特撮ばんざい!第74回:『怪獣天国』主演・蕨野友也が22大怪獣登場に驚愕!「古いものも新しいものも、いいものはいい」中古レコードのマニアックトークにも挑戦

『怪獣天国』 ポスターの前でニッコリほほえむ蕨野友也さん

自他ともに認める日本バカ映画の巨匠・河崎実監督が、またまた放つ大娯楽作! 今度の映画は「怪獣は実在する」と信じる純粋な少年と、大食い友好珍獣マミトラーの交流を軸に、世界中で眠っていた怪獣たちが次々とよみがえり、大混乱を巻き起こすという大怪獣巨編、そしてコミカル風味のファンタジー作品です。等身大で人間の言葉を話すマミトラーをはじめ、幻の怪獣テラインコグニータ、凶悪怪獣ビッグモンをはじめ、豪華絢爛な「22大怪獣」が大暴れ。果たして人類に打つ手はあるか――?

写真/鶴田智昭(WPP) 文/秋田英夫

『怪獣天国』ストーリー
浅草で中古レコード屋を営む浅谷浩之はシングルファーザーだ。息子の健太は、小四なのに怪獣は実在する、と信じていた。しかし、怪獣プロレスの楽屋で怪獣のきぐるみからレスラーが出てくるのを見て、ショックをうける。失望した健太だがある日、本物の怪獣・マミトラーと出会い仲良くなる。マミトラ―は浅谷家の居候となり、中古レコード屋を手伝うこととなる。ある日、店の常連でマニアの稲葉が、店から盗んだレコード「怪獣フラメンコ」をかけると異変が生じ、稲葉は怪獣ビッグモンにのっとられてしまう。同じ頃、浅草では怪獣コスプレイヤーたちが次々と怪獣化し、暴れ始める。ビッグモンは世界中の眠っている怪獣たちを蘇らせ、その総攻撃により人間世界を滅亡させようとしていた。マミトラ―は巨大化し、テラインコグニータとともに次々と現れた怪獣たちを倒すが、ピンチに。果たして怪獣軍団にマミトラ―たちは勝てるのだろうか…!?

映画怪獣天国』 公式サイト

2026年1月23日よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサほか全国ロードショー!

映画公開を記念して、ここでは本作で中古レコード店の店主・浅谷裕之を演じる蕨野友也さんにご登場いただき、河崎実監督作品に初出演した感想や、浅草を舞台にした「怪獣人情喜劇」という趣のストーリーについて、そして古きよき怪獣映画や中古レコードにロマンを求める「永遠の少年たち」に向けたメッセージなどをうかがってみました!

中古レコードジャケットの修復テクニックにこだわりを持つ裕之の役作りとは

――浅草にある中古レコード店の店主・浅谷裕之を演じるにあたっての思いを教えてください。

蕨野 今まで演じたことのない役柄でしたが、裕之と自分は年齢的にも近いですし、シングルファーザーという設定もあながちわからなくもない。この役に自分をどう寄せていくのか、あるいは役が自分にどう寄ってきてくれるのかなと、台本を読みながら思っていました。

――撮影に臨む際、河崎監督からはどんな言葉をかけられましたか。

蕨野 衣装合わせの日、河崎監督から「これ、あげるよ!」と本を2冊もらったんです。一冊は、レコードの歴史が詳細に書かれた書籍で、これは役作り的にありがたいなと思いました。もう一冊は監督の自伝『河崎実監督の絶対やせる爆笑痛快人生読本』で、これって今度の映画に必要なのかな? って最初は頭をひねりました。俺はレコードの勉強をしながら、河崎監督の勉強もするのか……と(笑)。でもせっかくいただいた本ですからちゃんと読みましたよ。最後のページに「やせた?」って書いてあって、しっかりオチがついている。読み終わったあとは、これまで河崎監督が、どんな作品をどういう思いで作ってきたのか、現場に入る前に知ることができてよかったなという感想を抱きました。

