レトロな最新モデル!? メルセデス・AMG G63に乗ってみた!

変わったケド変わらない、がポリシー

世界的に品薄な商品。Nintendoのスイッチ2、カニカマの原料になるスケトウダラ、抹茶にカカオ、コーヒー。そしてGクラス。Gクラスとはドイツの雄、メルセデス・ベンツがリリースするSUVモデルである。日本での主な生息域は深夜のギロッポン(編集部注:六本木)だったり、高級リゾートだったりとネオンキラキラや華やかな場所が多い。なぜそんなにGクラスがモテるのか。試乗会にお邪魔してその秘密を探ってみた。

目の前にあるのは現行モデル最強の誉高い、G63のローンチエディション(以下ゲレンデ)。G63といえばAMGですよ、A・M・G! しかも試乗車はオプションのAMGカーボンファイバーエクステリアパッケージが装着されている見た目もメロい(メロメロになるほど魅力的)一台。気分は芸能人かプロスポーツ選手でゲレンデの運転席に陣取ったのだった。

走り出す前にGクラスについて少々。タフさがそのまま服を着たようなイデタチのクルマは1979年にデビュー。最初のフルモデルチェンジは1989年。そして2018年に大幅な改良が施された。これは従来モデルとの共通部品はわずか4点といわれるフルモデルチェンジ並。それでも車両の型式は2代目のW463型を継承するのでマイナーチェンジというが、3代目Gクラスと言った方がしっくりくるような気がする。

なぜ、かようにモデルサイクルが長いのか。それはGクラス自体がNATO(北大西洋条約機構)に制式採用されているから。頻繁にモデルチェンジを繰り返すと、その分パーツのストックをしなくてはならない。そんな事情もあってデザインは大きく変わらない。このあたりは出自が軍用車両という性でもある。

さて2018年のモデルチェンジ以来、初となる大幅アップデートが2024年に施された。このタイミングで型式がW465型になった。そのポイントはISGによるパワートレインの電動化、新世代の運転支援機能ドライビングアシスタンスパッケージの搭載、MBUXによるデジタル化になる。いずれも他のメルセデスモデルからすれば「やっとかい!」的な印象を受けそうだが、Gクラスの魅力はそんな俗世間的なところにはないはず。そして今回の試乗車はW465型になって初のAMGモデルになる。

クルマ界の「うま確フード」

巷では「うま確フード」(見た瞬間に美味しいと確信できる)が流行っているらしい。ゲレンデもまさにそれ。見た瞬間に「コイツはただモノではない」オーラが漂う。先のアップデートで実装されたキーレスで開く大きなドアノブをエイヤ! と力を入れて乗り込むとそこは外の見た目とは違うゴージャスな世界。

シートはスポーティな形状でありながらもソフトタッチなナッパレザーが使われ、加えてダイヤモンドステッチを施すという手の入れよう。助手席のアシストグリップがなければメルセデスブランドの高級セダンとまるで違和感がない。

後席は十分広いし専用のエアコンやUSBポートなど快適装備も抜かりはない。しかしながら。クルマの見た目から想像するほど超広々とかショーファーユースにも、という感じではない。実用的に広さを少々足し算した印象。

荷室は640リッターから後席を倒せば2010リッター容量とさすがに広大。まるで銀行の金庫のようにやたらとデカいリアゲートにもインテリア同様のホワイトのレザーが貼ってあるのはさすがセレブ御用達。試乗車には引き出しなどの小物入れを備えるプレミアムラゲッジボード(ディーラーオプション)が設置されていた。なるほどこれでゴルフ場に乗り付けたいモノだと思わせるようなシューズ入れに最適な引き出しがあったり、予備のボールを箱ごと入れておくのに便利な棚があったりするのだ。

カッ飛ぶ金庫?

