
最新作『プレデター:バッドランド』が11月7日(金)公開! 若きプレデターを主人公に据えた完全なる新章と銘打たれ、ファンを中心に話題を集めている。
そんな中、10月30日放送のTOKYO MXの人気情報バラエティ『5時に夢中!』にて突如プレデターが登場し、視聴者の度肝を抜いた! 実はこのプレデター、あまりに好き過ぎて自ら全身スーツを作り上げた、生粋のプレデターファンの方。プレデター最大の特長である四方に大きく開く顎も完全再現され、凄まじいインパクト! 『モノ・マガジン』編集部は、謎の某プレデターコスプレイヤーさんにインタビューを敢行。そのスーツの秘密に迫り、細部に至るまで激写した!
写真/熊谷義久 文/今井あつし

強き者との戦いを何よりも、勝利することを誇りとする種族プレデター。ヤウージャ族の若者デクは、一族から落第者として追放されてしまう。彼が放り込まれたのは、この宇宙で最も危険な惑星。この【バッドランド】でデクは、上半身しかない女性アンドロイドのティアと出会う。おしゃべりで陽気な性格の彼女と即席のタッグを結成することに。生きて帰るため、そして何よりも自身の強さと誇りを証明するため、戦いに身を投じる決意をする。
すべてを失い、狩る側ではなく “獲物” になってしまった若きプレデターと、ある秘密を隠したまま彼と旅をするアンドロイド。彼らは生きて帰還できるのか?




●すべての原点である第1作『プレデター』の衝撃
——間近で拝見すると本当に迫力があって、まるで本物のプレデターにお話を聞くような感覚です。スーツを着たままでの取材ですが、苦しくはないですか?
いえいえ、全然お気になさらず(笑)。ちょっと暑いぐらいで、周りが思っているよりも全然快適ですよ。
——そうなんですね。中の人が気さくな方で安心しました(笑)。早速ですが、『プレデター』にハマったキッカケから教えていただけますでしょうか。
第1作のアーノルド・シュワルツェネッガー主演の『プレデター』ですね! あの映画は1987年公開ですよね。その当時、自分は高校生だったので映画館ではなくて、テレビの洋画劇場で初めて観たんですけど、もう本当に衝撃でした。
宇宙から来た限りなく人間に近い体型をした異星人が仮面を被っていて、一人ひとり襲い掛かって人間を狩っていく。そして、マスクを外したら凄い形相の怪物だった! ものすごい衝撃を受けて一気に引き込まれたのをいまだに覚えています。



プレデターと言えば、原始的にして戦闘的なギミックの数々。その中でも右腕に装備された鍵爪状の刃物リストブレイドは象徴的な武器だ。「自分もお気に入りは断然リストブレイドです。映画中にどんな使い方をするのかいつも見ています」(コスプレイヤーさん談)
——第1作の『プレデター』は物語前半、光学迷彩で身を隠していて、なかなか姿を現さない不気味さもありましたが。
「陰からじ~っと見ている」「突然現れたと思ったら、パッと消える」「油断していたら、急に襲ってくる」なんて、ワクワクするじゃないですか! そういった習性から、なんとなく自分の中でプレデターは日本の妖怪っぽい感じもするんですよね。
異星人なのに野性的で、しかも科学が進んでいるにもかかわらず目が悪いとか、ギャップが凄すぎて、しかも仕草が人間じみている。観れば観るほど恐怖なのか共感なのか、ワケがわかりません。そこがプレデターの魅力なんだと思います。

●ベストバウトである『プレデター2』
——プレデターは今までのシリーズで様々なキャラクターと戦ってきましたが、その中でも個人的にベストバウトと呼べる戦いは何になるでしょうか?
ベストバウトとなると、2作目の『プレデター2』(1990年)に軍配が上がりますね。ダニー・グローヴァー演じるハリガン警部補とシティハンター(2作目のプレデターに対する便宜的な呼称)との戦いは劇中でもかなりの時間が割かれていて、物語後半はほぼ全てバトルシーンと言ってもいいぐらい、緊張感がずっと続いていくのがたまりません。
最後の宇宙船内でエルダー(リーダー格のプレデター)をはじめ、同族たちが続々と出現するシーンなんか最高です。




