ギア感全開がカッコイイ ルノー・カングーに試乗!

オリンピアンカングー!?

今年はオリンピックイヤーで、開催地はフランス・パリ。もしクルマにもオリンピックがあって荷物を運ぶ長距離走があったならメダリスト候補になりそうなのが、カングーだ。しかもカングーの人気は日本ではかなり高い。カングーだけを集めるイベント「カングー・ジャンボリー」も今や海の向こうのメディアが逆に取材に来るほど。もはやフランスに逆輸入するほどのカングーカルチャーを日本は作ってしまったのだ。

人気の秘密は使い勝手の良さに愛らしいデザイン、商用モデルながらもフラ車らしい乗り心地などなど。1BOXみたいな便利なクルマは欲しいけれど、人とかぶるのはちょっと、そんなユーザーに受けているのも事実。その人気と使い勝手を探るべく本誌2月2日号に登場したカングーに試乗した。

用途に応じるイノセントカー

カングーは本国ではコマーシャルカーとして活躍するクルマ。そのため丈夫なボディを持ち、荷物を載せての長距離も難なくこなすように作られている。フランスにはもともとこういったコマーシャルカー、つまり商用車と乗用車のハーフみたいなクルマがあった。

例えばルノー・キャトルの後ろ半分がバンモデルになっているとか。それはシトロンの2CVにもプジョー205にもあった。これは細い路地が多いフランスの「配達お国事情」なのだろう。日本ではルノーが昔正規輸入したエクスプレスがその生物学上の(?)分類になる。

しかし。オトナの事情で考えると商用車はモデル年数が長い。ベースとなったモデルが代替わりしてしまうと、逆に元となったクルマのストックパーツとして専用部品を作らねばならずコスト的にはよろしくないのではないか、と良識ある経営陣が考える。そこでエクスプレスがモデルチェンジした際に独り立ちさせるような形でできたのが初代カングーなのだ。日本でもなんとなく緩い雰囲気やフランス車らしい味付けが受け人気の土台を作った。

2代目は衝突安全基準やライバルに出遅れた積載性改善の側面もありクルマ自体がデカくなった。そそこでデカングーと揶揄されたことも。しかしそれはフランス的な愛情表現なのかもしれない。実際の使い勝手や乗り味など正常進化したクルマの出来もあり、その人気は衰えることはなかった。

ファンを裏切らないルドスパス

そして現行モデルである。先代までのどこかファニーで愛らしい脱力系癒し顔のフロントデザインは「キリっ!」と効果音が聞こえそうなスタイリッシュなモノ。しかしながら、うーむ、癒し系と言われる先代のデザインと変わっているのはボンクラな筆者もわかるのだがカッコよさの中にある癒し系とでもいいましょうか、程よいユルさを感じるフラ車的雰囲気はキチンと残っているような気がする。

現行モデルのコンセプトはルドスパスという。ルドスパスとはLUDOS(ラテン語で「遊び」の意)とESPACE(フランス語で「空間」の意)の造語で遊びの空間を表している。まさに言い得て妙でトレビヤーンなのだ。

日本に導入されたグレードは大きく分けてクレアティフとインテンスのふたつ。よりベース車らしさを持つ簡易装備のゼン(ガソリンエンジンのみ)は受注生産に。クレアティフは日本専用モデルで、豪華装備を持ちつつも樹脂製のバンパーなどより商用車っぽく仕上げたクルマで、日本のファンが理想とするカングーになっている。お値段の方はインテンスもクレアティフも同じなので好みの問題。

らしさ全開の使い勝手

試乗車は200台限定のヴァリエテ。それはワークブーツの老舗「ダナー」ブランドとのコラボモデルで、ワーキングビークル素性のカングーはギア感の中にオシャレさを感じる面でも相性が抜群。特にあえてギア感あふれるエクステリアはなんでも日本のユーザーからの希望で採用されたとか。またダナーのブーツにもヴァリエテのカラーをイメージしたコラボブーツがある。こちらのベースはアイコンモデルでもあるWASHOUGALだ。

話はカングーに。ドアを開けると限定車だけに装着されるグリーンとブラックのCABANA製の専用シートカバーがカッコイイ。しかも奥さん、コレってビニールレザーなので汚しても手入れしやすいんですよォと思わず通販番組のMCみたいに言ってしまいたくなるほど似合っている。

もちろん前席のオーバヘッドコンソールは健在だし、左右後席のスライドドアも採用されている。後席は3席独立式。これは個々人のスペースが確保されるほかピクニックテーブルまでと至れり尽くせりの使い勝手。さらに後席を折りたためば広大な荷室どころかベッドルームや茶室として使えそうな空間になる。その荷室はタイヤの出っ張りなどもない。筆者がイチオシしたい箇所はメーターナセル上の収納。内部にUSBがあるほか、スマホホルダーもあるのだ!

