デザインの本場Milanoで出会ったアートピース〜「ミラノサローネ2025」リポート〜

世界のトレンドをリードするイタリア・ミラノ。中でも、「ミラノサローネ(Salone del Mobile.Milano)」は、毎年4月にミラノで開催される、世界最大級の国際家具見本市だ。

約2000社もの企業が出展し、約40万人が来場するトレンド発信の祭典で、会場となる「ロー・フィエラ(Rho Fiera)」と「フォーリサローネ(Fuori Salone)」と称される市内各所で開催される。

特に、市内では「ミラノデザインウィーク」と呼ばれる、デザインの祭典も行われ、最新のインテリアデザインが一斉に披露され、その年のトレンドを決定づける特別な場所となる。

今年の「ミラノサローネは、4月21日から開催される予定だが、その直前の今、昨年ミラノで行われた、注目のブランドの情報を紹介したい。デザインに興味がある人は、是非チェックしよう!

Flos

「FLOS(フロス)」は、1962年イタリアのメラーノにて創設したコンテンポラリーの本質を貫く、世界トップクラスの照明ブランドだ。デザインの巨匠と呼ばれる、アキッレ・カスティリオーニ&ピエール・ジャコモ・カスティリオーニ(Achille Castiglioni、Pier Giacomo Castiglioni)兄弟が、創業に参画したブランドだ。

当時イタリアで利用可能になったばかりの樹脂素材を、本体構造に吹き付ける製造技術である、「Cocoon(コクーン)」という技術を使いて作られた照明が、ブランドの原点となっている。

最新の革新的な技術を搭載しながらも、使う人の感性を呼び覚ますような美しいデザインのプロダクトを世に生み出し続けており、フィリップ・スタルク(Philippe Starck)、ジャスパー・モリソン(Jasper Morrison)、マイケル・アナスタシアデス(Michael Anastassiades)らをはじめとする、才能豊かなデザイナーたちと、数々の名作照明を発表していることでも有名だ。

2005年からは、一般に多く知られる住宅向けの製品のほかに、商業施設や公共建築向けのアーキテクチャー照明も多く手掛け、近年はアウトドア製品も注目を集めている。

ミラノのフラグシップ・ストアを華々しく飾っていたのは、世界的に有名な建築家・デザイナーであるトビア・スカルパ(Tobia Scarpa)氏が、1963年に発表した作品の復刻版「Seki-Han(セキハン)」。

木製のシェードが用いられ、光源は60年代当時のものからLEDへと変更。安定性や取り扱いのしやすさが向上した。シンプルな外見ながら、デザイナーの技術的思考と、詩的思考が融合された、象徴的なデザインが魅力的。

トビア・スカルパ氏がデザインした名作テーブルランプ「BIAGIO」のレッドカラーが、世界限定150台のみ生産されるスペシャルモデルとして登場! 

2015年に、フィリップ・スタルク(Philippe Starck)氏のデザインによって生まれた「Bon Jour Unplugged(ボンジュール・アンプラグド)」は、テーブルランプの概念を再定義したともいえるプロダクト。デザイナーのビジョンである「ミニマル」で「ラディカル」、「エレガント」な要素を、ポータブルランプで体現している。

昨年10周年を記念し、新エディションとして、新たなカラーを発表! グリーンやピンクなどアースカラーを用いた新作は、どこかあたたかみのある雰囲気で、使う度に安らぎを与えてくれそう。

イギリスを代表するデザインユニット、エドワード・バーバー氏&ジェイ・オズガビー氏(Edward Barber & Jay Osgerby)が、デザインを手がけた、「Bellhop Glass(ベルホップ グラス)」もまた、名作だ。

フロアランプ、ウォールランプ、アウトドアのボラードをすでに発表し、新たな美的・技術的可能性を追求。ラージスケールのガラスランプで、伝説的なデザインを新素材で表現した。

外装には、FlosのR&D部門と共同で開発された、3層の乳白色ガラスディフューザーが採用され、ブライト アルミニウム、チョコ、ホワイトの3色から選べるテーブルバージョンと、3サイズのサスペンションランプが揃う。

Ronan Bouroullec(ロナン・ブルレック)氏がデザインを手がけた「Luce Cilindrica(ルーチェ チェンドリカ)」は、「Luce Orizzontale(ルーチェ オリゾンターレ)」のプロジェクトの技術的要素を取り入れ、ガラスを軽量な耐熱性のガラスに変更し、透明性や軽さ、耐久性を兼ね備えたプロダクトとして進化させた革新的なプロダクト!

