織本知之のデジカメ紳士録
このカメラの使い手に俺は敬語で接します
【ペンタックス/K-3 Mark Ⅲ Monochrome】


モノ・マガジン誌の長期連載「織本知之の電子写真機恋愛」がいよいよモノWEBに登場! 最新機種から懐かしのレトロ機種まで、掲載当時の熱量真空パックでお届け。誰もが立ち寄れる「デジタル一眼レフ、ミラーレス一眼情報の道の駅」だぞ!

写真と文/織本知之

PENTAX K-3 Mark Ⅲ Monochrome

ペンタックス/K-3 Mark Ⅲ Monochrome

こんなトコロに戀をする!

一眼レフらしさに戀しちゃう

どうですかこの武者のような風格。とてつもなく頑丈なボディ。一眼レフらしく盛り上がったペンタ部分。必要にして充分な数の操作ボタン類。そしていまや一眼レフのミラーが作動するシャッター音と感触がこんなに貴重なモノになるなんて。大切に守り受け継ぎたい文化であります。

あえてココだけにさりげなく

K-3 Mark Ⅲ MonochromeとスタンダードなK-3 Mark Ⅲとの違いは低視認塗装されたPENTAXロゴと肩のモデル名。そして背面モニターの左上外側に印字された控えめな「Monochrome」のみ。欲しかったらあるときにどうぞ迷わず!

この高感度に好感度

スタンダードなカラー撮影K-3 Mark Ⅲと最高感度ISO1600000(ISOヒャクロクジュウマンです。念のため)は一緒ながら、高感度特性としてはモノクローム専用機の方が耐性高く感じてどこまでも滑らか画質。高感度耐性が高いカメラだからISO6400程度ではナチュラルにキレイ。そのためかデジタルフィルターに「粒状感モノクローム」搭載しております。

こんな寫眞に戀をする

HD PENTAX-D FA MACRO 100㎜F2.8ED AW

さあ見せてもらおうかと、じっくり腰をすえて隅から隅まで眺めてみたくなりますモノクローム写真。もしかしたらスナップよりも記録的な写真にこそ白黒写真って向いているのかもしれません。マクロレンズってディテールアップの接写も良いモノですが、中望遠レンズ的な活用でコントラストのしっかりしたシャープな描写力を発揮させるのもアリかと思います。

【撮影DATA】
シャッター速度:1/500/絞り:f6.3/撮影感度:ISO3200/カメラ内RAW現像:ハード(パラメータ調整)

HD PENTAX-DA15㎜F4ED AL Limited

普段は空に浮かぶ雲なんぞに気を向け無いくせに、モノクロームが描く雲と空のコントラストを鑑賞した途端、地球に生きることの素晴らしさに気づいちゃったりするのでキケンです、このカメラとHD PENTAX-DA 15㎜F4ED AL Limited。35ミリ判換算で焦点距離23㎜相当の超広角レンズでコンパクトなサイズと質量189gという非常に優れた携帯性を実現。愛する地球とペンタックスに感謝。

K-3 Mark Ⅲ Monochromeを使ってみた!

今回はとあるジャンルの層にはドンピシャストライクなデジタルカメラのご紹介です。

「ネオパンSS」「トライXで万全」「印画紙は4号焼き」「逆光は勝利!」これらの白黒ワードに心躍る元写真部スチューデント諸君お待ちどうさまでした。

ほかにも風景写真の大家「アンセル・アダムス」やスナップの名手「カルティエ・ブレッソン」といった写真家の作品に心ゆさぶられた皆さま、もしくは「シロクロ写真ってエモーい!」というヤング達にもオススメのモノクローム専用機K-3 Mark Ⅲ Monochromeの登場です!

「あ、でもカラー映像が撮れるデジカメってピクチャーモードとかで白黒とかセピアになるじゃないですか、だからコレもモード切り替えでカラー撮れんじゃね?」と勘違いしませんように、絶対に撮れません。あしからず。一般車でもヤル気と金次第でサーキットを走れますがF1カーはレース場からは出ることはありませんね。つまりはそういうことです。

さあ光と影だけの世界に飛び込む覚悟は決まりましたか?

