トムキャット、ふたたび空へ?

5月上旬にアメリカから聞こえてきた衝撃的なニュースが、ヒコーキマニアの間で話題になっています。

それは米政府によって保管状態にあるグラマン(現ノースロップ・グラマン)F-14トムキャットが、アラバマ州ハンツビルにあるU.S. Space & Rocket Center(米国宇宙ロケットセンター)に移管される案件が、超党派の議員団によって米上院に提出された上院法案4161号(通称「マーベリック法」)により4月28日に全会一致で可決され、現在は下院での審議を待っているというものです。この譲渡は条件付き贈与証書を通じて行なわれ、連邦政府の費用負担は一切発生しないため、輸送、修復、維持管理、およびFAA(米連邦航空局)と海軍のすべての要件への準拠に関する責任は博物館が負うとされている一方で、資格を有する非営利団体との協定により、航空機を修復し、一般公開、航空ショー、記念行事のために「運用する」ことも認めているというのです。

つまりファンがいろめきたっている理由は、トムキャットがふたたび空を飛ぶことになるかもしれないからなのです。

2006年、USSセオドア・ルーズベルト艦上での最後のクルーズ中のVF-213のF-14D

老朽化と維持管理にかかる経費などの問題からF-14が米海軍から完全退役したのは、いまから20年前の2006年。除籍後の多くの機体が廃棄処分されましたが、それは米軍での運用終了以降唯一のF-14を飛ばす国となったのがイランだったからです。同国への部品流出を防ぐために、米国各地の博物館に譲渡された機体も、すべて厳格な不活性化が施されたうえで移譲されています。

そうした理由から、「軍用機の墓場」ともいわれる有名なアリゾナ州ツーソンの退役機の保管施設、デイビス・モンサンAFB 309AMARG(第309航空宇宙維持再生群)にも、ほんのわずかな機体しか残されていません。しかし今回の法案には309AMARGで保管されているうちの3機のBu.No.が明示されており、それがF-14D 2機(164341、164602)、とF-14A(159437)だというのです。

デイビス・モンサンAFB、309AMARGにモスボールされた機体の中に、数機だけ残っているF-14

もしフライアブルな状況へのレストアが認められることになるのだとすれば、今回の「エピックフューリー」作戦でほぼイラン空軍のF-14Aが壊滅状態となったことで、部品の流出に配慮することがなくなったというのが理由のひとつになるかもしれません。また深刻な軍のパイロットやエンジニア不足のなか、映画『トップガン マーヴェリック』の大ヒットの影響もあり、歴史遺産の保存とSTEM(科学・技術・工学・数学)教育への活用、そしてリクルーティングにも寄与すると考えられたとも想像できます。

なお、今回リストアップされている機体のうちF-14D 2機は、最後まで同機を運用したVF-213の所属機、そしてF-14Aは最後の所属は1989年1月4日に発生した第2次シドラ湾事件の際にUSSジョン F.ケネディ(CV-67)に搭載されていた、MiG-23を撃墜したVF-32 の所属機です。ただ、今回フライアブルにレストアされるとしても3機すべてが飛行状態となるわけではなく、おそらく1機もしくは2機のみで、残りは部品取りに使われることになりそうです。

F-14は整備性もよくないため、飛行可能状態に戻して飛ばし続けるためにはかなりの労力が必要となりそうだ

あまりに突然聞こえてきた壮大すぎるニュースで、信憑性は計り知れませんが、楽しみに今後の動向を見守りたいと思います。

そして、今週5月13日(水)は、アメリカでは「トップガンの日」だったそうです。これはオリジナルの『トップガン』がこの日にロードショー公開されたことに由来するもので、今年は公開40周年にあたります。そこで日米の一部の映画館では、40周年を記念して『トップガン』『トップガン マーヴェリック』の9日間の限定上映が5月13日から始まりました。来場者には枚数限定でポストカードがプレゼントされるほか、MaverickとGooseのヘルメットをかたどったケースに入ったポップコーンの販売もあるとか。

『トップガン』40周年記念上映のアイキャッチ

トムキャットファン、米海軍ファン、Maverick(トム・クルーズ)ファンは、時間をなんとか工面して、ぜひ映画館に行ってください! 公開館など、上映情報はこちらからチェック!

これは欲しい…、Maverickのヘルメットを模したポップコーンケース

神野幸久(Yukihisa Jinno)
  • 1967年千葉県生まれ。1991年4月に(株)文林堂入社。『航空ファン』『世界の傑作機』『航空ファン・イラストレイテッド』など航空雑誌の編集に携わり、2022年10月から『航空ファン』編集長。
  • https://note.com/bunrindo_kokufan

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