またカングーの特長でもある観音開きのバックドア。ジツは本国では郵便配達車など純商用モデルにしか用意されない装備なのだが日本市場の要望を受け本国が特別に採用したいわば日本向けなモノ。

健康志向の「薄味」?

使い勝手はカングーらしいけれど、フラ車らしい独特の味わいはどうなのよ、と夜な夜な酒場で聴く終電間際の禅問答的会話だがそれはご安心を。一見変わった、いや個性的なデザインに見えるけれどジツは理にかなったボディ(デザイン含め)や傾きつつもよく粘るサス、回すとウルサ、いや元気よく回るエンジンなど昨今のワールドワイドな風潮にも配慮しつつ感じられるのがカングーのいいところ。特に乗り心地については足の柔らかめな商用モデルから大きく変わった感じがした。ルノー曰く現行モデルはLCV(Light Commercial Vehicle=小型商用車)をベースに乗用車にしたモデルで現行モデルはより乗用車的になった、という。

加えて専門誌的表現ならば、ルノー、日産、三菱によって開発されたミドルクラス用のプラットフォームを採用したので、より乗用車的要素が高まっているのだ。余談だがこのプラットフォームは日産ではエクストレイル、三菱ではアウトランダーに使われているモノ。さらに深く掘れば一部分だけだが、ルノーブランドのトップミニバン「エスパス」と同じサスペンションメンバーを採用。

また現行モデルに用意されたパワーユニットはガソリンとディーゼルの2つ。試乗車のヴァリエテには1.3リッターのガソリンターボが搭載されていた。このガソリンエンジンはメルセデス・ベンツと共同開発ユニットで、ルノーブランドでも多くの車種に載っている。そのスペックは最高出力131PS、最大トルク240Nmというモノ。

乗用車らしさはインテリアにも見られ先代の若干プラスチッキー、いや商用車っぽい質感から大きく変わり、クロームパーツなどを使ってしまうほど乗用車チックに。さらにセンターコンソールに有ったL字型のパーキングレーバは姿を消し、なんと電動パーキングになった。安っぽ、いやシックを身上とするカングーが、である。(編集部注:まったくこじらせたフラ車好きって……)

走り出せばしなやかな足回りで抜群の直進安定性を誇るフラ車の味は残っていた。ヴァリエテもその例に漏れず路面状況の悪い道でも安心して速度を増すことができる。乗り心地は先代と大きく変わった、と言っても過言ではないほどと思う。特に後席はダンチ。自分が荷物になった気分でも現行モデルは優しい乗り心地で運ばれるならこのクルマを指定したい! と思うほど。それでいてワーキングビークルとしては最大積載量が先代の850kgから1000kgに増えるなど完璧なのだ。

クネッタ道では上記のようなフトコロの深い足回りに加えてステアリングレシオの変更もあり、よりクイック傾向になったことも乗用車チックで楽しいどころか、全高1810mmの背の高いクルマだったことを忘れさせてくれるほど。これが60サイズのタイヤというから恐れ入る(編集部注:ガソリン、ディーゼル共通の205/60のタイヤは16インチ)。

湿式の7速デュアルクラッチのEDCの電光石火のシフトダウンがこれまた気持ちいい。元来ラテン系のクルマは回してナンボのエンジンが醍醐味の一つ。きっと同じ速度での巡航ではディーゼルの方が楽チン確実と思われるけれど、この上げ下げを体感してしまうとフラ車ってこれだよね、と思ってしまう。イタ車のエンジンと似たようで違うベクトルの気持ちよさだ。

もちろん最新のクルマであるからしてADAS(先進安全性能)は「乗用車として」設計されたアルカナやキャプチャーに引けを取らないモノだし、エマジェンシーレーンキープアシストと後側方車両検知警報は日本導入のルノーとしては初というオマケ的要素も魅力。

現行のカングーは384万円からという輸入車としては手の届きやすいプライスも魅力。趣味性も高いし普段使いもラクショーという万能選手ではないか、と思う次第。濃厚だと胃もたれしそうな味付けも最近の健康志向で薄味になったけれど「らしさ」は健在どころか、むしろクセになりそうなのだった。

カングー・ヴァリエテ


価格419万円から
全長×全幅×全高4490×1860×1860(mm)
エンジン1331cc直列4気筒ターボ
最高出力131PS/5000rpm
最大トルク240Nm/1600rpm
WLTCモード燃費15.3km/L

ルノー
カングー
問ルノーコール 0120-676-365

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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