


CASE01でもご登場されている窪川勝哉さん。自宅と同じ区内に別邸を所有し、アトリエとして活用している。5年前に出会ったというその別邸は、じつは希少な建築だった。ヴィンテージハウス好きのインテリアスタイリストの心を射止めた究極の家とは?
写真/青木健格(WPP) 文/杉江あこ

家を買うと決めた理由は?
自分が購入することで、前川國男建築を後世に残したいと思った。現代の暮らしに合わせてリノベーションすることで、資産価値を上げる努力もした。

建築史に残る家をリノベして価値を上げる
なぜ、わざわざ同じ区内に別邸を? という疑問は、この家が、建築家の前川國男が昭和32年に設計したテラスハウスであるからと聞いて納得。当時建てられた3つのうち、ここがもっとも古く、唯一現存するテラスハウスなのだという。そんな希少な家に出会えたのは、窪川さんが不動産情報サイトを日々チェックするのが趣味だったからだ。
「前川國男建築の家が売り出されていると知って、翌日すぐに問い合わせて即決した」と、そのときの出会いに興奮を隠せない。購入後、自分でプランを練ってリノベーションを楽しんだ。ポイントは当時の家の佇まいを残しながらも、現代のライフスタイルに合わせて内装を大胆に変更したことだ。
まず2階にあった四畳半の和室一間をくり抜き、吹き抜けにして、天井の低さから来る圧迫感を解消した。1階奥に増築されていた和室は床を一段上げてダイニングルームとつなぎ、コバルト色のカーペットを敷いてモダンな印象へと変えた。「この家と同時代にデザインされた家具を中心に組み合わせています。ただし最新家電を置いても浮いてしまわないように、一部、モダンな家具も取り入れてバランスを取った」と解説する。
現在はアトリエとして活用しているが、ゆくゆくは「終の住処にしたい」というのが窪川さんの希望。そのために1階にクローゼットを充実させるなどの工夫も凝らした。






ル・コルビュジエに師事し、日本の近代建築を牽引した建築家の前川國男が、日本住宅公団からの依頼で昭和30年代に設計した長屋形式の集合住宅のひとつ。現存する唯一の建築。