ブランド初の電気自動車 キャデラック リリックに試乗!

チョコミントよりも・・・

アメリカの名門、キャデラック。創業は1902年という100年企業だ。今年(2025年)で123年の老舗中の老舗になる。日本では戦後から高度経済成長期にかけて「富と権力」の象徴のひとつとして数えられたと言っても過言ではないのだ。

ブランドポリシーは革新的技術に対する挑戦の積み重ね。今でこそ当たり前なキーを差し込んで撚ればエンジンがかかるセルフスターターは1911年に開発しているし、1915年には量産型のV8エンジンを全モデルに搭載。その他、パワステの全モデル標準装備(1954年)、オートエアコン(1964年)など、業界をリードする技術屋ブランドでもある。

そんな新進気鋭のキャデラックがリリースしたのがEV、リリック。V8イメージの強いキャデラックも今やチョコミントよりもデ・ン・キなのだ!

ビジュイイじゃんなスタイリング

リリックは2023年に発表されたキャデラックブランドのファーストEV。日本へ導入するにあたって右ハンドルのみにするなど市場を強く意識している。イケイケなイメージの大統領の国のクルマが、である。さすがにウィンカーは国際基準の左側だったけれど。

スタイリングはワイド感を強調するファストバックスタイル。リアエンドに向かうルーフラインが絶妙な弧を描く。ヘッドライトも縦に配列されるのも特長的だ。

クルマ離れが叫ばれる世の中だが試乗中は注目度が高かった。近未来的でスタイリッシュなクルマのなす技と思うが、クルマから降りた途端に「どこのクルマだい?」と聞かれることも。スーパースポーツを乗って(もちろん借りたモノ)いても視線はそんなに感じないが、リリックはまさにビジュアルいいじゃん! だった。

3列シートもいけそうな空間

ドアを開けると運転席から大きく湾曲した33インチの大型ディスプレイが目を引く。最近の高級車の流行りでもあるが、リリックのそれは解像度が9Kというからテレビジョンもびっくり。余談だがセンターディスプレイにナビ機能はなく自分のスマホと連動することになっている。

またインパネのアクセントでもあるウッドパネルは一部新聞紙をリサイクルしたモノというから時代は変わった、である。シフトレバーはステアリングの右。メルセデスやテスラもそうだけれど、日本車から乗り換えるとウィンカーっぽくて間違って上下させたら困るじゃない、と筆者は思っているのだけれど、リリックのそれは手前にひきながら操作するので、誤って動かすことはなさそうだ。コレは声を大にして言いたい。なおこのインパネデザインのモチーフは「古き良き」アメ車の全盛期とされる1960年代のエルドラドという。

バッテリーを床下に搭載するEV専用のプラットフォームで作られるリリックはタイヤの前後間の距離であるホイールベースが3m以上と長く、コレはそのまま室内空間の広さに直結している。特に後席の足元スペースはかなり広い。実際の数値もスゴイ。レッグスペースは約1mで、リムジン並。もちろん3ゾーンのフルオートエアコン、リア左右のシートヒーターも装備。後席用のUSBはもちろん、ほかにAC電源も用意されているのは嬉しいポイント。筆者のようなアナログ人間はスマホの充電器は基本的にはコンセントだから。

後席で、もうひとつ。ルーフラインが後ろに行くに従って曲線を描くボディシルエット。もしかしたら頭上スペースは少し狭いかも、と思っていたのだが、サンシェード付のガラスルーフのおかげで窮屈さは皆無で開放感抜群だった。

カテゴリーはミッドサイズSUVなのだが、メルセデスのGLEやBMWのX5、アウディのQ8と似通ったサイズで、荷室空間もたっぷり。その気になれば3列目シートを作れそうなスペースになっている。

6リッターV8なEV

パワートレーンは前後にモーターを配したAWD。システムの最高出力は522PS、最大トルクは610Nm。今や500PSオーバーでも不感症気味なEVだが、コレがどのくらいスゴイのかというと、惜しまれつつもラインナップから外れてしまったカマロの6.2リッターV8エンジンのトルクとほぼ同じ。なおリアゲートに輝く600E4のエンブレムは6リッターのエンジン車と同等以上のパフォーマンスを誇るモノでもある、のいわば漢の証。ユニークなのは電動車だからフロントも荷室スペースかと思いきやフードを開けるとキチンとモーターが鎮座している。

リリックには50:50の前後重量配分、EVならでは低重心設計、デュアルモーターによるAWDシステムなど走りのパフォーマンスも高そうなコトバがずらっと並ぶ。ところが実際に乗り出すとそんなハイパフォーマンス車両であることを感じさせない扱いやすさなのだ。大出力、大トルクでも街乗りでは気を使うことなく、自分の意思に沿って速度が乗っていく。もちろん踏み込めば相当速い。

