カスタムしながら自分だけの1本に。 “経年進化”する眼鏡「MIZ DIALOGUE」


1本の眼鏡を長く大事に使いたい。そうは思うも、人は変化する。ライフステージや環境も変わっていくし、年齢を重ね外見も変化していく。また、出会う人やモノに影響を受けながら、好みが変化していくこともあるだろう。そんな、掛ける人の変化に寄り添い、共に“進化”できるアイウェアがこのたび登場した。

カスタマイズしながら掛け続けられる眼鏡

「MIZ DIALOGUE(ミズ ダイアログ)」は、昨年11月にデビューしたブランドだ。コンセプトは「経年進化」。購入時だけでなく、購入後もフレームのカスタマイズが繰り返し可能で、掛ける人の“その時”にフィットさせながら、長く愛用することができる。これまでにない、“眼鏡の持続的な楽しさ”を提案しているのが特長だ。

手掛けるのは、アイウェアセレクトショップ「ブリンク」「ブリンクベース」を展開する荒岡眼鏡と、眼鏡産地・鯖江にて貴金属製の高級枠を手掛ける水島眼鏡。ブランドのディレクターを手掛ける、ブリンクベースの田代純一さんはこう語る。

「眼鏡店とお客様との関係性を考えたとき、“買ってもらった後”の楽しさを提案できていない現状に、もどかしさを感じていたんです。アフターケアとして壊れたものを修理する、レンズを交換するといったことはありますが、もう少しお客様とポジティブな関係性を築きながら、眼鏡の楽しさを提案し続けることができたら……と。そうした思いが、ミズダイアログを立ち上げるきっかけとなっています」

パント型の「Quintus」。写真のモデルはマンレイブリッジを採用しているが、一山にすることも可能だ。価格5万1700円

掛ける人の変化に応えるために

これまでも、眼鏡を作るときにある程度のカスタムオーダーができるブランドは存在したが、前述の通り、ミズダイアログは購入後もカスタムできるのが特筆すべき点だ。

「人は、時が経つにつれ内面も外面も変化しますし、趣味嗜好も変わっていきますよね。だから、一本の眼鏡を楽しく、そして長く愛用するためには掛ける人の変化に応えられるべきだと思うんです。たとえば装飾を加えたり、カラーを変化させたり。そうしたカスタムは前向きな進化でもあるので、コンセプトは“経年進化”としています」(田代)

現在、ミズダイアログで展開しているのはラウンド、オーバル、パント、ウェリントンの合計4型。パントとウェリントンは2サイズ展開となっている。掛ける人に寄り添えるよう、ベースとなるデザインは至ってシンプル。素材には白金色に似た光沢を放つ、サンプラチナを使用している。

正円に近いラウンドの型の「Jean」。パッドのない一山式のブリッジで、すっきりとした見た目に。価格5万1700円

このサンプラチナは1930年代に日本にて開発され、チタンが登場する以前まで高級フレームに用いられていた素材。その質感の美しさもさることながら、かつては歯科材料に使用されるなど、身体との親和性に優れているのが特徴だ。耐食性の高さに加え、再加工がしやすいという素材特性も、カスタムしながら使い続けることを可能にしている。

オプションには手彫りの彫金も

カスタムできるパーツは、レンズを囲うリム、ブリッジ、テンプル。さらに表面加工を施すこともできる。リムはサンプラチナの質感をそのまま活かすのもいいが、オプションで七宝やセル巻加工を施せば表情豊かに。ブリッジはノーズパッド付のマンレイブリッジと、一山式の2種類から選べ、テンプルは先端にモダンを付けたり昔ながらの縄手テンプルを選ぶこともできる。

「表面加工には塗装とメッキがありますが、なかでも自由度が高いのが塗装です。ブロウ部分だけ、とか表側だけというのもできますし、テンプルは“合口から何㎝まで色付け”といった細かな指定もできます」(田代)

加えて、たとえば父親が使っていたガスライターなどといった思い出の品を持ち込めば、そのカラーをかなり忠実に再現して塗装してもらうこともできるという。

さらに、眼鏡通にはたまらないのが彫金加工だ。一般的に眼鏡フレームに施される彫金模様はプレス加工によるものだが、こちらはなんと手彫り。職人がフレームに直接刃を当て、模様を彫り込んでいる。その繊細な煌めきは、もはや芸術品の域。要相談・見積りとはなるが、持ち込んだオリジナルの柄を彫ってもらうこともできるのだという。

生産を手掛けるのは高級フレームに特化した鯖江の老舗工場

そんな多様なカスタマイズを可能にするのが、1941年に創業した鯖江の老舗・水島眼鏡の技術力だ。同社は金無垢を加工できる日本でも稀な工場で、その他スターリングシルバー、プラチナ950など貴金属の加工を得意としている。

職人の手仕事と精密な機械を合わせて製造されるそのフレームのクオリティは、世界でもトップレベルを誇る。また、すべての生産工程を自社にて一貫して行なえるため、細やかなオーダーにも対応できるというわけだ。荒岡眼鏡の代表、荒岡俊行さんはこう語る。

「もともと水島眼鏡さんには、老舗眼鏡店のサンプラチナ製オーダーフレームを手掛けていた歴史があります。残念ながらそのお店は閉店してしまったのですが、そうした文化が途絶えてしまうのは惜しいと考えていらしたこともあり、ミズダイアログのコンセプトに共感いただくことができました。ビジネスとしての効率は決して良いとは言えませんが、たくさんの人にこの眼鏡を楽しんでもらえたら嬉しいという思いは、私たちも水島眼鏡さんも同じです」

使い手が作り手の一部を担う、新しい眼鏡の在り方

大量生産が当たり前になり、安価な眼鏡を使い捨てのようにする人が少なくない現在。そんななか、1本の眼鏡を大事に使っていくという提案には深く共感するが、荒岡氏の言うとおりビジネスとしては非効率に感じられなくもない。

「そもそも昔の眼鏡店では、お店とお客さんとで対話を大事にしながら、一点ものを作ったりしていたんですよね。“これからの眼鏡の在り方”なんていうと少し堅苦しくなってしまいますが、まずはカスタマイズできる楽しさを知ってほしいというのが一番ですね。たとえばロードバイクなんかはパーツをカスタムしていきながら、どんどん自分のモノにしていく楽しさがありますよね。そうした楽しみ方が、眼鏡にもあっていいと思うんです」(荒岡)

「眼鏡のデザインって、もうほぼ出切っていると思うんです。このままではどんなに新しいものが出てきても、飽きられてしまうでしょう。だから、眼鏡の楽しみ方を根本から変えていかないといけない。お客さんが店に来て、お店側が仕入れた眼鏡を選ぶのではなく、ミズダイアログのように使い手が作り手の一部を担うようになっていく。そんな新しい眼鏡の在り方を見せていくことで、使い手も眼鏡業界もマインドが変わっていったらいいなと。その一部を、我々が担っていければと思います」(田代)

たしかにユーザーにとって眼鏡との付き合いは、購入してからがスタートである。人生に寄り添ってくれる眼鏡。そして、お店と工場と。その存在を感じていられるだけで、眼鏡のある生活がより豊かなものになってくれそうだ。

MIZ DIALOGUE
https://mizdialogue.com/

blinc vase
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  • 眼鏡ライター。眼鏡専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、モノ雑誌やWEB媒体にて眼鏡にまつわる記事やコラムを執筆している。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では眼鏡の世界の案内人として登場。眼鏡の国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査委員も務める。
  • https://twitter.com/mireiton

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