エンジンをかけるとV8の咆哮が一瞬響く。最近は無骨系(トンコツではない)SUVなベクトルのモデルでも静粛性第一、密談不可的にエンジン音を抑え込もうとするけれどゲレンデは違う。エンジン、しかもV8が乗っているんだぜぃと主張してくれる。ゲレンデの名誉のために付け加えるけれど、エンジン始動後はすぐにきちんと時代にあったアイドリング音になる。そして走り出せば、ガチャっ! と結構な音のするロック音は「コレなんだよな〜」と安心する瞬間でもある。このなんとなくの安心感はならでは、だ。

ゲレンデに搭載されるパワーユニットは585PS、850Nmのスペックを誇る4リッターV8。それをツインターボで武装する弁慶に薙刀な逸品で、それはワンマンワンエンジンのAMG流儀に沿った今や少数派のモノなのだ。余談だがこのユニットはアストンマーティンにも搭載される。

加えて前述の通りISGがサポートする。ISGは乱暴に言ってしまえばエンジンスターター、モーター、回生ブレーキの発電を1つでこなすモーター機能が付いた発電機と思えば大きな間違いはない。それがエンジンとミッションの間に収まっているのだ。そのモーターのスペックは20PS、208Nm。2tを超えるゲレンデでそんな微々たる数値、と思いそうだがどうしてどうして。紳士的にゼロ発進をする時(ほとんどの場合がそうだが)は、滑り出すように速度が伸びていく。もちろん諸々の事情が許す場合に踏み込むとV8ツインターボの「本気」を味わうことも可能。

動力性能もゲレンデの大きな魅力のひとつ。クルマの速さのモノさしとされている0-100km/h加速は驚異の4.4秒! 4.4秒といったら以前試乗したポルシェ911カレラTのそれが4.5秒、ニスモのフェアレディZもカレラT同様。イデタチはポルシェやZの方が全然速そうに見えるけど少なくとも0-100km/hならばゲレンデの方が速い! 恐るべしセレブのニーズ。

クネッた道でも見た目から受ける印象よりもずっとスポーティ。ただし生粋のオフローダーの証でもあるラダーフレーム感はあるけれど。ドライブモードを一番スポーティなスポーツモードプラスにすると遮音材を省いたような生粋のV8サウンドが気持ち良く、加えて減速するとブリッピング(ギアの回転数を合わせる空吹かし)が入りシフトダウンされていく。このエンジンサウンドだけでも気分の高揚は間違いない。

クネッた道での安定性はAMGアクティブライドコントロールサスペンションの恩恵も大きい。サスペンションの構造は現行モデルで乗り心地に貢献するダブルウィッシュボーンになったフロントサスに対してリアはリジッドのまま。加えてスーパースポーツ並みのスペックに対応する固められた足回り。長くGクラスを乗り継いだオーナー方からすれば現行モデルは少なくとも前席は乗り心地が良くなり、Gクラスじゃない! となりそうだが後席は昔の味を引き継いでいると思う。

ビビッと来るゴリマッチョ派

そしてこのクルマの性能はオンロードだけでないところに主眼が置かれていることをワスレテはならない。未舗装路でもその本領を発揮できるようデフロックも装備。フロント、センター、リアと状況に応じてスイッチ一つでそれが操作可能。またローレンジモードも集約されたスイッチで行える。

ドライブモードにもサンド、トレイル、ロックと本格的な悪路用モードも備えているのはさすがだ。12.3インチのセンターディスプレイにも車両の傾きを把握できるピッチ&ロール計を表示させ、ドライバーは絶えず車両の状態を把握できる。もちろん生粋のオフローダーであるからこの情報はメーターにも表示可能。

クルマに興味のない人からしたら超高額なクルマはびっくりするくらい乗り心地がいいと思うかもしれないけれど、ゲレンデは違う。ドアの開け閉めにも力がいるくらい堅牢なボディによる守られ感。どんな道でも行って帰れるそんな基本性能の高さ、ここが魅力なのだ!

メルセデス・AMG G63 Launch Edition

価格3080万円から
全長 × 全幅 × 全高4690 × 1985 × 1985(mm)
エンジン3982ccV型8気筒ツインターボ
最高出力585PS/6000rpm
最大トルク850Nm/2500-3500rpm
WLTCモード燃費6.8km/L

メルセデス・AMG
G63
問 メルセデスコール 0120-190-610

海野大介(daisuke unno)
  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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