菊池雅之のミリタリーレポート ブルーインパルス「美ら島エアーフェスタ2023」で初曲技!?


「美ら島エアーフェスタ2023」にて新たな歴史の1ページを刻んだ「ブルーインパルス」。6機のT-4練習機で数々の演技をこなす。

日本国民に愛されるブルーインパルス。2024年3月16日には、北陸新幹線が福井・敦賀まで延伸し新たに開業したことに伴い、福井県や石川県上空を祝賀飛行しました。そして翌17日には、能登半島地震の被災地上空を飛行し、被災者を激励しました。

このようにしてブルーインパルスは、これまでも多くの国民を楽しませ、勇気付けてきました。果たして今年度もどのようなドラマが生まれるのでしょうか!

スケジュールはこちらをご参照ください。

空自が世界に誇るアクロバットチーム「ブルーインパルス」。10時半頃からスタート。離陸シーンから数々の飛行課目、そして着陸までしっかりと見ることができた。

さて、今回お話したいのは、2023年12月10日、航空自衛隊那覇基地(沖縄県那覇市)にて行われた航空祭「美ら島エアーフェスタ2023」です。新型コロナウイルス拡大防止のため、20年、21年は中止となったもののそれ以外は、毎年実施されています。

基本的に航空祭は非常に混雑します。中にはゆっくり見るのが困難なほど人が密集する基地もあるほどです。

しかしながら「美ら島エアーフェスタ」は、エプロン地区がぎゅうぎゅうになることもなく、朝一番で並ばないと確保が出来ない最前列もお昼頃でも空いているような状況です。もちろん、沖縄であろうと遠征してくる熱心なファンは多くいらっしゃいますが、特に混雑する入間基地航空祭や百里基地航空祭ほどにはなりません。

そんな中、「美ら島エアーフェスタ2023」は、いつもよりも注目を集めました。

それというのも、「ブルーインパルス」が参加したからです。これまでも何度も同イベントへの参加実績はあり、直近では2018年にも飛行しました。しかしながら今回は事情が少し違います。沖縄本島で初めて曲技飛行を行ったのです。

レベルサンライズ(写真)やローリングコンバットピッチ、コークスクリューなど数々の曲技飛行が行われた。

那覇基地は、日本でも非常に込み合う那覇空港と滑走路を共有しています。もし「ブルーインパルス」が演技を行うとなれば、これら定期便を止める必要が出てきます。それに伴い、「航空機事故につながるにでは?」とも懸念されており、そこまで無理をしてまで飛行しなくても良いのではないか、というのが、これまでしっかりとした曲技飛行が行われなかった理由です。

それこそ最初の機体であるF-86時代から、那覇基地航空祭では制限はありながらも飛行課目を実施してきました。白いスモークをひきながら水平に編隊飛行するだけの課目が基本であり、空港の奥側の海上にてちょっとした曲技を実施したこともありましたが、観客席から遠く、迫力は半減してしまいました……。

ブルーインパルスの後ろには離陸を待つ民間機。改めて、那覇空港のトラフィックの多さにびっくり。

那覇基地には、ファンだけでなく、地元の方々からも「いつかブルーインパルスの“フル演技”が見たい」とのリクエストが多く寄せられていたそうです。

そこで、実現に向け、関係各所はしっかりと調整し、連携を取り合いました。空自の熱意、地元の情熱が、今回の快挙につながったと言っても良いでしょう。

さらに那覇空港の拡大改修が後押しとなりました。

これまでの滑走路(A滑走路)に加え、海側に新たにB滑走路を造ったのです。これにより、B滑走路を民間機が使っている間、A滑走路上空を飛行したり、横切ったりする課目が可能となりました。

かくして、約40分間にわたるブルーインパルスの曲技飛行が繰り広げられたのです。華麗かつ迫力ある技の数々に観客は大満足です。

陸自唯一の固定翼機であるLR-2。本来任務は連絡偵察機であるが、第15ヘリコプター隊には緊急患者輸送にも使われている。

もちろん、「美ら島エアーフェスタ」の魅力はそれだけではありません。那覇基地は、陸海空自衛隊が共同使用しており、多彩な機体を見ることが出来るのも特長です。空自南西航空方面隊第9航空団に内包される第204及び第304飛行隊のF-15、海自第5航空群第5航空隊のP-3C、陸自第15ヘリコプター隊のLR-2やCH-47JAなどがおります。こうした機体のフライト、地上展示、さらにほかの基地からの外来機など、とにかく賑やかです。

是非、皆様も「美ら島エアーフェスタ」に足を運ばれてみてはいかがでしょうか?

離陸する第304飛行隊のF-15J。こうしたシーンも目前に見ることが出来る。
  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75

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