「Luce Sferica(ルーチェ スフェリカ)」もまた、工業的な技術と情緒的なデザインが融合したプロダクトだ。吹きガラスの球体が、洗練されたアルミニウムのボディに搭載され、柔らかく雰囲気のある光を拡散。モジュール式で彫刻的なフォルムは、住宅やホテル、文化施設などの空間に映える。

さらに、2010年に設立した2人組みのデザインユニット「Formafantasma(フォルマファンタズマ)」が手がけた、新作照明「SuperWire(スーパーワイヤー)」が、ショールームで披露された!

「Formafantasma」といえば、LEDのフィラメントを使った実験から生まれた、エポックメイキングなモジュラー式のランプコレクション「Wireline」、「Wirering」などが、記憶に新しい。

建築的なイメージを連想させる、六角形をした幾何学的なモジュールが象徴的。アルミニウムが接続された、平面ガラスパネルで構成されている。

ガラスパネルの内部に装着された、フレキシブルなLEDフィラメントを12本使用しており、LEDストリップにより照射される仕組みだ。

外装のネジを外せば、LED光源部分は、使い手が取り外して交換することができる。

緻密な作りで、どこかメカニカルな雰囲気を醸し出しつつも、しっかりと環境に配慮したサステナブルなデザインであることがポイント!

高さ45cmのテーブルランプ「SuperWire T」、高さ75cmを2段接続した三脚式ランプ「SuperWire F」、高さ75cmのモジュールを3本組み合わせ、ダウンライトモジュールを備えた「SuperWire S3」がラインナップ! 日本では、2026年春発売予定だ。

世界中で愛される「Flos」の照明の最大の魅力は、ただデザインが美しいというだけでなく、既存の概念から脱却し、先駆的な技術をプロダクトに必ず反映していることだろう。テクノロジーとデザインが融合しもたらす進化に、これからも注目だ!

B&B Italia」「Maxalto

「B&B Italia」は、起業家ピエロ・アンブロージオ・ブスネリ氏によって、1966年に設立された、世界有数の家具のリーディングカンパニーだ。

「B&B Italia」の製品は、まさに “メイド・イン・イタリー” のデザインを体現しており、イタリアンデザインの歴史や感性、技術、そして創造力への挑戦に大きく寄与している。

アフラ&トビア・スカルパ(Afra &Tobia Scarpa)の理念のもとに生まれ、建築家・デザイナーのアントニオ・チッテリオ(Antonio Citterio)氏が、クリエイティブ・ディレクターを務めるホームコレクション「Maxalto(マクサルト)」も展開。素材とクラフツマンシップが宿る「モダン・ネオクラシック」な家具を、多く発表している。

フラグシップストアで、まず来場者を出迎えてくれたのは、ゆったりとしたエレガントなデザインで、身体をフレキシブルに受け止め、包み込んでくれる新作ソファ「Cocùn(コクーン)」。アントニオ・チッテリオ氏がデザインしたシーティングシステムだ。

長方形モジュール、2種類のカーブを描くドルムーズ、シェーズロング、そしてコーナーユニットという、5つの異なる幾何学的フォルムによって構成され、自由に組み合わせることで、あらゆるシーンに調和しながら、多彩なコンポジションを描き出す。自由に寛ぎ、リラックスしたい時に最適なソファだ。

アントニオ・チッテリオ氏は、この「Cocùn」を通して、使う人の快適性を最も重視したと語る。そのため、制約から解き放たれた、流動的な快適性というコンセプトを探求し、可能性が広がる “群島(アーキペラゴ)” のようなモジュラーソファを生み出したそう。

同じくアントニオ・チッテリオ氏がデザインした、オープンシステム「Flat.C」の新作「Flat.C Frame」も、展示された。

奥行き25cmの棚板を使用し、側面の厚さは最小限に抑えられて、軽やかなデザインに進化。壁側に荷重をかけない仕様となり、オプションで壁面にライトをつけることも可能だ。壁面収納を再構成し、見事にモダンな飾り棚に仕上げた。

パトリシア・ウルキオラ(Patricia Urquiola)氏が、2005年にデザインした象徴的なソファシステム「Tufty-Time(タフティータイム)」。発売から20年を記念して、現代的に進化形した「Tufty-Time 20(タフティータイム 20)」が、華々しく披露された!