ジャケット修復の細かな作業も見事にこなす器用な蕨野さん

――冒頭から「中古レコード・ジャケットの修復作業」をするシーンが出てきましたが、ああいった職人的こだわりについて、どのように表現しようと思われましたか。

蕨野 あのシーンを撮影するとき、中古レコード修復の専門家の方をわざわざ現場におよびして、実際に技術を見せていただきながらやっていたんです。お話をしているうちに、つまりこうですねと。小学生のころ、図画工作の時間に紙を切ったり、ノリで貼ったり……細かい作業をしていたじゃないですか。カッターの刃の先端だけを使うとか。そんなことを話したら、その先生が「蕨野さんは大丈夫ですね!」と言ってくださったのが嬉しかったです。

――ジャケットの剥げたところをサインペンで補修するところなど、蕨野さんが真剣に細かい作業をされているのが、逆に面白さをかもし出していましたね。

蕨野 わははは! そうそう。あれって中古レコードの補修ではありますけど、例えば自分の車のボディに傷がついたりしたら、ほんのわずかな箇所だったら塗装屋に持っていかずに、ちょっとマジックを使って傷を隠して、指で色をなじませたりして、これでイケるかなって(笑)。そういうちょっとしたテクニックってあるじゃないですか。同じ考えだと思うんです。破れたジャケットを接着剤でつなぐとき、指の脂分が着かないよう先のほうだけつまむとか。ああいう細かいところ、観ている方たちに「あるある」って思ってくれたら嬉しいですね。

――浅草が舞台となっていて、裕之と息子・健太をとりまく近所の人々も気さくで優しく、人情喜劇の趣がありました。

蕨野 僕の子どものころはああいった下町で暮らしていましたから、近所の人たちが気軽に声をかけてくれるような環境がふつうだと思っていました。ただ、最近だと「近所づきあい」という考えそのものが薄れてきているみたいですから、一概にふつうとは言えなくなってきましたけど……。僕個人としては小学生の息子を育てるのに適した、とてもよい環境だと感じていましたよ。

――現場での、河崎監督の演出はいかがでしたか。

蕨野 びっくりするほど撮影スピードが早いんです。メイキングのカメラが回っているときにも言ったと思いますけれど、撮影終盤ごろになると僕は監督に「マッハ河崎」というニックネームをつけました(笑)。カメラマンさんがまだスタンバイ中で、カメラを構えてもいないうちから「ハイ本番!」って言うんですから……。いやいやいや、まだテストもしてないでしょって(笑)。僕は監督の「ハイ本番!」ってモノマネを楽屋でやって、志田(音々)ちゃんや(黒岩)紘翔にめっちゃウケていましたからね。

怪獣は本当にいると信じる健太の前に、なんと本物の怪獣登場⁉

――息子・健太役の黒田紘翔さんは怪獣は実在すると信じる純粋な少年役を好演されていました。父子役を演じる際に意識したのはどんなことですか。

蕨野 お母さん(浅谷めぐみ/演:永野希)が亡くなっていて、裕之と健太の2人暮らしという設定ですから、2人でいるときにはずっとこちらから話しかけ、コミュニケーションを取っていました。最初は緊張しているのか大人に遠慮しているのか、口数が少なかったんですよ。だから、そういった彼との「壁」をとっぱらうところから始めました。撮影に入る前から積極的にうちとけようとしていましたし、ゲームの話題や僕の子ども時代の「虫取り」の思い出話など、珍しがって聞いてくれました。

邪悪な怪獣ビッグモンと対峙するマミトラー

――言葉を話す怪獣マミトラーのように、怪獣が日常に溶け込んでいる特殊な世界観については、どう思われましたか。

蕨野 子どもの想像力を育む、いい世界ですね。裕之は最初、怪獣が実在すると信じる健太に「現実を見てほしい」と思っているじゃないですか。でも僕個人としては、大人になれば自然にわかってくることだから、大人が子どもにそんなことを言わないほうがいいと考えています。できることなら、いつまでもそういう「夢見る心」を大事に持ち続けてほしい。極端な話、大人は目に見えているものだけで物事を判断するけれど、たとえフィクションだとはっきりしていても、想像の中の怪獣を信じたっていいじゃないですか。大人になって考え方がだんだん変わっていくのを止めることはできないけれど、少なくとも大人の目線から「現実を見ろ」なんて、自分からは言わない。そこが僕と裕之の違いかなと思いました。

幻の怪獣テラインコグニータが令和の世に復活。彼とビッグモンの関係は?

