今が旬なのに全然出会えない「水がに」って?

2022.03.10

「水がに」はかにの種類のことではありません。

日本全国、その土地ごとに様々なグルメやソウルフードがあります。その地で育った人には当たり前のものでも、ほかの地域では全く知られていないということも少なくありません。今回は、2024年春に北陸新幹線延伸を控える福井県で今、まさに最盛期を迎えている「水がに」をご紹介します。

ズワイガニの王様「越前がに」はなぜうまい?

表面の黒い粒が多いほうが美味しいと言われています。

福井県が誇るグルメといえば越前がに。名前は広く知られていますが、高級すぎて実は食べたことがないという人もいるのではないでしょうか。それもそのはず、かにの中でも高級で、2021年の初競りでは1杯80万円で競り落とされたものもあったとか。実際、福井でも1杯数万円で販売されているものも多く、お店で料理として出されるとさら値段も上がるため、なかなか食べる機会がないかもしれません。

このタグが重要。ブランドの証です。

まずは、越前がにについて、簡単に紹介します。越前がには全国のズワイガニの中でも王様的存在。福井県の越前港、三国港、敦賀港、小浜港で水揚げされた雄のズワイガニを指します。越前かにのハサミ部分に取り付けられた黄色いタグはブランドの証です。

ズワイガニは福井では「越前がに」、山陰では「松葉ガニ」など、産地で名前が変わります。

水揚げされるのは11月6日から翌年の3月20日まで。そう、もうすぐ水揚げが終わってしまうので、この冬の越前がにを食べるならそろそろ最後のチャンスというタイミングで、この時期、福井では多くの飲食店で越前がにが食べられます。が、しかし。多少の差はあれど、総じて高級食材であることがわかるお値段。食堂や居酒屋のようなお店でも越前がには数万円でメニュー上に鎮座しています。

身がぎっしりつまっています。

そうはいっても、東京で食べるとさらに高価格になってしまう高級食材。できれば、福井まで出向いて食べるのがいいですね。もちろん、福井からお取り寄せするのも一案です。越前がにが高級とされるのは、やはり味のよさ。暖流と寒流がぶつかる越前沖は、かにのエサとなるプランクトンや小魚、甘えびなどが豊富。また冬の海水の温度なども美味しいかにを育てるのに最適なのだそう。

見た目も美しい越前がにの刺身。

そんなわけで、とにかく美味しいかにが獲れる福井は、普段なら全国からこの味を求めて観光客が訪れます。ホテルや旅館でも越前がにを提供するところも多く、焼き、茹で、刺身、鍋など、様々な料理で越前がにの魅力を堪能させてくれます。

「あらき」では、目の前で調理してくれます。

今回取材した旅館「越前厨温泉 あらき」は、越前海岸沿いにある“海と夕日と蟹の旅館”。昨年11月にリニューアルし、日本海の絶海を望めるゆったりとした広い全6室の客室と滞在中いつでも入れる温泉が人気です。浴場からも日本海が見られ、露天風呂では波の音を聞きながら温泉が楽しめる非日常を体験できます。宿泊プランなどにもよりますが、上質な温泉と一緒にいただけるは越前がに。釜茹でした越前がにをはじめ、焼き、刺し、鍋といった、かにの美味しさをあらゆる角度から提供してくれます。

かにの身とかに味噌を和えて、至高の逸品に。

越前がには、長い脚にしっとりとして甘みのある身がぎっしりと詰まっていて、一度食べたら本当に虜にされてしまう美味しさ。また、濃厚な旨みのかに味噌も絶品で、味噌とかにの身を混ぜて食べたり、しゃぶしゃぶや刺しを味噌につけて食べたりすると、この上ない贅沢感のある美味しさを体験できます。

鍋は越前がにの旨みが染み出て、スープも絶品。

何度もくどいですが、福井で食べても高級食材である越前がに。東京で同じものを食べると、もうひと財産投げ売る覚悟が必要(?)というぐらい、さらに高価なものになってしまいます。一度は存分に越前がにを味わいたいなら、やはり福井に行くことをおすすめします。「越前厨温泉 あらき」をはじめ、越前がに付きのプランがある宿泊施設も多いので、ゆっくり楽しむがおすすめです。

福井には越前がにを手軽に食べる裏ワザがある!?

「うおいち」ではこの時期水がにも販売(値段は変動します)。

さて、ここからが本題。高級食材の越前がにですが、実は福井にはリーズナブルに食べる方法があるんです。そう、それが「水がに」です。「水がに」とは、かにの種類ではなく、脱皮して間もない、甲羅がまだ柔らかいかにのこと。かには脱皮を繰り返して成長するのですが、「水がに」は脱皮したてということもあり、身入りは8割程度。そのため、身がズボッと簡単に抜けるので、地元では「ズボガニ」とも呼ばれています。実際に店舗でも「ズボガニ」と表記されている場合もあります。

確かに身の入りは8割程度。なので身離れがよく食べやすい。

この「水がに」。身入りは8割程度ですが、そこは天下の越前がに。身の美味しさはやはり格別。それなのに、価格は越前がにに比べてぐっと下がって、かなりリーズナブルに販売されています。そう、これが越前がにを手軽に食べる方法です。

ただ、「水がに」は漁が解禁される期間が短く、今年は2月20日(日)から3月20日(日)まで。たった1か月だけの限定グルメなのです。

「道の駅えちぜん」にある「うおいち」。

今回、訪れた道の駅えちぜんにある「うおいち」では、越前がにや紅ズワイガニなどを販売していますが、この時期限定の「水がに」も健在。お店の前でゆでて、ゆでたてを箱詰めして販売しています。

店頭でかにを処理してゆでています。

生の「水がに」を処理してゆでる作業を見ていると、驚くことが。身を半分に切って味噌は洗ってしまっているんです。越前がには味噌が美味しいといったのに、なぜ「水がに」は味噌を食べないのか。まだ成長しきっていないため、味噌も少なく食べるに値しないというのが常識のよう。なので、足と肩の身だけをゆでて販売していました。これも現地に行かないとわからないことですね。

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  • 好奇心旺で、食べることが大好き。新商品や限定品にめっぽう弱く、ジャンルを問わず常に情報を集めてはトライ。地方の食材や調味料も発掘も楽しんでいます。また、北欧、特にフィンランドが大好きで、現地の蚤の市などではヴィンテージハントにハマっています。サウナも好きで週1~2回のサ活中で、フィンランドでは念願のサウナから湖へのダイブを体験。日々、美味しいものを求めながら、北欧雑貨とムーミンに囲まれて暮らしています。