弧を描くようなユニークなカーブが目をひくデザインで、モジュール性、包み込むような快適さ、構成の柔軟性といった、ソファの本質的な特徴はそのままに、さらに快適性を高めるよう再設計された。

カーブモジュールの導入により、システムの可能性が広がり、住宅にも商業空間にも理想的な、より流れるようで、集いやすいレイアウトが実現するという。

また、完全に分解可能で、製品のライフサイクルが終了した後も、すべての部品が第二の人生を得られるよう設計されており、循環性にも力を入れている。

ハイライトは、「Maxalto」の創立50周年を記念して製作された、リミテッドエディション「Lilum 50」ソファと「Pathos 50」テーブルの展示!

Maxaltoのブランド名は「最も高貴な」、「至高の」を意味する、ベネチア地方の言葉 “massa alto” に由来するといい、その名の通り、伝統的な職人技と革新的な工業技術の融合により、高品質な仕上げと優雅さを備えた、秀逸なコレクションに仕上がっている。

アントニオ・チッテリオ氏がデザインした名作「Pathos」テーブルは、ブロンズと無垢ウォールナットの組み合わせによる新たな表情で登場!

シリアルナンバーと証明書が付属し、ディテールにもこだわる「Maxalto」のクラフツマンシップと芸術性を窺うことができる。

さらにお披露目された、「Lilum 50」は、彫刻的なフォルムと書の美学が融合した特別仕様のソファ!

オランダ人アーティストのパトリック・ヴァン・リムスダイク(Patrick van Riemsdijk)氏による、唯一無二のアートワークが施されている。

オランダのユトレヒトに生まれ、現在はマヨルカ島パルマに暮らすリムスダイク氏。自然環境にインスピレーションを受けることが多いといい、荒々しさの中にも、洗練さを感じさせるスタイルを確立している。

張地には、アーティスト独自の表現を反映した、特注のファブリックを採用。原初的な筆致のシンプルさと、伝統的な日本の書道を想起させる洗練されたフォルムとを対比させることで、独自の調和を生み出している。

カリグラフィースタイルを取り入れた、特別な「Lilum」のソファは、50台限定発売予定。「Lilum 50」ソファと「Pathos 50」テーブルともに、すでに日本で発売しており、東京・青山の「Maxalto」ショールームにも展示されているので、是非チェックしよう!

Alessi

1921年にイタリア北部オルタ湖畔の小さな工房から始まった、世界的に有名なデザイン・プロダクト・カンパニー「Alessi(アレッシ)」。ステンレス製のキッチンウェアやハウスウェアを中心に、遊び心と機能性を兼ね備えたアイテムを数多く発表している。

今回の展示のテーマは、なんと「最期」。10人の国際的なデザイナーによってデザインされた、新しい葬儀用骨壺のコレクション「ザ・ラスト・ポット(The last pot)」が、ミラノの「ビブリオテカ・オスティナータ」で展示された。インスタレーションを手がけたのは、作品にも参加した、ジュリオ・イアケッティ(Giulio Iacchetti)氏だ。

このアイデアは、最も古く普遍的な物体のひとつである「容器」への考察から生まれたという。「ザ・ラスト・ポット」では、「最期の​​容器」、つまり「骨壷」を、人々の記憶を宿す容器へと広げた。

建築家、デザイナー、思想家として活躍するミケーレ・デ・ルッキ(Michele de lucchi)氏の作品「Presenze in rilievo(重要な存在)」は、アッシュウッドを素材に採用した、ぬくもり溢れるペット用の骨壷だ。

