2枚目悪役風? GT63 4MATIC+ Coupeに試乗!!

正統派「悪役」俳優?

メルセデスAMG GT。メルセデスブランドのハイパフォーマンス部門が手がける正統派スポーツカーだ。初代のデビューは2014年。ガバッとドアが上に開くガルウィングドアを採用したSLSの後継モデルになる。

この初代モデルは2014年から放送された「仮面ライダードライブ」に銀幕デビュー。同作は仮面ライダーを名乗りながらもマシンはクルマをメーンにしたシリーズでも数少ない作品。AMG GTは敵役の仮面ライダーダークドライブが乗りこなすマシン、ネクストライドトロンとしてスクリーンを疾走した。なお竹内涼真演じる主人公、泊進ノ介の捜査にも活躍するのは初代NSXベースのトライドロン号で、子供以外にもクルマ好きイケメン好きなペアレンツにも人気を博した作品だ。

さて現行モデルである。現行モデル、C192型は2代目GTとして2023年にお披露目。ロングノーズショートデッキのスタイリングはコレぞスポーツカーの王道スタイル! を具現化したモノ。フロントグリルには空力性能やエンジンの温度調整を考慮した自動開閉式のルーバーが備わるカッコだけじゃない本気モデルなのだ。

そして現行モデルは昨年公開されたブラッド・ピット主演の映画「F1」(2026年第98回アカデミー賞の音響効果賞受賞)にも出演し、メルセデスAMGが制作チームをサポートしている。またその公開を記念して、映画の世界観を反映した特別仕様車「APXGP Edition」が日本では3台のみ発売された。

試乗会場に佇むGT63はダンディな悪役っぽい雰囲気を醸し出していた。仮面ライダーのくだり(アチラは初代モデルだけれど)しかりで、撮影車両のブラックアウトされた21インチサイズの鍛造AMGアルミホイールが凄みを効かせている。加えてフロントフェンダー横に設けられたエアアウトレットがコレまたタダモノではない印象だ。

スタイリングやその雰囲気は正統派2枚目俳優なのだが、なんとなく悪役や主人公の敵役がピッタリとくる。マッツ・ミケルセンやキアヌ・リーブス、邦画ならば浅野忠信や津田寛治といったところだろうか。

低い位置にあるドアを開けてコクピットに収まると室内はコレまた派手な赤を基調としたインテリアカラーが選択されていた。さすがいかなる時も映画俳優、見られることも意識している。室内のデザイン自体は航空機をイメージしたタービンノズルタイプのエアアウトレット、縦型の11.9インチサイズのディスプレイが新世代感を演出。独自のドライブモード、AMGダイナミックセレクトのダイヤルがステアリングに備わるのは最近のAMG流。

2シーターが基本だが、+2にあたる可倒式後席がオプション設定されたのも現行モデルの目玉のひとつ。シートサイズはやはり子供用と割り切る荷物置き程度のスペースなのだけれど、後席を倒してしまえばラゲッジスペースはかなり広く、大人2人の長距離旅行でも「使える」広さはかなり実用的。

道路はレッドカーペットだ!

シートに身を納めるとボンネットのラインが見え、ノーズの長さを感じる瞬間でもある。エンジンを始動すると自己主張する純内燃機関が目を覚ます。

現行のAMG GTには2リッター直4ターボにマイルドハイブリッドを組み合わせ、全幅も63に比べて若干抑えたGT43がエントリーモデルとして構えている。なんだ2リッターエンジンと思うなかれ。421PS、500Nmとハイスペックで前述のように全幅が抑えられているからクネッた道でも気を使わず、2+2の4人乗りが標準と日常ユースにはぴったりなのだ。

そして63系には試乗車の4MATIC+Coupeとシリーズ初のPHEV仕様のEパフォーマンスクーペ、63PROと3つの個性派モデルが揃う。いずれもパワートレーンはは4リッターのV8ツインターボに4WDシステムが基本。Eパフォーマンスはシステム最高出力816PS、トルクは1420Nmと機関車並みな性能だし、PROは612PS、850Nmのスペックで、サーキットユースに重点を置いたモデル。そして試乗車はベーシックなモデルになる。

