全モデルマイルドハイブリッド化 BMW・X3 M50 xDriveに試乗!

世界で一番売れてるBMW

毎年2月にメーカーが推しの一台を持ってくる日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会。今回はドイツのエンジン屋としてファンが多いBMWからSUVのX3をチョイス。ジツは同モデル、BMWの屋台を支える大黒柱でもあるのだ。

現行モデルは2024年にデビューし、X3の系譜では4代目となる。エクステリアは最近のBMWらしく大きなキドニーグリルが特長的で、このグリルはイルミネーション内蔵でライトに連動してフチが光る仕掛けもあるのだ。

パワーユニットはすべてマイルドハイブリッドを採用しディーゼル、ガソリンそれぞれ直4をメーンとして、BMWといえば! の直6ガソリンもラインナップに加わる。

インテリアはメーターパネルからセンターのディスプレイまで一体化したBMWカーブドディスプレイ採用。コレはブランドのフラッグシップサルーン、7シリーズに通じ、高級感と先進性を感じさせてくれる。

さて試乗車はX3の中でもスポーティ色が濃厚なM50 xDrive。運転席に収まるといたってシンプルなデザインは今流ってやつか。使い勝手は別としても物理的なスイッチが少なく、スマートな印象。センターコンソールはシフトレバーが姿を消してツマミ状のシフトセレクターに。

ステアリングには当然パドルが設置されておりスポーツ走行時にはハンドルから手を離すことなくギアチェンジが可能。そしてこのパドルの左側にはブーストモードなる仕掛けがあって、長く引くと10秒間だけパワーとレスポンスがアップする。運転席からシームレスに繋がったセンターディスプレイのインフォテインメントシステムは先代までの「Apple CarPlay」オンリーから「Android Auto」にも対応するようになった。

一方、後席は4:2:4の分割可倒式採用で、使い勝手のほかスペース的にも十分以上。かなり広く大人4人での長距離も快適な印象。3ゾーンのオートエアコンは全モデル標準装備と快適性も高い。

激辛とマイルドのはざまにあるカレー?

スポーツ色の濃いグレードだけあってM50は走り出しからかなりスポーティ。BMW流のシャープなハンドリングはノーマルモードでも味わえる。ノーマルモードでも十分なくらい。乗り味はドイツ車的なやや硬めなフィーリングだが、先代より随分と角がとれた印象だった。

今はそんなではないけれども「ドイツ車は高速なら乗り心地がいい」と言われるなか、M50は幹線道路での巡航速度域からちょうどよくなってくるのに驚いた。

そして高速道路ではアイポイントの位置は高めながら、快適で安定した走りはさすが。その時も車内の静粛性は高い。早い話が快適な移動体なのだ。

エンジンはマイルドハイブリッドを組み合わせた3リッターの直6ターボ。モーターのスペックは18PS、200Nm。エンジン単体では381PS、540Nm。元々の出力もあるので低速、低回転域でも加速には困らないが、軽く踏み込んだ時は数値以上にパワフルな加速感を味わえた。5辛カレーの中で唐辛子を食べた時のようなモノだろうか。

草原を撫でる風のようなスムーズさで回るエンジンは「あ、このあたりがターボラグってやつ」を微塵も感じさせない。おそらくマイルドハイブリッド化されたことでそのあたりのネガが消されていると思う。

ミッションはX3全モデルに8ATが組み合わされる。このミッションが相性抜群、白米に明太子といった具合で、シフトの上げ下げでの微妙なショックも皆無だった。真っ直ぐの加速でさえ気持ちいい。筆者が唯一気になったのはDやRレンジに放り込んだ時は一拍置く感じだった。

モーターやターボを装着しているけれど直6はBMWの心髄。それはアチラコチラで言われるが滑らかな回転フィールのシルキーシックスの異名を持つ。それはSUVモデルに搭載されていようと変わることはなく、回せばパワーの盛り上がりを伴い滑らかに回転が高まっていく。特に4000rpm以上は絶品だ。マニアックな話で恐縮なのだが、このユニットはB58型エンジンと呼ばれ、世に出たのは2015年。2016年にはアメリカのWardsAutoにおいて世界ベスト10エンジンに選出されたこともある名機。なぜこんなに気持ちいいのか。

それは直6の構造とブランドの歴史にある。まず直6が完全バランス型エンジンだから。一列に並んだシリンダーがお互いの慣性力と偶力を打ち消すようになり、低振動でスムーズな回転を実現することができる。しかし弱点もある。ユニット自体の長さがありシリンダーが垂直なために重心が高くなりがち。そこでBMWは搭載位置を極力キャビン側に持っていくことで運動性能を高めている。

そしてもう一つのブランドの歴史だが、BMWは1916年から1世紀以上直6を作り続けてきたメーカーであるからして。もはやブランドの象徴でもある。諸説あるがシルキーシックスの由縁となったのは、1968年の初代6シリーズに搭載されていたビックシックスと呼ばれる3リッターか3.5リッターの直6といわれる。パワーユニットにこだわるのがBMW流。なんといっても同社はバイエリッシュ・モトーレン・ヴェルケ、つまりバイエルンの内燃機関製造工場という社名であるからして。

思わずニヤけるクルマ

名機B58型を載せている個体ならクネった道に行かねばならない。そこでどデカいディスプレイからスポーツモードを選択。するとあからさまに足回りが引き締まり、ハンドルの手応えも増す。さらにスポーツモードの上をいくスポーツモードプラスにした日にはサーキットを攻めたくなるくらいのエンジンレスポンスにうっとり。自分の気持ちをミリ単位で逃さない。

室内にはメタルバンド系のような重低音のエンジンサウンド。スピーカーから流れてくる演出の疑似音でもあると分かっているのだけれど、テンションは上がる。

右へ左へと切り返しの続く山道。まずコレだけアイポイントが高いのに路面にレールがあるかの如く、が気持ちいい。見た目は重そうなのだけれど、走らせると重さは感じないどころか、むしろ想像以上に軽い。

さらにブランド独自の4輪駆動技術、xDriveが車速やステアリングの舵角、路面からのインフォーメーションなどを判断して駆動トルク配分を最適化させてくれる。その可変域はフロント0:リア100のFR状態から50:50の4輪駆動とお楽しみ系から安定系まで幅広く、筆者のような「気分だけ速いつもりドライバー」でも不安なくお楽しみ可能。もちろんM50に装備されたアダプティブMサスペンションの恩恵もある。

実用でなく、活動的なの

BMWはSUVとはSAVという。まさに言い得て妙。日常域でもアクティビティに走れるのだ。運転して楽しい、ブランドの血脈はこの手のモデルでもキチンと受け継がれている。マルチに使えてブランドの真髄を味わえるクルマをお探しの皆様、M50という選択肢はどすか?

BMW X3 M50 xDrive

価格1008万円〜
全長×全幅×全高4755×1920×1660(mm)
エンジン2997cc直列6気筒ターボ
最高出力381PS/5500rpm
最大トルク540Nm/1900-4800rpm
WLTCモード燃費11.9km/L

BMW
X3
問 BMWカスタマー・インタラクション・センター 0120-269-437

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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