昨年11月3日に公開された『ゴジラ-1.0』が、日本アカデミー賞で最優秀作品賞含む8冠を達成、さらに米アカデミー賞では視覚効果賞を受賞した。ゴジラがアカデミー賞の本場に上陸、『ザ・クリエイター / 創造者』や『ミッション・インポッシブル / デッドレコニング PART1』などの強力なノミネート作品を退けての受賞を果たしたのである。半年前の自分に言ったら、妄想と現実の区別がつかなくなったのかと心配されそうなほどの、ゴジラファンにとっては悲願の快挙である。受賞講評によると、ストーリーと視覚効果の相乗効果に評価が集まったとのこと。ノミネート作品の中で比べれば破格に少ない予算で生まれたVFXがこうして評価されたわけだが、この受賞でさらに予算が増えて現場が充実し、もっと凄い日本産の映像を見られるきっかけになる事に期待したい。
文・タカハシヒョウリ
さて、そんなわけでゴジラフィーバーである。猫も杓子もゴジラ……となっているかはわからないが、劇場へ向かう人の数も爆増し、先週比1000%とか1800%とかいう界王拳のような倍率を記録している。公開から5ヶ月経つ映画で聞いたことのない数字だ。
そんなフィーバーを祝って、3月20日にキャストの神木隆之介さん、浜辺美波さん、青木崇高さん、吉岡秀隆さん、佐々木蔵之介さん、そして山崎貴監督が登壇する「『ゴジラ-1.0』アカデミー賞受賞記念大ヒット御礼舞台挨拶」が催された。
割れんばかりの拍手を浴びながら、山崎監督はオスカー像を握りしめての登壇。神木くんは「世界のタカシ〜!」と山崎貴監督の名前を呼びながら登場し、水島さんは「世界最高の舞台挨拶へようこそ!」と会場を盛り上げる。キャスト一同と観客で「世界のタカシ、おめでとう〜!」とお祝いの言葉を監督に送る一幕も。一連の『ゴジラ-1.0』のプロモーションの流れの中で、神木くんや浜辺さんが山崎監督を「世界のタカシ」と呼び、山崎監督がニコニコで「やめてよ〜」と抗う場面が多数見られるようになった。超キャリアの大御所監督であることを思うと本当に不思議だが、おふたりによるとそういうノリも楽しんでくれる懐の広さが山崎監督にはあるとのことだ。神木くん曰く「世界のタカシ」の次は「宇宙のタカシ」とのこと。
お祝いの言葉を受けた山崎監督は「まさかこんな結果が待っているとは思わなかった。(オスカー受賞の)瞬間は頭が沸騰しそうだった」と喜びを語っていた。
アカデミー受賞への反応の大きさをそれぞれが語る中、浜辺さんが「(受賞の可能性は)五分五分と聞いていたんですけど、大人の方が言う五分五分って20%くらいだろうなと思っていたので、受賞した時は本当にビックリして」と独特な価値観を吐露。吉岡さんは受賞したことを知らず、いつも使っているコンビニの店員さんに「おめでとうございます!」と言われて初めて「獲ったんですか!?」と受賞を知ったという。
このあと、キャスト陣がひとりずつオスカー像を受け取る流れになり、誰もがその重さに驚きを見せる。山崎監督は、「意外と重いんですよ。バックヤードでいろんな取材を受けるんですけど、毎回(オスカー像を)持ち上げてくださいって言われるんです。最初はウェーイ! って片手で持ち上げてたんだけど、だんだん腕が上がらなくなってきて(笑)」と、オスカー受賞者しか知らない苦労を語る。ちなみにオスカー像の置き場所については、「僕の個人賞ではなく白組(VFXチーム)が取った賞なので、白組に置くことになってます」とのこと。
アカデミー賞での英語のスピーチについては、「事前に書いておくくらいには(受賞を)期待していたんです。日本語で書いて翻訳してもらったんですけど、ちょっと違うかなと思って書き直したりして、一回も通しで読んでなくて。慌ててるから字も汚くて、あわわわってなりながらのスピーチだったので、発音がひどくて色んな人にいじられましたけど(笑)。でも、みんなめちゃくちゃ優しかったです」と裏話を披露。
さらに、質問に答えて山崎監督から明かされたスティーブン・スピルバーグ監督とのエピソードは、感動的なものだった。スピルバーグ監督は、『ゴジラ -1.0』を自宅のシアター、IMAX、Dolby Cinemaで三度も見るほど気に入っているという。「(スピルバーグと会った時に)ゴジラのフィギュアを持っていたんですけど、凄い欲しそうに見ながら『それどこで買えるのか?』って聞くんですよ。『一番くじって言って、くじだから買えないんですよ』って説明して、A賞とラストワン賞のふたつを持ってたんですけど『どっちか要りますか?』って聞いたら、凄い悩んでA賞を選んでました。だからスピルバーグの家にはA賞があるんです(笑)。スピルバーグの心の中にまだ少年の気持ちが残ってるんだなーって、すごく嬉しかったですね」
山崎監督はスピルバーグ監督を「神様」と呼ぶほどの大ファン、その「神様」が自身の作品を何度も繰り返し見たと聞いた時はどれほどの感動だっただろうか。想像するこちらまで感動してくる。ちなみに、一番くじのゴジラフィギュアは個人的に『ゴジラ -1.0』関連の造形物の中でも出色の出来だと思うので、スピルバーグお目が高い!
こうして様々なエピソードを披露した舞台挨拶は、山崎監督の「『ゴジラ-1.0』を好きになっていただき、ありがとうございました!」という感謝の言葉で幕を閉じた。
各地では『ゴジラ-1.0』の上映が活性化し、過去のゴジラシリーズの商品も続々と登場、そしてハリウッドから『ゴジラxコング 新たなる帝国』がやってきた! このゴジラフィーバー、まだおさまる気配は無い……!
タカハシヒョウリ
ミュージシャン・作家。ロックバンド「オワリカラ」、特撮リスペクトバンド「科楽特奏隊」のボーカル・ギター、その様々なカルチャーへの偏愛と造形から執筆、番組・イベント出演など多数。
近年は、円谷プロダクション公式メディア連載やイベント出演、ポケモンカードCM音楽制作なども担当。
Xアカウント @TakahashiHyouri
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