眼鏡界の巨匠ジャック・デュランのDNAを受け継いだ若きイタリア人女性とは?


坂本龍一氏も愛用する個性派アイウェア『ジャックデュラン』

ボリューム感のある無骨なフォルムに、エッジを効かせたカッティングで、いまジワジワと人気が増している『ジャックデュラン』。音楽家の坂本龍一氏が愛用しているアイウェアブランドと言えばわかる方も多いだろう。

創業者のジャック・デュラン氏はフランス人で、70年代後半よりヨーロッパの眼鏡業界で経験を積んだ人物。『アラン ミクリ』や『スタルクアイズ』をはじめ、数々のヒットブランドに携わったのち、2010年に自身の名を冠したブランドを設立した。

残念ながら、2022年春にデュラン氏は逝去してしまったが、彼のDNAは新たなデザインチームに引き継がれている。そして、28 歳という若さでチームをまとめるクリエイティブディレクターに就任したのが、イタリア人のEmma Concato(エマ・コンカート)氏だ。2022年秋にパリで開催された国際アイウェア展示会「シルモ」にて、彼女の仕事やブランドの今後を聞いた。

私がジャック・デュランにはじめて会ったのは3歳の頃

――まずは、エマさんのプロフィールやジャック・デュランさんとの関係を教えてください。

「私がはじめてデュランさんと会ったのは3歳の頃です。アラン・ミクリさんの食事会に連れ行かれたときに出会ったのです。彼はブランド設立後すぐに、自分が理想とするものづくりを実現するため、優れた工房がたくさんあるイタリアへ拠点を移しました。その後、私はデュランさんの一番弟子となり、10年間、彼の元で学んだのです」

師の教えは「フレームの美しさはアウトラインで決まる」

――ジャック・デュランさんからはどんなことを学びましたか?

「私が教え込まれたのは、さまざまな観点からものごとを見ることの大切さや、プロダクトを見るときの着眼点です。自分の目で見たものをどのように情熱に変えるのか? その情熱をどうやってデザインやものづくりに落とし込むのか? デザインを進める前のプロセスを大切にするように、と常に言われ続けてきたのです。また、彼はクルマや建築などを含めて、アウトラインを大切にしていました。フレームの美しさはアウトラインで決まる。それがジャック・デュランさんの教えです」

――確かに『ジャックデュラン』のフレームは、無骨ながらも美しいラインが特徴ですね。デザインはどのように行なっていますか?

「デザインするときには必ずスケッチを手描きします。スケッチでフレームのアウトラインを吟味して、デザインに落とし込む。そこからものづくりがスタートします」

――エマさんが見せてくれたスケッチには、眼鏡の玉型がいくつも描かれており、力強いラインや陰影のつけ方は、デュランさんを彷彿とさせるものでした。

レガシーは受け継がれる

――今後、ブランドはどのような道を歩んでいくのでしょうか?

「私たちデザインチームは一丸となって、彼のレガシーを変えることなく受け継いでいます。そのなかで少しずつ新しい要素を取り入れていく予定です。見てください、これらは私たちがデザインした新しいアイウェアです」

――フラットで潔いカッティングやミニマルなフォルムはまさに『ジャックデュラン』ならでは。デュランさんへのリスペクトに加えて、新たな未来への予感をも感じさせてくれます。

「ありがとうございます。デュランさん亡き後も、これまでと変わらない作品をお届けしていきます。日本のみなさん、『ジャックデュラン』は変わることなく歩み続けるのでご安心ください」

ジャックデュランジャパン
☎︎03-6321-1501
https://jacquesdurand.jp/

  • メガネライター。年間1000本以上のアイウェアに触れ、雑誌や広告、WEBなどで企画・編集・執筆を行う。自身のYouTubeチャンネル「メガネ流行通信」では、世界の眼鏡トレンドやデザイナーインタビューなどを配信中。テレビ番組での眼鏡特集の台本構成やアドバイザーも担当する。著書に『ヴィンテージ・アイウェア・スタイル 1920's-1990's』(グラフィック社)。
  • https://www.youtube.com/channel/UC6Kzko785ZS5mPwhkRb0dBg

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