織本知之のデジカメ紳士録
パワーはすべてを解決する
【富士フイルム/GFX100 Ⅱ】


モノ・マガジン誌の長期連載「織本知之の電子写真機恋愛」がいよいよモノWEBに登場! 最新機種から懐かしのレトロ機種まで、掲載当時の熱量真空パックでお届け。誰もが立ち寄れる「デジタル一眼レフ、ミラーレス一眼情報の道の駅」だぞ!

写真と文/織本知之

FUJIFILM GFX100 Ⅱ

富士フイルム/GFX100 Ⅱ

こんなトコロに戀をする!

完璧なプロポーション

左肩には撮影モードダイヤルが配置され、右肩のサブ液晶は視認性に優れて全体としては撮影業務で使用する際にミスの起きにくいGFX100 Ⅱの優れた操作性。かっちりしたボディラインにしっかりとしたグリップ、滑りにくい表面のテクスチャーなどプロ機種として申し分ない。が、個人的にはあとほんのすこしの色っぽさをぜひ。

アオリはいかが? とレンズが煽る

ものすごくかっちりと造りこまれた美しいシフトレンズがフジノン GF30㎜F5.6 T/S。建築物などのパースをきっちり撮影したり、被写界深度をコントロールするためのシフト、ティルトのノブの調整感覚も素晴らしく、レボルビング機構の滑らかな作動。レンズ好きが到達するひとつの頂点がここにあります。描写ですか? もちろん非の打ちどころ一切無しの素晴らしさ。

1億200万画素大画質。実力の片鱗

素晴らしい夕焼けです。おっと日没の太陽の下になにか?……中央部分を拡大してみましょう。
GF55㎜F1.7 R WRレンズ 1/240秒 F5.6
ISO80 画像サイズ11648×8736

中央を拡大して1億200万画素分の200万画素。小さいカットならこのままイケそうな写真が切り出せました。おそるべし1億画素。

こんな寫眞に戀をする

フジノン GF30㎜F5.6 T/S/価格69万9600円

2m超の高さの迫力ある金剛力士像をアオリ撮影し、像の全面にピントをしっかりと合わせた写真を撮ってみました。1億画素の画像データは駅に掲示する巨大なポスターの印刷にまわせるほどのクオリティをもっており、その写真の含む情報量は圧倒的です。35㎜判換算で約24ミリ相当のワイドな映像をもたらすこのティルトシフトレンズとGFX100 Ⅱは芸術面だけに留まらず、貴重な文化財の記録映像など様々な分野で活躍してゆくと思います。

【撮影DATA】
シャッター速度:1/3秒/絞り:f8/撮影感度:ISO400/フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド

GF55㎜F1.7 R WR/価格40万2600円

フィルター径77ミリ、最短撮影距離0.5m、レンズ構成10群14枚、質量780g、絞り羽根11枚の解放絞りF1.7の極めつけに高性能なこのレンズ、GFX100 Ⅱでは換算約44ミリ相当の準標準レンズとしてとっておきの描写を与えてくれるに違いありません。絞り解放から最小絞りのf22まで画面全域でシャープで透明感を感じるこの画質に惚れ惚れします。多くの写真家を魅了するフィルムシミュレーションに「REALA ACE」も加わって、より一層魅力的なシステムになってきましたGFXシリーズ。

【撮影DATA】
シャッター速度:1/2000秒/絞り:f1.7/撮影感度:ISO400/フィルムシミュレーション:REALA ACE

GFX100 Ⅱを使ってみた!

