Decipher the watch #11

ミリタリーウオッチ(軍用時計)は、過酷な環境での使用を前提としたハードな耐久性と堅牢性、瞬時に時刻を確認できる高い視認性を求められ、開発され続けている。つまり、ミリタリーウオッチを追うことは、腕時計の進化の一端を見ることでもある。世界的に有名な高級メーカーがそれぞれ独特の機能を持つ時計を生産してきた。今回は特に水中作戦に特化した、無骨で巨大なデザインが特徴のイタリアのミリタリーウオッチ、中でもパネライによって作られた腕時計をクローズアップ。
写真/WPPアーカイブ 構成/ワールドムック編集部

パネライは19世紀後半にイタリア・フィレンツェで創業した小さな時計店に始まる。やがて時計の修理や改造、さらには精密機器の製造を行なうようになり、オフィチーネ・パネライ(パネライ製作所)と名乗るようになった。第一次世界大戦の頃にはイタリア海軍に銃の照準器や魚雷の信管用時限装置など、さまざまな精密機器を納入していたが、イタリア海軍潜水部隊のために潜水用時計の開発に着手したのは1930年代半ばのこと。1938年にイタリア海軍に納入された最初の時計は、直径47㎜という大型のケースで、ケースとムーブメントはパネライと関係が深かったロレックスが特別に製作したものだった。この時計は文字盤の下に蛍光塗料 “ラジオミール・チューブ” を置き、ラジオミールと名づけられた。第二次世界大戦中には、パネライを象徴するレバーロック式のリュウズが誕生した。1950年代にはエジプト海軍にも時計を納入している。

第二次世界大戦中にイタリア海軍が採用した、腕に装着するブルドン式水深計(水圧の変化を感知して深さを計測する方式)で水深30mまで計測が可能だ。ケースはスチール製でドーム状のプレキシガラスに覆われ、腕に装着するためのストラップがついている。

パネライは時計だけでなく多くの軍用機器を製造したが、これは第二次世界大戦中のイタリア海軍特殊工作隊員用の水中コンパス。ケースは耐磁構造をもつスチール製で、プレキシガラスの塊をくりぬいた直径59㎜のドーム状のカバーガラスが付き、中には特殊な液体が入っている。

第二次世界大戦後に作られたルミノール・パネライのプロトタイプで、通常のパネライとの大きなちがいは5分間隔のマーカーがあるベゼルが付いている点だ。



ルミノール・パネライといえばレバー・ロック式リュウズが特徴だが、これはパネライが1955年に特許を取得している。実際には第二次世界大戦中に開発されていた。200m防水という当時としては驚異的な防水性を実現した。

1950年代半ばにエジプト海軍の依頼で製造されたラジオミール・パネライのプロトタイプ。従来のラジオミールよりも大型のケースで、5分間隔のマーカーを付けた回転ベゼルが特徴だ。

第二次世界大戦後に作られたイタリア海軍用のルミノール・パネライ。文字盤に記されたマリナ・ミリターレはイタリア海軍を意味する。ルミノールは1949年1月にパネライが特許を取得した、トリチウムを原料とする化合物の蛍光塗料を示す。


































