北海道の防衛警備を担当するのが北部方面隊です。同方面隊には、戦術単位である師団及び旅団を4個配置しています。それが第2師団(旭川)、第7師団(東千歳)、第5旅団(帯広)、第11旅団(真駒内)です。
2023年3月、第5旅団が改編されました。目指したのは機動化です。
現在陸上自衛隊では、師団及び旅団の大改編が断行中です。目標は、すべての師団及び旅団を機動化することです。
もともと、有事の際に、必要とされる場所へと展開して戦う機動師団・旅団と、受け持ちの防衛警備区をしっかりと守る地域配備師団の2系統に分けていく計画でしたが、“安保3文書”こと、「安全保障関連3文書」において、沖縄を守る第15旅団をのぞき、残り14個の師団及び旅団をすべて機動化する方針に転換しました。
しかしながら、北部方面隊においては、機動化は既定路線であり、安保3文書前から粛々と改編が進められていました。
2019年に第11旅団が機動旅団へ、2022年に第2師団が機動師団へと改編されました。第5旅団についてももともと機動化改編の話があったので、厳密に言うと安保3文書とは関係ありません。
関係が出てくるとすれば、日本唯一の機甲師団である第7師団がどのような扱いとなるのか興味は尽きないところです。
今回の改編を行った第5旅団は道東の防衛警備を担当しております。それは変わることがありませんが、今後は、日本中どこへでも展開できる部隊となります。
その機動展開の中核となるのが、この改編において新編された第6即応機動連隊です。
この部隊はイチから作られたわけではなく、それまであった第6普通科連隊を母体としています。連隊長もスライドしております。
全国に続々と誕生している即応機動連隊の象徴となる装備が、16式機動戦闘車です。即応機動連隊内に内包される機動戦闘車隊が運用します。第6即応機動連隊にも同様に16式機動戦闘車が配備されました。
しかし、北部方面隊の機動師団及び旅団は、他の方面隊の機動化改編と少々異なる点があります。
即応機動連隊が新編された師団及び旅団では、戦車部隊が廃止されています。戦車の代わりとなるのが、16式機動戦闘車であり、これまであった戦車部隊の代わりとなるのが機動戦闘車隊だからです。加えて、特科(大砲)部隊も廃止されます。
しかし、北海道では、戦車部隊や野砲部隊は、縮小こそされますが残します。なぜならば、北海道へと侵攻を企てる仮想敵たるロシアは、戦車を中心とした機甲戦闘大隊編成で戦うからです。戦車には戦車、そして野戦において特科火砲は必要不可欠なのです。
すでに機動化された第2師団や第11旅団がそうであったように、第5旅団も同じような道を辿りました。具体的に見ていきましょう。
第5特科隊の主力装備は99式自走155㎜りゅう弾砲
まず、第5旅団には、90式戦車を配備していた第5戦車大隊がありました。3個中隊編成でしたが、この度の改編で1個中隊を廃止し2個中隊に。この縮小に伴い、「大隊」よりも小さい「隊」となったので、部隊名を第5戦車隊と改めました。
第6即応機動連隊は、3個普通科中隊に加え、主として元第5戦車隊の隊員で構成される機動戦闘車中隊、主として第5特科隊の隊員で構成される火力支援中隊で編成されます。
ここで注目して欲しいのが機動戦闘車「中隊」となっている点です。他の機動師団及び旅団の即応機動連隊では、機動戦闘車「隊」となっていますが、「中隊」は、これよりも小さい部隊単位となります。その理由は、北部方面隊の師団及び旅団では、戦車部隊を残したので、有事の際は、これら戦車を即応機動連隊へと組み込む考えがあるからです。
なお、この度の改編で、新たに第5情報隊が新編されました。この部隊はドローンを扱い情報収集を行う部隊です。
生まれ変わった第5旅団には要注目です。
第5戦車大隊は、第3中隊を廃止し、縮小されるも第5戦車隊として残った。主力装備は90式戦車