用意されたドライブモードはツアー、スポーツ、スノー/アイス、マイモードの4つ。慣れが必要と感じたのは、ドライブモードを選択するときはワンアクション(画面のドライブモードをタッチ)してからなので、頻繁にドライブモードを選択したいユーザーは一度試してからがいいかも。クネッた道や料金所加速を楽しみたいならスポーツもありかと思うが、筆者はツアーが万能と感じたので、ここは数回しか操作しなかった。

特長的なのはステアリングに設定されたパドル。パドルならば「ふーん、最近のEVらしいじゃない」となるのだが、リリックは一つだけ。これは業界初のバリアブル回生オンデマンドシステムと呼ばれるモノ。パドルを引いている間は回生ブレーキが作動し、減速をコントロールできるのだ。引き方次第では強い回生ブレーキになったり、ずっと引いていれば完全停止させたりまで操作可能。コレが想像以上に使いやすくて、クネッ道でコーナー進入前にパドルを引く、減速、再加速とスムーズだった。

乗り心地はやや硬めかと感じたがクルマの所作は優雅。オトナのスポーツカー風なのだが、タイヤのノイズが気になる場面も。ノイズといっても無理矢理アラを探せば、という話だけれど。定速巡行はEVならではの静粛性に加えフロント、サイドは2重ガラス、リアに至っては5mmの強化ガラス採用。それらにアクティブノイズキャンセレーションが加わり脳内で「ししおどし」がカコーンと響くくらい静か。その静粛性を最大限に享受できるよう、車内の音楽環境は豪勢なモノ。オーディオはAKG製のサウンドシステムが標準装備で、GMブランドとしては初のダクテッドサブウーファーを採用という。スピーカー数は19。シートのヘッドレストにまでスピーカーを内蔵させるこだわりなのだ。

コレがまたいい仕事をしてくれてジャズからクラシック、演歌、懐メロにアニソンまで澄んだ低音を楽しめた。なおシート表皮は最近のヴィーガンレザーが標準だが、試乗車は「アメ車ってコレでしょ」的なゆったりたっぷりなレザーシートがオプションされていた。

なお筆者がお勧めしたいリリックの使い方は、は90km/h前後で高速を流しながらACCオン、音楽を楽しみながらマッサージ機能を使っての長距離クルージング、というモノ。

長袖、ぢゃなくデンキをください?

リリックの内燃機関車の燃料タンクに相当するバッテリー容量は95.7kWh。一充電あたりの航続距離は約510km。充電は急速と普通の2つに対応する。メーカー発表では90kW規格の急速充電器ならば30分で約150km、50kW規格ならば30分で約120km走る充電が可能という。

机上の計算だけならば例えば100kWの急速充電器ならば約1時間で満充電になる計算。同様に30分ならば半分は充電できることになる(何km走れるかは別として)。ゴルフやテーマパークなど目的地でゆっくり充電できる時間がある場合は別だが、EVでいかに充電待ち時間ロスを減らすか、というのはこのあたりにかかっている。それはなるべく出力の大きい充電器を探すことだ。

高速のSAでは最近は90kW規格以上の高速充電が増えているので、それらが設置してあるSAを下調べしておけば、充電時間も最小で済む。今回も150kWの充電器があるSAをあらかじめリサーチして充電。その時のバッテリー残量は34%、メーター表示の航続可能距離172km。充電スペースにはリリック1台のみで30分充電したところ、78%、航続可能距離408kmまで充電できた。

また別のSAでも150kW規格の急速充電器を使ったところ、30分で33%から67%と残りの行程の不安を解消するのに十分なバッテリー残量に。

筆者は自宅に充電環境を持ち合わせていないがコンビニや公共駐車場、役所、ショッピングモール、クルマのディーラーなど意外に充電できる場所は増えている。今やEVといっても十分実用的で、充電時間によるハードルはかなり低くなっていると体験してきた次第。

アメ車という響きで単にデカくて燃費悪い、のイメージはすでに過去のモノ。リリックはスタイリッシュだし何より個性を感じることのできるクルマなのだ。

それでもやっぱりアメ車はデカくてと抵抗のある皆様、リリックの発表会ではよりも小柄なオプティックも導入計画であるとアナウンスしていたので、そちらに期待する、というのもありですよ!

キャデラック リリック スポーツ

価格1100万円〜
全長 × 全幅 × 全高4995 × 1985 × 1640(mm)
フロントモータースペック170kW/309Nm
リアモータースペック241kW/415Nm
一充電走行距離510km

キャデラック
リリック
問 GMジャパン・カスタマーセンター 0120-711-276

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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