット•ジウジアーロだ。直線基調なデザイン、フロントに横置きされたエンジンなどもキャビンを広くするためともいわれ、効率的なパッケージングのクルマが出来上がった。下の画像の赤いクルマがコードネームEA276と呼ばれるプロトタイプで、ほぼ市販化されたゴルフに近いボディラインを持っている。

大ヒット街道まっしぐら

初代ゴルフは1974年にデビュー。その魅力はコンパクトなボディサイズながらも広い室内空間を持ち、ポストビートルとして650万台以上が生産される大ヒット車になった。そのヒットぶりをしめすエピソードとして登場からわずか2年後の1976年には100万台目がラインオフしている。モデルバリエーションも豊富で3ドアや5ドアだけでなくドイツのコーチビルダー(架装会社)、カルマン社が手がけるオープンモデルもラインナップ。このオープンモデルは1980年に追加され2世代目の終わりの1992年まで作られた。

今も人気の2代目

2代目へのバトンタッチは1983年。メーンラインナップは豪華装備のGLiと中間のCLi、ベーシックなCiの3つ。CLiは年式によって上級モデルと同一のエアロバンパーを持つモノも。丸目のヘッドライトを持つ最後のモデルでもあり、コアなファンが多いのもこの世代の特長で、今も当時の新車価格並に取引されている個体もあるほど。

ステーションワゴンも加わり魅力倍増

1991年には3代目へ。この代のトピックはカブリオレ初のフルモデルチェンジとステーションワゴン、初の6気筒エンジン搭載車の追加の3つ。特にハイパワーな6気筒エンジンはV型を採用し、2.8リッターの排気量から170PSを誇った。また衝突時の安全性の向上を目指した3代目は量産車としては初のフロントエアバッグを設定したクルマでもある。

華麗な転身をとげた

4代目のデビューは1997年。それまでのシンプルさを身上としていたが高級化路線に。ボディサイズも1700mmを超え完全に3ナンバー化した。いち早く横滑り防止装置を装備するなどライバルに先駆けた基準を設けるなどまさにベンチマーカー的存在。3.2リッター241PSのV6エンジンを収めた最速のゴルフを謳う4輪駆動のR32が登場したのもこの代から。

基本はアウディA3でもゴルフ

2003年に通算5代目のゴルフが誕生した。先代からプレミアム路線になっていたが5代目も同様。リアサスは豪勢なマルチリンク方式を採用するなどクルマの基本コンポーネンツはドイツプレミアムブランド、ジャーマンスリーの一端を担うアウディのA3と同じモノ。また驚くことに当時の記者発表会資料にはボディのねじれ剛性が先代から80%(!!)以上も向上したとされる。もはや戦車の様な頑丈なボディには直噴エンジンが採用。モデル途中からはスーパーチャージャーとターボチャージャーを組み合せたTSIエンジンを搭載。ダウンサイジングエンジンの代名詞となった。

変わらないことが大きな変化

6代目ゴルフことゴルフ6のデビューは2008年。ドアハンドルやアンテナで少し変わるが基本コンポーネンツやボディサイズは先代とほぼ同一。ダウンサイジングエンジンもより進化しモデル途中には3ナンバーサイズのボディながらも1.2リッターの排気量を持つモノが加わった。なお日本導入時の新車価格は249万円からだった。

骨格から変わった7代目

2012年にモデルチェンジし、ゴルフ7へ。先代までとうってかわり骨格から見直され、新世代のプラットフォーム、MQBを初採用。これによって車重が100kg以上も軽量化し、基本走行性能が向上している。また1.4リッターの直4ターボエンジンは気筒休止システムを新たに搭載することで燃費も上進。一方室内は8インチのタッチスクリーンや12.3インチディスプレイを用いたデジタルメーターなど最新技術を余すこと無く投入した。日本では輸入車初のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞。

全モデルマイルドハイブリッドに

現行モデルのゴルフ8は2019年にデビュー。全モデルに48Vのマイルドハイブリッドが採用されるなど電動化路線に。このマイルドハイブリッドは組み合わされるDSGミッションと相性がよく、微速時などがよりスムーズに扱えるようになった。インパネのデジタル化も進み、もはやスマホ状態になっている。

忘れてイケナイのがホットハッチの存在

大衆車は必要充分な性能が当たり前と考えられていた時代。例えば速度無制限のアウトバーンで追い越し車線を走るのはメルセデスやBMWの大排気量車ばかりだったところに現れたのがゴルフGTiだ。フロントグリルは赤で縁取られ、ブラックアウトされたメーカーロゴのホットハッチはそんな常識を一変させるインパクトだったという。初代の登場は1976年。日本へは正規輸入されなかったモデルになる。

その後代を重ねるに連れてスポーツ性能に磨きをかけていった。元F1ドライバーでモータージャーナリストのレジェンド、故ポール•フレール氏もFFモデルのGTiをさしてスポーツカーのお手本とも言わしめた直進安定性やハンドリングの高バランスは今も健在だ。

これを知っていたらゴルフ通!?

日常からスポーツ走行まで奥が深いのがゴルフの魅力だが、レアモデルも存在する。例えばゴルフ2にあった「ラリー・ゴルフ」は代表格かも。WRC参戦を考えて作られたホモロゲーションを満たすクルマだ。ホモロゲーションとして市販されたそれに搭載されたエンジンはコラードG60のモノで180PSを発揮、4輪駆動を採用。ラリーの舗装路(ターマックステージ)にフォーカスしたため幅広のタイヤを履くためのブリスターフェンダーが特長だ。日本へは正規輸入されなかったが今やコレクターズアイテムになっている。

そしてゴルフ2で正規輸入されたレアモデルは「カントリー」だろう。いまでこそハッチバックとSUVのクロスオーバーがあっても不思議ではないが1991年当時の市場は異端児扱いだった。国内限定110台のそれはゴルフの4WD車「シンクロ」をベースに車高を250mm(も!)上げ、フロントにはプロテクトバー、リアにはスペアタイヤを装備し、ワイルド感をアピール。悪路走破性は今ひとつだったようだが街中で見る機会がほとんどない稀少な1台。

最後のレアゴルフは1台ぽっきりのショーカーになる。情熱をかき立てるコンセプトのGTiファンのためにVWが作ったのが「GTi W12-650」。ベースはゴルフ5のGTiなのだが、後席のあるはずの部分にはベントレー製、いやVWがベントレー用に開発した6リッターW型12気筒ターボエンジンが積み込まれている。その最高出力は650PS! 最高速は325km/hという。そのスペックながらも後輪駆動というのが驚く。なおこのW12気筒エンジンは当時のVWグループ社長であったフェルディナント・ポルシェの孫、フェルディナント・ピエヒ(ピエフではない)が日本の新幹線内で思いついたのは業界内では有名なエピソードだ。ゴルフVR6のV型6気筒エンジンを横に並べたらVとVでW型エンジンになる。ちなみにこの発想は16気筒のブガッティ・シロンまで続いている。(後編に続く

フォルクスワーゲン
問 フォルクスワーゲンカスタマーセンター 0120-993-199

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  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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