メカニズム的には先にデビューしているオープンモデルのSLとプラットフォームやエンジン、ミッションなどはもちろん、前後のサス、AMGアクティブライドコントロールもほぼ同じ。

GT63系のエンジンはAMGの他のモデルからアストンマーティンまで搭載される同ブランドの汎用ハイパフォーマンスユニット、M177型をベースにインタークーラーやアクティブクランクケースベンチレーションなどに手を入れ、進化を遂げたモノ。

アストンマーティン版だと700PS超、900Nmを誇るので、試乗車の585PS、800Nmのスペックは扱いやすさを考慮してあえて抑えているといった方がいいのかもしれない。

走り出すと太いトルクで走る印象で確かに確かに扱いやすい。しかし、しかしなのだ。筆者の日頃の行いは間違いなく認めるけれど、よりによって時折雨足が強くなるクネッた道を高額な585PSのクルマで走る日が来ようとは。しかもタイヤサイズはフロントは295/30R21、リアにいたっては305/30R21と極太サイズ。

いやいや前向きに考えよう。なんせGT63はスターだ。一般公道はすべてがレッドカーペット。筆者は恐る恐るクネッた道へ突撃した。ところがですな、拍子抜けするほど想像以上に安心で、快適なの。路面はヘビーウェットで、状況的にはより緊張を強いられるはずなのに。

現行モデルは先代までの生粋の後輪駆動から車名の通りの4MATIC、すなわち4輪駆動へ変更さを受けた。そのメカニズムは走行状況に応じて前後トルク配分を50:50から0:100まで変化させる「AMG4マチックプラス」。これはコーナリングや路面状況によってフロントにトルクが必要とクルマが判断すれば切れ目なくシームレスに自動配分してくれるスグレモノ。この恩恵が多分にあり、強雨の峠道でも安心して大パワーのクルマを走らせることができた。

GT63の魅力はそれだけではない。なんと言っても純内燃機関の味わいは何モノにもかえがたい。前述の通り搭載されるエンジンは4リッターのV8ツインターボ。しかもタービンをVバンク内に納める凝った作り。右足数mmの動きが回転に直結しているようなダイレクト感、V8エンジンの振動や音は今や数少ないクルマの魅力だ。

組み合わされるAMGスピードシフトMCT9速ミッションの変速もダイレクトでスポーツモード以上にしておくと電光石火。乗り心地もドライブモードをスポーツ+にするとさすがに足の硬さが目立つけれど、腰痛製造機でもないのだ。

尺は1分3秒!?

センターには縦型の11.9インチ。ここからトラックペースというモードを選ぶと、タイヤの空気圧などサーキット走行に最適な車両情報を表示できる。もちろんラップタイムも同様。

そこで発見したのは筑波サーキットのラップタイム。1分3秒81とあるではないか!!!

しかもこのクルマはいわゆる「ツルシ」(改造しない市販のまま)。「ド」ノーマルなクルマが筑波を1分3秒台で走ってしまうとは。当然広報車だから乗った人もそれなりに気を使う、つまり本気度の割合はさほど高くないはず。一方的にコーフンしてしまったがどういうことか。草野球しかやっていない趣味人ピッチャーが軽く投げたら150km/hとかのレベルといったら伝わるだろうか。

いわゆる業界用語で映像や音声の長さを「尺」というのだが、試乗車は1分3秒あれば筑波サーキットを1周してしまうのだ。

そんな超絶性能ぶりであっても公道だと例えスポーツモードでもクルマが跳ねるような不躾をしないのは、さすがメルセデスといったところかもしれない。一般道では安心感と快適性だけが味わえる。後輪操舵システムの安定性や車庫入れ時の優位性は道具としても抜群。GT63は買い物からロングドライブにも使えるマルチな俳優なのだ。

GT63 4MATIC+ Coupe

価格2783万円から
全長 × 全幅 × 全高4730 × 1985 × 1355(mm)
エンジン3982ccV型8気筒
最高出力585PS/5500-6500rpm
最大トルク800Nm/2500-5000rpm

メルセデス・ベンツ
GTクーペ
問 メルセデスコール 0120-190-610

海野大介(daisuke unno)
  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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