連載・広坂正美のいま、そしてこれから
第10回

RC(ラジコン)カーレースにおいて、世界タイトル獲得14回、全日本タイトル53回など、前人未到の記録を残したレジェンドドライバーの広坂正美(ひろさか まさみ)氏。世界記録保持者でもある広坂氏は、2019年に長年所属したRCカーメーカーを退職。フリーランスでの活動の後に、2021年秋よりRCメーカー・ジーフォースのスタッフとなった。そんな広坂氏の“いま”に注目し、現在の活動や今後の展開をレポートする連載企画の第10回は、ジーフォースが実施したキャンペーンやイベント、セガとの協力で実現した動画プロジェクトの裏話などを紹介する!

【第10回】広坂正美の新たなチャレンジ

広坂正美

1970年2月26日生まれ。京都府で幼少~学生時代を過ごし、高校3年生の時にRCカー世界選手権において日本人初のチャンピオンに輝く。高校卒業と同時にRCカーメーカーのヨコモに入社し、以降はヨコモの社員ドライバーとして、世界戦をはじめとする数多くのレースで優勝を飾った。2019年にヨコモを退社してさまざまな活動を行っていたが、2021年10月末にRCメーカーのジーフォース(G FORCE)に入社した。


ジーフォースのバナープレゼントキャンペーン

 広坂氏のジーフォース入りが発表されてから約半年、現在は同社のスタッフとして広範囲にわたる業務を行っている。もともとジーフォースのスタッフには肩書がなく、広坂氏も、最も得意とするRCカー用アイテム開発をはじめ、プロモーション活動も精力的にこなしている。

 最近話題となったのが、ジーフォースのバナープレゼントキャンペーンだ。これは全国の模型店やRCサーキットに向けて行ったもので、希望するショップやサーキットにジーフォースのバナーを送るというもの。バナー代や送料はジーフォースが負担するというのも太っ腹。バナープレゼントの条件はジーフォースが用意したアンケートに答えるだけ。すでに募集は締め切られているが、予想以上の申し込みが集まり、その数は軽く100を超えるという。広坂氏は同キャンペーンも担当しているが、これは嬉しい驚きとのこと。

 実際のバナー送付は3月からスタートし、各ショップ&サーキットではバナー到着と掲示の報告もあがっている。オレンジとブラックのロゴも鮮やかなジーフォースバナーが掲示されている写真はジーフォースのTwitterで確認できる。

全国各地の模型店やRCカーサーキットに掲示されたジーフォースのバナー(写真はホビーショップタム・タム岐阜店)。これらの写真は各ショップやジーフォースのTwitterでも公開されている。 URL https://twitter.com/gforcehobby

時速100kmで走るパソコン製作秘話

 ゲームメーカーのセガが2021年末~2022年初頭にかけて実施した「セガ世界最速!? パソコン」プレゼントキャンペーン。その一環として、世界最速のスペックを持つパソコンを時速100knで走行させ、物理的にも世界最速を証明するという動画が配信された。これはRCカーの車体にパソコンを載せて走らせるものだが、その車体製作をジーフォースが、操縦を広坂氏が担当した。100km/hチャレンジは実際に成功したが、その様子はぜひ動画で見てもらいたい。しかし、実はこのチャレンジは苦難の連続だった。

 土台となるRCカーの製作には、かつて広坂氏のメカニックとして一緒に世界を転戦し、輝かしい実績を残すことに貢献した実父の正明氏も協力した。ベースモデルはアメリカ・トラクサス社の1/7スケールRCカー「XO-1」。このモデルは高速走行を目的に開発されたもので、強力なモーターと大電圧バッテリーを搭載し、キット標準状態でも時速100マイル(約160km/h)を叩き出すというハイスペックを誇っている。しかしこれも、軽量で空気抵抗の少ないポリカーボネート樹脂製ボディを装着しての話であり、5kg超の重量があって空気抵抗も大きなパソコンを搭載した状態ではどこまでスピードを出せるかわからない。

 そこでまずは搭載するパソコンのサイズに合わせたカウルを製作し、そこにパソコンと同じ重さのバラストを積んでテストを行った。このテストは想像以上に困難を極めたという。重量増加に耐えるため、サスペンションスプリングを標準より硬いものに変更する必要があったが、市販のRCカー用スプリングで最適なものがなかなか見つからなかった。また、パソコンを搭載するための強固なマウント作りなど、課題は多かった。さらに企画のスタートから実際のチャレンジまでの期間が短かったことが、正明氏をはじめとするスタッフへのプレッシャーになったとのこと。

 予想を上回る苦難の連続だった世界最速パソコン搭載RCカーの開発。実際にマシンは完成したが、通常のRCカーに比べてはるかに重心の高いパソコン搭載RCカーの操縦もまた予想以上に難しく、広坂氏の操縦テクニックなしにはこのチャレンジも成立しなかったといえる。プロモーション動画やそのメイキング動画は現在でもセガのYouTubeチャンネルで見ることができる。まだご覧になっていない人はぜひ見てほしい。

