ジツは隠れた名車
キャデラックXT4スポーツに試乗!!


らしさを持つコンパクトSUV

アメ車ってデカくて大味だからなぁ、と思っていたらそれは少しだけ違う。個性を捨ててヨーロッパのプレミアムブランドっぽくしてる? いやいや。ジツは隠れた名車、しかもコスパ抜群のモデルがある。

それはキャデラックブランドからリリースされているXT4だ。最上位のエスカレードは往年の(大排気量とでかいボディと踏まなくても加速する大トルクなどなど)アメ車らしさを残しているがXT4は少しばかりベクトルが違う。

世界的モダンと言いましょうか、最新の中にもキチンと個性が残っていたのだ。キャデラック120年以上の歴史は伊達じゃない。

大磯で行われる日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会でシートをゲットしたクルマはXT4スポーツ。XT4には他にもプレミアム、プラチナムと2グレードあるが、このグレード体系はお安いから装備を省いたとか、お高いから装備テンコ盛りというのではなく、クルマのキャラクターによるベクトル違いと思った方が良さそうだ。

ちなみにスポーツ専用の装備としては電子制御の可変式ダンパーやフロントシートのサイドサポートが電動調整式になっている。

デザインは最新のキャデラックのアイデンティティ化した縦長のヘッドライトが特長的。余談だがリア右上にある350Tのロゴは同車の最大トルクを表している。

充実装備はライバルを凌駕する?

インテリアはさすがキャデラック! と膝を叩く豪華なモノ。これは同じカテゴリーのヨーロッパプレミアムブランドとは違う。やはりキャデラックは豪華だ。ステアリング位置は左のみ。

しかしながら筆者は左の方が運転しやすい気がする少数派。今やETCが普及しているし、駐車場のゲートだって左ハンドル用がある。唯一、気を使うのは停止している路線バスなどを抜く時くらい。

運転席は意外にスポーティ。もっと大柄でふかふか感を全面に押し出しているのかと思ったがXT4スポーツのそれは違った。それでいて快適装備の類も充実している。

後席左右を含めた全席シートヒーターは全グレードに標準装備。シートベンチレーションやマッサージ機能は前席に標準装備。もちろん分割可倒式を採用していても後席の足元はかなりスペースがある。まさに大陸を移動する国のクルマだ。トランクスペースも広い。

驚異的なダウンサイジングターボ

エンジンは2リッターの直4ターボ。今や「アメ車」も2リッターエンジンをごくごく普通に載せている時代である。加えてそのターボもツインスクロールとかなり凝ったモノ。そのユニットのスペックは230PS、350Nm。

このエンジンは日常使うくらいの低回転域からでもレスポンスがいいのが特長。最大トルクもわずか1500rpmから発生し、4000rpmまでそのトルクが持続する。

つまり、踏めば十分な加速を味わえるし、高速巡航時などはうまくパーシャル域(アクセルを踏んでも離してもない状態)を使うことで燃費を稼げる。

しかもこういった低負荷時には4気筒のうち半分の2気筒を休止して燃費効率をあげているのだ。定速巡航している時は4気筒か2気筒かわからないくらいスムーズ。その切り替えはどんなモノかと何度かラフにアクセルを操作しても全くわからなかった。

しかも踏み込めば6000rpmまで一気に吹け上がる気持ち良さもも兼ね備えている。恐るべしキャデラック。100km/h巡航時の回転はおよそ1500rpm。そうこの回転域で最大トルクがあるのだ。やはり大陸を優雅に移動するお国柄なのだと思う。

ジギルとハイド的な使い方が可能

高速のみならず国道での定速巡航ではラミネート遮音ガラスや搭載されているアクティブノイズキャンセレーションがもたらす室内の静粛性の高さが魅力。スポーティながらもサポート感たっぷりのシートでの移動はやはり高級車ブランドのそれだ。

その味付けはドイツのブランドとも北欧のブランドとも少し違う。日常の中の高級感と申しましょうか。ドイツ車はアウトバーン向けのセッティングだし、北欧のそれはドイツ車っぽくスポーティさを混ぜながらも乗り心地重視。キャデラックは巡航重視的な雰囲気だ。

かといって曲がるのが苦手か、と聞かれればそれも違う。このサイズが率先して向きを変えてくれる。特にドライブモードをスポーツにしておけばハンドリングも楽しい。キャデラックってこんなに良かった? と思ってしまった。

確かにCTS-Vなんてのもあったけど、あれは特別。それにコチラはSUVなのだ。ドライブモードはツーリング、AWD、スポーツ、オフロードの4つ。「オート」はないので普段はツーリングで走るモノと解釈。ツーリング選択時のみ2WD(前輪駆動)になる。

クネッた道ではスポーツ、雨天や雪ならAWDだろうか。好みの範囲と思うが、ブレーキのフィーリングはスポーツカーっぽくガツン! ではなくモサモサ〜な感じだ。効き自体はしっかり制動してくれるから安心だけど。

XT4でそこまでスポーティになったら別のクルマになってしまう。ビートルズではなくプレスリーなのだ。ホテルからキャンプ場まで似合うSUV、XT4は689万円から。

キャデラックXT4スポーツ


価格 769万円から
全長×全幅×全高 4605×1875×1625(mm)
エンジン 1997cc直列4気筒ターボ
最高出力 230PS/5000rpm
最大トルク 350Nm/1500-4000rpm

キャデラック
https://www.cadillacjapan.com/
問 GMジャパン・カスタマーセンター 0120-711-276

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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