左腕にはコンピューターガントレットを装備。第1作目のラストで、自爆用の小型プラズマ爆弾を起動させた。映画同様、こちらのスーツも上部のデバイス部分(出っ張り部分)を取り外すことができる。
——2作目は医療キットを使って自分で傷を治療したり、また子どもや妊婦は襲わないなど、プレデターの習性がより具体的に描かれたのも特長でしたね。
自分で治療するところは人間臭くて良いですよね。彼らも決して不死身ではない。地球外生命体ではあるけれども、妙な現実感がある。傷口に薬が染みて思わず叫び声を上げてしまうところも、すごく人間臭い。それで隣室のオバチャンが不審に思って様子を見にくるところも含めて、ユーモアに溢れています。
子どもや妊婦を襲わなかったのも、弱い者に対して全く関心がないからで、常に強い者に挑戦していくことしか興味がない。その潔さも良くて、娯楽映画のキャラクターならではの魅力がありますよね。




最新作『プレデター:バッドランド』のメインビジュアルでも主人公デクが構えているソード武器。刃部分が赤く発光。折り畳みの可能で、鞘に収納できる。
●いきなり頭部を造形!
——1作目で心を掴まされたとのことですけど、本格的にスーツを作られたのはいつ頃からでしょうか?
2010年ぐらいですね。プレデターの素顔が本当に好きで、造型的にも作っていて楽しいだろうと、とりあえず頭部を紙粘土で作ったのが最初です。子供用の軽い紙粘土で作っていったので、途中でどうしても乾かす時間が必要でした。少しずつ紙粘土を足しては乾かしていくという作業を繰り返して形にしていきましたね。
——ちなみに、それ以前に何か造形物は手掛けていたのでしょうか。
いえ、全く経験がありませんでした。けれど、自分は本職が歯科技工士で、普段から歯科医院様から個別の型採りした模型やシリコン印象などをお預かりし、補綴物の製作を手掛けておりますから、小さいものであろうが、大きいものであろうが、作ることに変わりはないだろうと(笑)。仕事が終わってから夜中に少しずつ作っていったので、完成に1年かかりましたね。プロの方だったら、あっという間に作り上げるのでしょうけど。
それで、ある時に知り合いから「ワンダーフェスティバルに参加してみない?」と誘われて、「そういうイベントがあるんだ」と初めて知ったんですけど、造形に目の肥えた方々に自分の技術がどう評価されるか挑戦したい。何よりプレデターと一緒に写真を撮れたら嬉しいだろうなと(笑)。ならば本格的に全身のスーツを作ってみようとチャレンジ精神が沸き上がりました。



プレデターの頭部。側面から後頭部にかけて何本も生えているドレッドヘアー状の黒い管も完全再現!
——とは言え、全身スーツを作るとなると今まで以上に大変だったと思います。
実際に『プレデター』のスーツを手掛けたハリウッドの造形師スタン・ウィンストンという方の本があったんですよ。英語で書かれたものでしたが、中には写真がたくさん掲載されていて、その写真を参考にして、作り方を覚えていきましたね。
それまではこういったコスチュームに関して全く知識が何もないものですから、最初はどんな材料を使うべきか全くわからず、皮膚は変成シリコンシーラントを使っていました。だから、すごい臭かったんですよ(笑)。今見たらもう酷い出来だったんですけども、徐々に改良を重ねていって、なんとか見られるようになってきたかなと。




手足も細部にいたるまで作り込まれていることがわかる。手のひらの指差し指の第2関節のところに黒い穴が見えるが、そこから実際の指を出して細かい作業を行えることが可能に。
——全身を作るのに、どのぐらいかかったんでしょうか。
最初の形になるまでに6年間かかりました。それから少しずつ改良を重ねていって、現時点で13年目です。頭部に関しては先にも言ったように最初は紙粘土を作って、それがラテックスになって、最終的にシリコンに変わったんです。シリコンは非常に柔らかくて、伸縮が全然違うんですよ。
例えば、眉間にしわを寄せるにしても、ラテックスが素材だった時は、頭部を上下に分割することで縮めるように工夫していたんですけど、伸縮性のあるシリコンになったことで割る必要がなくなって、一面で作れるようになりました。