中国の若手プロダクトデザイナーであるマリオ・ツァイ(Mario Tsai)氏が手がけたのが、本の形をした骨壷「Hidden in life」。重厚感のあるアルミニウムでできている。

フランス人デザイナーのフィリップ・スタルク(Philippe Starck)氏は、骨壺を、論理と詩が交錯する、存在の根幹、つまり「核心への回帰」として捉え、人とペットのための作品を発表。

(右から)ジャスミン&フィリップ・スタルク(Jasmine & Philippe Starck)による、クリスタル製の骨壷「The last pot」と、ジャスティス&フィリップ・スタルク(Justice & Philippe Starck)による、ペット用の骨壷とクッション「Bone to bone」。

ウィーンを拠点に活動する、著名なデザイントリオ「EOOS(イーオス)」の「Totem」は、積み重ね可能な金属製の骨壺だ。人間用とペット用(小型)の2サイズがあり、家族や一族、絆を表現する「トーテム」として積み上げて飾ることができる、死生観を見つめ直すデザインだ。

日本のプロダクトデザイナーである深澤直人氏が出かけた、ペット用の骨壷「Last home」。「最期の家」を表現した作品で、セラミックを素材に採用し、シンプルながらあたたかみのあるデザインに仕上げた。

ロンドン出身の建築家であるディビッド・チッパーフィールド(Devid Chipperfield)氏がデザインした「Tacet」。大切な思い出を大切に保管できる、機能的で長く愛用できる器として設計されている。個人的な思い出を、さりげなく彩ってくれる。

ポーランド系アメリカ人の建築家ダニエル・リベスキンド(Daniele Libeskind)氏が手がけた「Khora」は、強化ガラスでできた壁面がオリジナルな印象を醸し出す、独創的な骨壷を発表した。

マイケル・アナスタシアデス(Michael Anastassiades)氏による、「Swan songs」。文化や文明の宇宙観において、孵化とともに宇宙へと昇っていく「卵」をイメージしたという、スピリチュアルなテーマを表現した作品。

ミラノ拠的に活動する著名なインダストリアルデザイナー ジュリオ・イアケッティ(Giulio Iacchetti)氏は、大理石を用いて作られた有機的な形の2体の骨壷「Teardrop」を考案。上部に線香を指すことができる仕組みで、小さな骨壷はペット用として使用可能。

デジタル彫刻とオブジェクトデザインを幅広く手掛ける、アーティスト兼デザイナーであるオードリー・ラージ(Audrey Large)氏は、大理石でできた彫刻作品として骨壷「A silver cord」を展示した。

世界中から選りすぐりのデザイナーが参加し、それぞれ独自の解釈で、「死生観」という難しいコンセプトを表現し、見事に美学と象徴性が結集した作品を生み出した。

この「The last pot」は、アルベルト・アレッシ氏とジュリオ・イアケッティ氏がタッグを組み、構想された新ブランド「イル・トルニトーレ・マット(il tornitore matto)」のインスタレーションだ。

デザイナーと起業家が、創造プロセスを自由に設定できる新ブランドであり、長年アレッシ氏が培ってきた数々のデザインを探求する、実験的な企画でもある。

「何世紀にもわたり、デザインは日常生活に寄り添う機能的で美しい物体の創造に焦点を当ててきました。そして私は、ライフスタイルに欠かすことができない“容器”を、これまで多く手がけてきました。『The last pot』は、人生の最期を飾る道具を考案したのです。日本にも、今後紹介していきたいと考えます」と語ってくれた、アルベルト・アレッシ(Alberto Alessi)氏。

ALESSI Store Tokyo(アレッシストア東京)

先日東京にオープンしたばかりの「アレッシ」の路面店には、人々のライフスタイルを反映した、美しく実用的なプロダクトが多く揃うので、是非訪れてほしい。

イタリアで出会った先進的なプロダクトは、ただ洗練されているだけでなく、多くの人が使うことができる、センスに満ちたインクルーシブルなデザインのものが多かった。こうしたミラノ発のデザインを、住空間に取り入れることができれば、ライフスタイルがこれまで以上に楽しく豊かになるだろう。気になるアイテムを是非チェックして、ワンランク上の生活を楽しもう!

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