――町ぐるみで怪獣を受け入れる、あたたかな空気が作品全体から感じられました。意思疎通さえできればどんな生き物とでも仲良くなれる、といったテーマが込められているようですね。

蕨野 それはそうですね。テラコ(テラインコグニータ)が(三波)伸介さん演じる大介に懐いちゃって、料亭で働くようになるとか、最初は怪獣を嫌っていた大介が、テラコに自分の息子のような愛着を示すとか、両者の関係性がとてもいいですし。そういえば監督に「マミトラーやテラコは、作品時間でどれくらいの間、人間と一緒にいるんですか」って尋ねたら、ずいぶん長いこといるんだよって言われたなあ。1ヶ月とか2ヶ月どころじゃない。ずっと長く一緒に暮らしているがゆえの関係性なんだなあと感心しました。舞台が浅草というのもよかったんじゃないかな。他の街なら、怪獣が出てきてそれで終わりって感じになりかねません。ロケーションの雰囲気もふくめて、怪獣でもなんでも日常に受け入れる、浅草ならではの良さがありました。

――大介とやけにウマが合う「テラインコグニータ」は、二代目・三波伸介さんの父上である先代・三波伸介さんが50年以上前にデザインした怪獣だったことを知っていると、彼らの関係性がいっそう強く感じられ、感動してしまいますね。

蕨野 その話、監督とスタッフの方々がしていたのを聞いていましたよ。そう考えると、映画のポスターのキャラ配置なんて絶妙ですよね。伸介さんの真上にテラコがいて、それを見上げている構図になってますから(笑)。

中古レコードのマニアである稲葉(左)は裕之の店で激レア盤「怪獣フラメンコ」を発見する

――イジリー岡田さん演じる中古レコード店の常連客・稲葉との会話シーンもよかったですね。「マニア同士の話は何時間でも続く」というくだりについては、どう思われましたか。

蕨野 僕自身、レコードの話はしないですけれど、自分の好きなもの、好きなことの話なら延々と話が続くということ、好きな者同士が集まればずっと盛り上がるということは、日常生活において当たり前だと思っています。好きなジャンルが違うだけで、ああいった裕之と稲田のテンションは理解できるというか、ありえると思いました。イジリーさんは芝居に対してマジメに取り組まれる方で、僕も演じやすかったです。でもイジリーさん、台本を貰ったのが撮影前日だったと話していて、それには驚きましたね。

――『金メダルへのターン!』や『地球攻撃命令ゴジラ対ガイガン』などで知られる梅田智子さんがご本人役で登場され、裕之が梅田さんのレコードを手にしてテンション上がるという、マニアックなシーンについてはどう思われましたか。

蕨野 梅田さんがいらっしゃってテンションの上がった裕之が、サインを書いていただくくだりはほとんど僕のアドリブでした。撮影で使った中古レコード店って、改修になる予定だと知っていたので、ふと思いついて「この壁にサイン書いてください!」って言ってポスターを外しました(笑)。僕もときどき、ウルトラマンシリーズのショップに「どんなのがあるのかな」と思って立ち寄ることがありますから、あの「ご本人登場」みたいなシチュエーションにはすごく理解を示しました。

あっと驚く不思議なパワーで、マミトラーが巨大化を果たして悪い怪獣に挑んでいく
マミトラーを応援する裕之、健太と、善良なる浅草の人たち

――裕之をめぐる由加里、清美のライトな三角関係ドラマは、蕨野さん、志田音々さん、高木ひとみ○さんそれぞれの持ち味あってこその面白さでしたね。

蕨野 僕と音々ちゃんの間にひとみさんが入ることで、うまくバランスが取れていると思いました。コミカルな感じなので笑いももちろん起きるんですけど、人間側のドラマはどこかほんわかしていて、この先どうなるんだろうって思わせるような余白ができているんじゃないでしょうか。怪獣たちの物語は大混乱の末、一応の収束を見るんですけど、人間同士のドラマの「その後」がもっと見たくなると思います。なんなら僕と伸介さんが一緒にいるシーンとか、浅草の人たちとのつながり、人情味みたいなものがもっと描かれていればよかったかもしれません。

クトゥルフオイドと戦うテラインコグニータ。意外な強さにビックリしたな~もう!