富士フイルムより最強のカメラが登場いたしました。

このGFX100 Ⅱは44㎜×33㎜のラージフォーマットセンサーを搭載するGFXシリーズの最新機でございます。このカメラの記録画素数は1億200万画素。

一瞬「1億だって? そんな莫迦な……」と思ってしまう数値です。念のため再度申し上げますと記録画素数は1億200万画素です。このカメラは高画素でっす! いやこっちもなかなかの高画素モデルだ! と4500万画素や5000万画素レベルの高画素が争うのを横目に富士フイルムは2019年に一気に1億画素の世界に踏み出しました。このGFX100の後継モデルが今回のGFX100 Ⅱでございます。もはや画素数だけで最強最高峰ということがわかりますね。

GFX100 Ⅱの凄い点はこの巨大な画像を迅速軽快な撮影性能でカバーし、ぶんぶん振り回せるカメラに仕上げてきたトコロです。戦車でいえばアメリカ軍のM1A2エイブラムスみたいなもんです。無敵無双。

ではGFX100 Ⅱの武装……じゃなかった、性能を解説してゆきましょう。

まずはこの1億200万画素の画像をX-H2シリーズより採用された新画像処理エンジン「X-Processor 5」でコントロール。常用ISO感度は従来機種より下げられISO80からスタートし、拡張時にはISO40相当の減感も可能で精彩で細やかな撮影をする写真家には朗報。最高ISOも拡張時ISO102400とし低ノイズでより広いダイナミックレンジでの撮影が可能になり、こちらの高ISO感度の画質向上はなんでもかんでもISOを上げたがる私のような雑なカメラマンにも朗報。

「あなた、三脚使いなさいよ」という正しいご指摘にはGFX100 Ⅱの5軸のボディ内手ブレ補正は一気に8.0段分も向上したんだもんね、と返答したく存じます。ラージフォーマットセンサーでシャッター速度1秒でも1/250秒並みの歩留まりという絶大効果。

この最強カメラに組み合わせる最強レンズはずばりGF55㎜F1.7 R WRをぜひお試しください。35㎜判に換算すると約44㎜のフレーミングは標準レンズ的な性格ですが、このほんのちょっとワイド寄りというのがいいのです。少しだけ前のめりにモチーフに近づく意欲がより美しい写真にさせるのです。

そしてこのレンズの豊かなボケは光学性能と35㎜フルサイズをはるかに超えるラージフォーマットサイズゆえ。とろけそうなアウトフォーカスの描写にアナタの心もきっととろけてしまうことでしょう。レンズとボディで財政もとろけそうになるやもなのでご購入は計画的に。

そしてもう1本ご紹介したい完全無欠のプロ仕様レンズがGF30㎜F5.6 T/S。

このティルトシフトレンズにつきましては万人に向けて矢鱈とおススメできるシロモノではございません。が、しかし必要とされている写真家様におかれましては大歓迎で導入するであろう業務用レンズなのです。

ティルト機構でピントの被写界深度をコントロールし、シフト機構でパースの調整、被写体の歪みを補正して建築物や室内空間などをきっちりと撮影できるいわゆるアオリ撮影が可能なこのレンズの調整幅はティルト ±8.5°、シフト±15㎜。±90°のレボルビング操作と、ティルトとシフトの移動方向を0°~90°の範囲で設定できるT/Sレボルビング操作のふたつのレボルビング機構も備えております。何を言ってるかわからないと思いますが僕も必死なのです。

ものすごくざっくり説明すると昔々、4×5インチなどの大判カメラで布被ったプロ写真家が行っていた撮影技術を現代のラージフォーマットデジタルカメラで可能にしたと思ってください。シビアな撮影を要求される各方面から大喝采で迎え入れられるであろうレンズでございます。

一般的とは言いにくい価格帯のカメラではありますがその圧倒的な画質と性能は異次元レベルです。職業写真家がGFX100 ⅡとフジノンGFレンズを自在に操れるようになると写真の失敗などの悩みは消えて無くなります。その代わりにインボイス制度が悩みどころになってくるでしょうけども。どっとはらい。

※本企画の情報、コメントはすべて、機種発売当時のものです。ご了解ください。

  • フォトグラファー。1972年千葉県出身。1999年平凡社動物写真アニマ賞の最年少にして最後の受賞者、撮影テーマは「ニホンザル」。以降、カメラ誌、情報誌、タウン誌、ミリタリー誌など幅広く撮影・執筆。私鉄協会誌「みんてつ」表紙などを長年担当。monoマガジンではこれまで150機種300本を超えるデジタルカメラ、交換レンズをレポート中。甘党下戸。You Tubeの「サバ三ちゃんねる」@sabasan 鋭意更新中!

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