正面・背面・側面の全身像。



四方に大きくガバっと開くプレデターの顎。上を向いていた牙が開くと前に突き出してくるので、迫力満点。コスプレイヤーさん独自に考案した仕掛けで、自身の顎とワイヤーで連動している。
●驚愕!? 迫力ある口の開閉ギミックの秘密とは?
——ご出演された『5時に夢中!』でも口が大きく開いたことでインパクトを放っていましたが、どのような開閉ギミックになっているのでしょうか。
開閉ギミックは、自分の顎と連動している仕掛けになっています。どういうことかと言うと、人間の顎自体が三次元的に動くんですよね。中切歯(歯列の一番真ん中にある2本の前歯)を基準にすると、人間の顎って前後左右上下の全方向に動くようになっているんです。
ワイヤーで開閉ギミックを動かしてるんですけど、例えば、自分の顎を右に動かせば、プレデターの左顎が開いて、左顎を動かせば右顎が動くようになっています。両顎を開く際は顎全体を前に突き出す。自分の顎の動きに合わせて操作しています。



眉間や側頭部には返り血を浴びたかのように緑色の血痕が付着している。さらに頭部には焦げ跡も。また初期ショッカー怪人のように、中の人の目がそのまま覗いている仕様に。さらにコンタクトレンズで不気味な瞳孔を演出。
——電気仕掛けではないんですか!
そうなんです! 本来ならサーボモーターで動かすのでしょうけど、自分の中でどうもしっくりと来ない。自宅のお風呂に浸かりながら「プレデターのいかつい顎や牙の動きを再現にするにはどうすればいいのか?」といろいろと考えていくうちに、フトした瞬間、「自分の顎の動きを採り入れれば出来るんじゃないかと」とアイデアが浮かんできて。風呂から出て、速攻でメモを取りました(笑)。
成功するかどうかわからなかったんですけど、試してみた結果、思いのほか上手くいきましたね。言ってしまえば、人間と同じ筋肉で動かしているので、どこか不規則な動きなんですよ。それがまた良い感じにリアルな気持ち悪さが出ているかと思います。



プレデターと言えば、キツネ目のようなマスク。「粘土造形が終わった頭部から型を取って石膏模型にして、さらにその上から粘度造形したものなので、完全に頭部とフィットしています。素材はFRPで艶消しして、傷をつけることで歴戦の戦士感を出しました」(コスプレイヤーさん談)
●新機軸を打ち出した『プレデター:バッドランド』の胸アツドラマに超期待!
——最新作『プレデター:バッドランド』はシリーズ初、プレデターが主人公という立ち位置です。この新機軸に対して、どのようなご感想でしょうか?
現時点でまだ予告動画しか観ていないですが、最初の印象としては『猿の惑星』のように大胆にアレンジされたなと(笑)。だけど、考えてみればシリーズが続いていくにつれ、どうしてもワンパターンになっていく感が否めず、そこがファンとして辛いところでもありました。視点を変えたことで不安はありつつも、同時に新鮮さが戻ったとも感じています。
それに今までプレデターは敵役という立ち位置でしたけど、主人公に据えたことでその内面が描かれるわけじゃないですか。彼らがどのような生き方をして何を考えているのか。そこにはきっと何かしらの胸アツのドラマがあるはずです。それに期待しています!



上半身の鎧部分。マスクだけではなく、胸部にも爪状の傷跡が施されている。プレデターの主要武器であるショルダー・プラズマキャノンが右肩に。左肩にはパルプ状のものが。
——ご自身もプレデターになられたことですから、同じプレデターとして見逃せないですよね!
そうなんです! それにプレデターのスーツを作ったことで、すごく嬉しいことがあったんですよ。海外の知り合いが『ザ・プレデター』(2018年)でのスーツアクターさんと仲が良くて、「君のスーツを本人に見せてあげるよ」と写真を送ったところ、実際にご本人からメッセージをいただいて、サインをもらいました!
さらに『プレデター2』で腕を切られたプレデターのスーツアクターを務めた方からも友達申請が来て、もう寿命が縮まる思いでしたね。プレデターの新作映画も非常に楽しみですので、プレデターファン及びこれからご覧になる皆さん、一緒に楽しみましょう!

今井あつし(いまい・あつし)
編集・ライター。『映画秘宝』本誌と公式noteで『侍タイムスリッパー』関係者のインタビューを担当。批評家・切通理作のYouTubeチャンネル『切通理作のやはり言うしかない』撮影・編集・聴き手を務める。
【公開情報】
映画『プレデター:バッドランド』は11月7日から全国ロードショー!
『プレデター:バッドランド』場面写真ギャラリー





















『プレデター:バッドランド』
2025年11月7日(金) 全国ロードショー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

