――マミトラー、ビッグモン、テラインコグニータをはじめ、クライマックスに登場した「22大怪獣」についてはどう思われましたか。

蕨野 最初、出てくる怪獣は10体くらいだよって、監督から聞いていたんです。でも、映画を観たらそれどころじゃない。予告編の文字には「22大怪獣」って書いてあるし。演じているときは、まさか22体も怪獣が出るなんて知りもしなかった(笑)。あとから聞いた話では、これまでの河崎作品に出てきた怪獣がわんさか再登場しているらしいじゃないですか。

圧巻の22大怪獣・総進撃について語る蕨野さん
怪獣はストーリーを背負っていなければ、と話す蕨野さん

――主役級のマミトラーやビッグモン以外で、特に印象に残った怪獣はどれですか?

蕨野 そうですね……(しばし考えて)巨大なイカとかタコとかカニとかの怪獣、気になります(『三大怪獣グルメ』登場のイカラ、タッコラ、カニーラたち)。『怪獣天国』に出てくる怪獣はみんな、恐怖感がまったくないのがいいですね。それぞれ、独自の考えを持っていそうな、個性を備えた奴らばかり。悪役のビッグモンですら愛嬌がありますからね(笑)。やっぱり怪獣って存在は、ふだん何を食べているのか、どうして人間社会に出てきたのかなど、ストーリーを背負った存在でなければいけないし、観ている方たちに愛着を持ってもらえなければならない、と強く思っています。

「monoマガジン」本誌を手にして微笑む蕨野さん

――もしも『怪獣天国』の続編的作品が作られるなら、また裕之として出演したいですか?

蕨野 僕も河崎作品の怪獣たちと同じく「再利用」……いやいや「再登場」する可能性があるってことですね(笑)。もしもよきタイミングでお声がかかったら、また出演する機会があるかもしれませんよ。

――今度は巨大怪獣を迎えうつ防衛チームの隊長役なんて、いかがでしょう。

蕨野 そういう役はもう経験済みですから! 「本家」のほうから怒られちゃいますよ(笑)。

――最後に蕨野さんから『怪獣天国』の見どころを含む、怪獣映画ファンのみなさんへのメッセージをお願いします。

蕨野 古いものも新しいものも、いいものはいい。子どもから大人まで、世代を超えて愛されるものがあるんだねというのが、この映画のテーマだと思います。若い方にはレコードといっても、名前くらいは知ってるけど実際にプレーヤーにかけて音楽を聴いたことがないって人のほうが多いかもしれません。そんな人はこの映画を観て、古き良き昭和の時代に少しでも触れていただくきっかけになったらいいなと思っています。あとは、22体も怪獣が出てきますから、ぜひSNSを使って僕に「どの怪獣が気になる」のか教えてください。名前なんてわからなくていいです。イカとかタコとか宇宙人とか、なんとなくでいいので、ぜひ好みの怪獣を教えてほしい。そうしたら『怪獣天国』を観てくださったことがわかって、僕が喜びます(笑)!

映画怪獣天国』 公式サイト

2026年1月23日よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサほか全国ロードショー!

「あなたの好きな怪獣を僕に教えてください!」

蕨野友也 わらびの・ともや
1987年、大阪府出身、宮崎県育ち。『嫌われ松子の一生』『ごくせん 第3シリーズ』などのドラマや映画に出演後、『仮面ライダードライブ』(2014年)の敵幹部ハート役、『ウルトラマンブレーザー』(2023年)の主演・ヒルマ・ゲント役で特撮ファンを始め幅広い視聴者に支持を受ける。大地真央主演『最高のオバハン 中島ハルコ』では若杉役を好演。みやこんじょ大使、健康増進アンバサダーなどの活動も行う。

秋田英夫 あきた・ひでお
フリーライター。『宇宙刑事大全』『大人のウルトラマン大図鑑』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『上原正三シナリオ選集』『DVDバトルフィーバーJ(ブックレット)』など特撮書籍・ムック等の執筆・編集に携わる。河崎実監督の『電エース』シリーズにおける電兄弟のひとり「電七郎」役で出演経験もあります。

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