ノイアーはEV?
W杯では2014年のブラジル大会で4度目の優勝を経験しているドイツ。今大会に電撃復帰したマヌエル・ノイアーはゴール前での反応速度は最も優れていると評判のゴールキーパー。クルマでいうところの間髪入れずに反応する電動車みたいなモノかもしれない、きっと。
そんなドイツの老舗メーカー、アウディの電気自動車シリーズ、e-tron(以下eトロン)は現在6モデルがラインナップ。今回はS6 Sprtsback(以下スポーツバック)をご紹介。A6のeトロンは2024年に発表、昨年日本導入を果たした。ボディは4ドアクーペ風のサルーン「スポーツバック」とステーションワゴンの「アバント」の2つ。その両モデルに「S」が付くモデルがラインナップする。モデル名で「S」が付くのはスポーティなベクトルに振ったモデルであり、A6スポーツバックはRWDだが、「S」のつくモデルはブランドの代名詞的DNAでもあるクワトロ、つまりAWDを採用。そしてEVで「S」を名乗ることからブランドも相当に気合の入った1台なはず。
半目開きの仏像のような、目の細い黒木メイサのようなヘッドライト、フロントからリアまでの流麗なライン、ワイド&ローのシルエットなどモダンな雰囲気がエクステリアの特長。シングルフレームグリルや大型のエアインテークなどSモデル専用だ。そのプラットフォームはアウディとポルシェ共同開発のEV用で、ポルシェ側はマカン・エレクトリックになる。


耳元で囁く高級オーディオ
一方、2枚の大きなディスプレイ、上下フラット形状のステアリングなどインテリアは最近のアウディではすっかりお馴染みになったスーパー電脳空間。ライト系の操作スイッチは今やドア側のアームレスト前方にお引越しされており、よりディスプレイ周りをすっきりと見せる。
コクピットのディスプレイは11.9インチ。試乗車には助手席ディスプレイのMMIパノラマディスプレイがオプションされていた。この助手席側ディスプレイのカシコイところは停車中は運転席からでも見られるが、走り出すと運転席からは黒く見える。もちろん助手席からは普通に見えるコト。


ファインナッパレザーのSスポーツシートはスポーティな形状ながらヒーターはもちろんベンチレーションやマッサージ機能といった惚けるような快適装備もあるし、後席は前述の通りEV専用のプラットフォームでセンタートンネルがなく足元スペースは広々。そしてボディシルエットから想像するよりも後席の頭上空間は狭さを感じない。もちろんオプションの透明度を変更できるスマートパノラマガラスルーフの恩恵もあるとは思うけど。試乗車の空調は前席左右、後席と3ゾーンで調整が可能。コイツは豪華なファミリーカーだけでなく役員車にも使えそうだ。

EVのお楽しみでもある優れた静粛性からのオーディオシステムはデンマークの高級オーディオブランド、バング&オルフセンの830ワット、20チャンネルアンプのモノが搭載されていた。スピーカーの数は前席左右のヘッドレスト内蔵分も含めて合計20個という大盤振る舞い。そしてこのヘッドレストスピーカーは交通情報まで高級につぶやいてくれる。
また車内の音響も唸るモノがあり、あらゆる音源での3Dサウンドは素晴らしかった。EVということも加味しても自分の趣味の音響ルームにも使えそうだ。走らなくても自分の趣味部屋としての。そして収納を考えてもリアの荷室は十分以上だし、フロントフード下にはわずかながらも収納スペースが用意される。


