菊池雅之のミリタリーレポート
青空の下行われたランウェイウォーク!


入間基地としては3年ぶりとなる「ランウェイウォーク2022」。約1000人の参加者が滑走路を歩いた。

 皆さんは、「ランウェイウォーク」というイベントを知っていますか?

 文字通り、滑走路(ランウェイ)を歩く(ウォーク)イベントです。

 航空自衛隊の名航空基地で行われている体験型の自衛隊施設公開です。毎年のように、日本各地行われていたのですが、航空祭などと同じように、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、大勢の参加者が集まるという理由から中止となってしまいました。

 しかし、今年はいくつかの基地で「ランウェイウォーク」が復活しています。その一つが、6月4日に入間基地(埼玉県入間市など)で行われた「ランウェイウォーク2022」です。

 入間基地でも、20年、21年と中止を余儀なくされ、今回は実に3年ぶりの開催となりました。参加したのは、約9700名の応募の中から抽選で選ばれた約1000名の幸運の持ち主。今回は、かなり狭き門だったので、希望が通らなかった方々も多いことでしょう。

 そこで、参加した気になれるよう、当日の模様をお伝えしたいと思います!

 朝8時、真っ青に澄み切った空のもと、約1000名と招待者等が入間基地へと続々と集まってきます。開会式は9時50分からでしたが、実は、装備品展示、訓練展示などが行われるため、多くの方々が、開門と同時に来訪しました。

 会場となるエプロン前では、まずペットボトルのお水が配られました。晴天であるのは喜ばしいことではあるのですが、日差しが強く、気温も高い…。当然ながら滑走路には日差しを遮るものは何一つありません。照り返しもキツイ…。参加者には、小さい子供を連れた家族の姿も多く見られました。入間基地側は熱中症対策に力を入れます。

 エプロンには、入間基地に所在する第2輸送航空隊のC-2、C-1、U-4をはじめ、CH-47Jやパトリオットミサイルなどが並びます。まさに“プチ航空祭”です。その中には埼玉県警ヘリコプターA109E「みつみね」がありました。実は、入間基地の一角に埼玉県警航空隊本部が置かれており、空自と施設を共用しているのです。案内の警察官は「とはいえ、空自基地側に来ることはほとんどないので、テンション上がっています♪」と楽しそうだった。パトカーや白バイは、お子様には大人気だ。

 また、警備犬の訓練も行われました。爆発物の捜索から不審者の制圧まで、実戦的な内容でした。物々しい訓練を淡々とこなす警備犬。一見おっかない印象ですが、やり終えると、舌を出してハンドラーの隊員へと無邪気に絡みつく様子は可愛いものでした。

 なお抽選で選ばれると、C-2の地上滑走も体験できました。

入間基地に所属している警備犬の各種デモンストレーション。訓練中は厳つい顔をしていますが、よく見るとなかなか愛らしい顏。

 午前10時、ピストルの音を合図にいよいよスタートしました。横断幕を掲げた隊員たちが先頭を歩き、その後ろを参加者が続いていきます。すると、基地の消防車が放水アーチを作って、応援してくれました。これには大歓声が上がりました。子供たちも楽しそうです。

 滑走路南端付近までを約2㎞歩き、そこから戻るような形で、タクシーウェイやエプロン地区を2㎞歩く計4㎞の行程です。黙々と歩くと言うよりも、途中で記念写真を撮ったりして、ゆっくりと進んでいきます。とにかく、普段立ち入ることができない滑走路です。航空機がこすりつけていったタイヤのゴムの跡も物珍しげ。両手を伸ばして飛行機のマネをして駆け抜けていく子供、それに続いて大はしゃぎのお父さん。なんともほほえましい光景です。

 さて、私もだいぶ息が切れてきました…。「もう半分は歩いたな」と額の汗をぬぐいます。滑走路脇には自衛官が現在地から残りの距離を掲げています。「どれどれ」とそれをのぞき込むと、「残り3.2㎞」…。あれ、まだ1㎞と歩いていなかったのか…。

 このぐらいの距離になってくると、流石にもう歩けない、という人も出てきました。ちゃんとリタイア用の退路も用意されており、無理せず離脱できるような配慮も完璧。

PAC-3の展示。従来型とMSE(写真手前側)という2つのバージョンが混載されている。

 私はというと、もちろん、止まることなく前進します。

 子供たちはさすがに飽きてきたのか、歩くのをやめ、滑走路沿いのたんぽぽの綿毛を探しだしています。まさに「道草を食う」状態。中にはぐずり出す子も出てきて、それに対し、暑いし、疲れたし、イライラするしで、ママが金切り声で怒鳴り、パパが子供と奥さんをアタフタとなだめるという、地獄絵図を見せ始めた家族もチラホラ(笑)。

 そんなこんなで、いよいよ滑走路の端が見えてきました。そこには大きく「35」と書かれた、飛行機マニアの間では撮影ポイントして有名な「35エンド」です。ここから折り返します。

入間基地の新しい顏となったC-2輸送機。ブルーホエールとの愛称を持つ。

 ここでサプライズ。展示機ではありませんが、エプロンには、電波情報収集機RC-2というレア機が置いてありました。ディープなマニアは、この貴重なチャンスを逃すまいと撮影開始。

 さて、やっと3㎞。すると遠くから太鼓の音が聞こえてきました。基地隊員らによる「入間修武太鼓」の演奏です。

 そんなこんなでスタート地点が見えてきました。ここがゴールです。「4㎞ぐらいなんともないや」なんて思っていた私でしたが、終わってみると、なかなか大変でした。知己の空自幹部から「お疲れさまでした」と声をかけられました。「思いのほか大変でした…」と感想を述べると、「まあ、滑走路は飛行機のためにあるのであって、歩く場所じゃないですからね」と自虐ネタをかまされました。

 歩き終えた達成感、そして満足感から、参加者たちも笑顔に包まれておりました。

 こんなにたくさんの笑顔を見たのは久しぶりの気がします。

総行程4㎞の道のりを歩く参加者たち。
  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75