モノクローム写真とは色の情報がないために、陰影によって被写体の造形や質感を描き出します。こちらのK-3 Mark Ⅲ Monochromeにはモノクローム専用設計のイメージセンサーが搭載されており、カラーセンサーによる一度生成された画像から色を抜いてモノクロ写真化にするのとは一味違います。イメージセンサーをモノクローム専用設計とすることで、1画素ごとに輝度情報を取得でき、レンズを通して入ってきた光の情報をダイレクトに画像にすることができるのです。これが一般的なカラー用イメージセンサーでは、1画素につきひとつの色情報しか得られませんので1画素ごとに赤、緑、青のいずれかのカラーフィルターを通した光を受けねばなりません。よってモノクロ写真を撮影する場合、補間処理をしたカラーの画像をもとにモノクロ変換するのです。

ここにどえらい無駄と手間のロスが発生するのがうっすらと感じることができます。それがモノクローム専用センサーでは、補間処理を必要とせず1画素が取得した輝度情報そのままに画像化できるので、繊細な解像力に階調の再現に優れたモノクローム表現が可能になっているのです。わたしもいつになく繊細な解説をしちゃってますが、それほど繊細なのです白黒写真。これを踏まえると約2573万画素モノクローム専用CMOSイメージセンサーに並々ならぬこだわりを感じとれるかと存じます。

このK-3 Mark Ⅲ Monochromeのハード部分はだいたいK-3 Mark Ⅲと同じと思ってください。約12コマ/秒の連写もAF部分も同じです。バッテリーライフも約800枚と一緒。質量約820gのボディももの凄くガッチリして一緒です。

この外装での違いはロゴ部分やダイヤル文字が低視認性塗装され、「PENTAX」の文字がなんだか霞みがかかったように薄いグレーで……クール! カッコイイですねこれ。そして背面モニターの外側に小さく「Monochrome」のみの控えめな主張。撮影時のカスタムイメージはハード、ソフト、スタンダードの三種類。それぞれ細かくパラメータ調整ができるのでオススメはRAWも同時に記録しておくこと。撮影後のカメラ内で行える現像作業が楽しいことといったら!

そしてなにより一眼レフのメカニカルなシャッター音がカメラマンのやる気と撮る気を奮い立たせます。カメラはやはりこうでなくっちゃ!

このK-3 Mark Ⅲ Monochromeに組み合わせるレンズにもこだわりたいですね。

HD PENTAX-DA 15㎜F4ED AL Limitedは新世代のマルチコーティング「HD コーティング」で悪条件下のフレアーやゴーストの発生を低減し、クリアでコントラストの高い描写を実現した35ミリ判換算23㎜の超広角リミテッドレンズ。レンズ本体、フードはアルミ削り出しとして高級感を追求しており掌で愛でていても楽しいレンズです。最短撮影距離は0.18mの寄れる広角レンズですのでこの1本で様々な被写体に対応できます。

2本目は少し望遠に強いと広角レンズとの使い分けが楽しいHD PENTAX-D FA MACRO 100㎜F2.8ED AW。35ミリ判換算153㎜のワーキングディスタンスたっぷりの使い勝手のよいマクロレンズとして使え、距離がある場合には望遠レンズとしてもOKです。マクロレンズらしいパキッとした描写力はモノクロームに相性抜群。ペンタックスらしいレンズ本体の高い質感もお楽しみください。

便利なこの現代で、あえてカラー機能を削ぎ落としたK-3 Mark Ⅲ Monochrome。いらっしゃいませ、光と影のモノクロームの世界へ!

※本企画の情報、コメントはすべて、機種発売当時のものです。ご了解ください。

  • フォトグラファー。1972年千葉県出身。1999年平凡社動物写真アニマ賞の最年少にして最後の受賞者、撮影テーマは「ニホンザル」。以降、カメラ誌、情報誌、タウン誌、ミリタリー誌など幅広く撮影・執筆。私鉄協会誌「みんてつ」表紙などを長年担当。monoマガジンではこれまで150機種300本を超えるデジタルカメラ、交換レンズをレポート中。甘党下戸。You Tubeの「サバ三ちゃんねる」@sabasan 鋭意更新中!

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