意外に少食な実用車
スポーツモデルながら標準装備のSアダプティブエアサスペンションは段差などで、ドン! というようなことはないけれども街中では硬めな印象。高速に入ると少ししなやか傾向な乗り味。乗り心地は決して悪くはないけれど21インチのホイールサイズらしい、といえばそう感じる。
確かに20インチでオプションの上記のアダプティブエアサスペンション装着のA6よりは固い印象といえばそんな気がする。車重のかさばるEVは硬めのセッティングが当たり前だがS6のそれはサスがいい仕事をしている雰囲気だ。なおこのエアサスは4輪すべての減衰特性を無段階に調整する電子制御のエアサスで、ドライブモードによっては一定の速度以上になると車高が下がる。
パワーユニットは車両前後に2基のモーターを搭載し、最大トルクはフロント275Nm、リア580Nm。通常のシステム最高出力は370kW、ローンチコントロールを起動した時には405kWの最高出力を発揮する。ちなみに405kWは約550PSだ。そしていわゆる速さのモノサシとされる0-100kmkm/hは3.9秒。
ドライブモードは性能をフルに発揮できるダイナミックプラスから航続距離に重点を置いたエフィシェンシープラスまで数種類用意される。いわゆるエコモードでドイツ車っぽいのは航続距離を最大にするために、座っていないシートのエアコンをオフにする徹底っぷり。カシコイ!
加速性とレスポンスに優れる後輪のトルクを重視した設定で、運転の楽しさもS6スポーツバックeトロンの魅力なのだが、筆者が体験してきた範囲では確かに楽しいけれど、意外に電費がいい、というモノ。今回は高速4割、流れの速い街中2割、交通量の多い街中3割、山道1割だったが、メータ読みの電費は街中では5.8km/kWhが普通に記録できた。最高出力を考えるとかなり電費はいいと思う。さすがに120km/h巡航の高速では4km代に突入してしまうが、それでも相当に電費がいいと思う。高速を降りた時の電費は4.6km/kWhだった。高速ではエフィシェンシーモードを使うと回生ブレーキゼロのコースティング走行も可能。内燃機関車でいうところのエンジンブレーキをオフにできるようなモノだ。その昔、DKW(アウディの前身)のゾンダークラッセにあったエンジンブレーキを解除できるレバーと同じ発想だと思う。
山道ではもう少し電費が下がるが、それでも想像より良かった。EVらしく低重心のコーナリングは安定感抜群だったし、クワトロは雪道など路面状況の良くない場面でも安定して走行できるはず。
航続距離を伸ばすレンジプラスパッケージは最大航続距離846kmに。この距離は東京ー秋田を往復したり、広島まで行けたりしてしまうくらいの距離を一充電で走破できてしまうEVの長距離選手的オプションも用意されている。自宅に充電環境があれば、よほどの長距離やサーキットアタックでもしない限りはバッテリー残量にハラハラすることなく精神衛生にもいい。
余談だが、航続距離を伸ばすレンジプラスパッケージはバッテリー容量が大きくなったりモーターを小さくしたりすることはない。ドアミラーをより小型にするバーチャルエクステリアミラーなど走行時の空気抵抗を減らすだけなのだ。ベースボディの空力がいかに優れているかということ。その空気抵抗係数は0.21。そういえばアウディ100からA6に切り替わって2代目のC5系は1997年当時、セダンとしては驚異的な空気抵抗係数、0.28を実現した。アウディは当時から空気の流れを市販車でも大きく気にしていたメーカーでもある。

充電は普通、急速両方に対応。急速充電は135kWにも対応し、ブランドの充電ネットワークPCAならば待ち時間は最小限だ。なお公表されている充電時間は10%から80%まで約35分。実際はおそらく10%まで減らす前に充電すると思うので、20分もあれば十分な感覚。実際にPCAの90kW規格の充電器に繋いだところ、57%から80%までは20分かからず、「もう?」的な印象だった。
S6スポーツバックeトロンはハイパフォーマンスながらも電費よし、実用性よしと頼れる二刀流だった。

S6 Sportback e-tron
| 価格 | 1451万円から |
| 全長 × 全幅 × 全高 | 4930 × 1925 × 1465(mm) |
| システム最高出力 | 405kW |
| 最大航続距離 | 730km |
アウディ
S6 Sportback e-tron
問 アウディジャパン 0120-598106


