プロモーション動画URL 

メイキング動画URL 

チャレンジに備えてマシンを準備する廣坂正明氏(右から二人め)。動画撮影日は1日しかなく、失敗のできない最高速トライアルに緊張感が走る。
高性能パソコンを搭載したチャレンジマシン。本来の想定重量を大きく上回ったことで、それに対応するための改造が随所に施されている。
最高速チャレンジの舞台になったのは千葉県茂原市にある茂原ツインサーキット。本来は実車用の施設で、カート用コースのメインストレートが使用された。
スタート位置での最終調整。正明氏は「RCレース世界選手権の決勝スタート前並みに緊張します(笑)」と語り、久々の緊張感も楽しんでいたそうだ。
見事時速100kmを達成し、セガスタッフと成功を祝い合う。高重心&ヘビー級のマシンを真っ直ぐ走らせるには、極めて繊細な操縦テクニックが要求された。
重責を果たしてVサインの広坂氏。緊張感から解放されたときの笑顔は世界選手権での優勝後にも似た雰囲気。
現場ではドローンを使った撮影も実施。タイトなスケジュールのなかでさまざまな撮影が次々と行われた。
日没後にはイメージカットも撮影。このカットをもって、当時のチャレンジ&撮影はすべて終了。キャンペーン動画はこの数日後には公開されている。

広坂正美とペットイベント?

 広坂氏の新たな勤務先となったジーフォースは、RCカーやドローン、モデルガン用アイテムなど、主に模型関連製品を販売していて、当然ながら広坂氏の業務もRCモデルに関することが主になる。しかし、ジーフォースはまったく異なる事業も手がけているのをご存じだろうか? それがペット関連製品の販売だ。

 RCモデルとはウェブサイトも別建てになるペット関連もジーフォースの重要な事業であり、3月31~4月3日に東京ビッグサイトで開催されるイベントの「第11回インターペット」にも企業ブースを出展することが決まっている。そしてなんと、そのジーフォースブースには広坂氏もスタッフとして参加するという。これまでRCモデル関連のショー会場で広坂氏の姿を見る機会は多かったが、ペットイベントはもちろん初。以前の広坂氏を知る人にとって、かなり新鮮な光景になるのは間違いない。広坂氏自身、こうした新チャレンジを楽しみにしているとのこと。

ジーフォース・ペット用品ウェブサイト URL https://bitcle.jp/

ジーフォースでは、自動給餌器などのペット用品も扱っている。そうした製品を展示するイベントのインターペット会場に広坂氏も訪れる。

さらに続く忙しい毎日

 広坂氏がヨコモ在籍時代から力を入れていたドリフトRCカーによる競技。その頂点にあるのが、中部国際空港(セントレア)内特設会場で毎年秋に開催されている「All Japan E-Drift Championship」だ。広坂氏はこのイベントの中心スタッフとしてイベントの準備や運営に尽力していたが、その姿勢はジーフォースの一員となった現在も変わっていない。

 そして今年も秋の全国大会に向けた地区予選が5月からスタートする。現在もまだ新型コロナの影響が大きい状況下にはあるが、地区予選では感染防止対策を十分に行い、安全に配慮しながら運営される。国際空港のイベントホールを使って行う全国大会への注目度は高く、今では最もステータスのあるドリフトイベントのひとつに成長した。広坂氏は、今後もさらなる発展を目指していきたいと語る。

毎年11月に中部国際空港のセントレアホールで開催されているAll Japan E-Drift Championship。今年もこの決戦舞台を目指した地区予選が間もなく開始される。

「広坂正美のラジコン街道」:
・第1巻
・第2巻
・第3巻
・第4巻
・第5巻

広坂正美YouTubeチャンネル「MASAMI RC CHANNEL」:
https://www.youtube.com/c/masamichannel
廣坂正明YouTubeチャンネル「MASAAKI RC CHANNEL」:
https://www.youtube.com/c/masaakircchannel
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ラジコン世界チャンピオンメカニック「ひろさか」サイト
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連載・広坂正美のいま、そしてこれから第4回
連載・広坂正美のいま、そしてこれから第3回
連載・広坂正美のいま、そしてこれから第2回
連載・広坂正美のいま、そしてこれから第1回

  • RC(ラジコン)カーの記事を中心に、模型や実車などのメディアで編集・執筆を行うフリー編集者兼ライター。余暇のほとんどを競技用RCカーの走行や整備に費やす立派な(?)ラジコン廃人。9割以上がラジコンの話題で埋め尽くされるブログ「すべては12分の1のために」は、ごく一部の読者に好評継続中。
  • http://1-12thonroad.cocolog-nifty.com/blog

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