連載・広坂正美のいま、そしてこれから
第2回

RC(ラジコン)カーレースにおいて、世界タイトル獲得14回、全日本タイトル53回など、前人未到の記録を残したレジェンドドライバーの広坂正美(ひろさか まさみ)氏。世界記録保持者でもある広坂氏は、2019年に長年所属したRCカーメーカーを退職して新たな挑戦を開始している。そんな広坂氏の“いま”に注目し、今後への展望や活動について紹介する連載企画の第2回は、現在メインの活動となっているYouTubeチャンネルにスポットを当てる。


【第2回】広坂正美とYouTube


連載・広坂正美のいま、そしてこれから


広坂正美
1970年2月26日生まれ。京都府で幼少~学生時代を過ごし、高校3年生の時にRCカー世界選手権において日本人初のチャンピオンに輝く。高校卒業と同時にRCカーメーカーのヨコモに入社するため上京し、以降はヨコモの社員ドライバーとして、世界戦をはじめとする数多くのレースで優勝を飾っている。2019年にヨコモを退社して現在はフリー。



 30年以上所属していたRCカーメーカーのヨコモを2019年9月に電撃退社し、以降はフリーで活動している広坂正美氏(以下・正美氏)。彼が退社後に手がけたのは自叙伝の執筆と出版、そしてYouTubeチャンネルの開設だ。今回はそのなかからYouTube活動に注目してみた。

 動きのあるRCカーと動画の親和性が高いのはいうまでもないだろう。動画で実際の走行や操縦シーンを見れば、そのRCカーがどんなスピードで走り、曲がり、跳び、あるいはドリフトするのか手に取るように分かり、それを操るドライバーのテクニックがいかに優れているのかも理解しやすい。こうした動画のメリットに関しては正美氏自身もヨコモ所属時代から気づいていて、同社のプロモーション動画にも主に出演者として関わっていた。そしてフリーになってメーカーの枠がなくなった現在は、自らが世の中に伝えたいことダイレクトに表現できる自身のYouTubeチャンネルを開設し、すでに数多くの動画をアップロードしている。また、タイミングを同じくして父・正明氏のYouTubeチャンネルも開始。どちらのチャンネルも正美氏がメインの撮影と編集を担当する。
 これまで行ってきたRCカーでのレースや製品開発、そしてプロモーションなどと違い、YouTubeチャンネルに関する作業はそのすべてが正美氏にとって初めての経験となる。最初のうちは撮影や編集作業に慣れず、特に編集作業にかなりの時間を要したという。現在は以前に比べると効率も上がってはいるものの、やはりまだまだ学ぶこと多いと語る。それでも、このまったく新しいチャレンジは正美氏にとって楽しいものとなっているとのこと。


連載・広坂正美のいま、そしてこれから

YouTube動画チャンネルの「MASAMI RC CHANNEL」。父・正明氏と共同で進めるRCカーの開発テスト動画やレースへの挑戦、自分自身のことなど、さまざまなジャンルの動画が掲載されている。RCカーに興味がある人はもちろん、これまであまりなじみのなかった人でも、その操縦テクニックのすごさは一見の価値あり。


 今回、広坂親子のYouTube動画撮影現場を訪れた。当日撮影していたのは正美氏が発案し、正明氏が製作を担当したリヤ2輪駆動の10分の1スケールRCカー。4輪駆動車が多いこのカテゴリーにおいて、より手軽な2輪駆動車を開発・販売することにより、RCカーの門戸を広げたいというのが狙いだ。そしてその開発の様子を動画にしてYouTubeで紹介している。興味深かったのが、マシンのテストを行う広坂親子が実に楽しそうだったこと。親子でヨコモに所属していたころのマシン開発の目的はとにかく“勝つ”ことで、正美氏が世界選手権や全日本選手権で優勝することによってヨコモ製品の優秀さを証明し、それが売り上げの拡大につながっていた。そのため例えテストであっても妥協は許されず、親子の間には常に緊張感が漂っていた。
 しかし、現在は手軽かつ楽しく走らせられるRCカーを開発するのがゴールであり、勝利の義務付けやレース開催日という締め切りもない。それが広坂親子にリラックスを生み、楽しみながらのマシン開発が可能になった。正美氏のような卓越した操縦スキルを持つドライバーだけでなく、誰でも楽しく走らせられるRCカーは、こうした環境があってこそ生み出すことができるのだろう。
 以前は親子のチャンネル交互で5日に1回程度のペースだった動画更新も、最近はより頻度が増えている。さらに日本国内はもとより、海外の視聴者、そして耳の不自由な人にも動画を楽しんでもらえるように編集の際に日本語と英語の字幕も製作するなど、正美氏は撮影と編集に毎日のほとんどの時間を費やしているという。だが、正美氏はこの状況を心から楽しんでいる。これまでの仕事とは異なった作業、加えて自身の操縦やマシン開発、言葉などを残しておけるYouTube動画の制作にやりがいを感じているとのこと。「まずはさまざまな動画を父と私のチャンネルで合計100本作るのが目標です。それだけ作れば視聴者の興味の傾向も分かりますし、私自身も方向性が見えてくると思います。動画をとおしてラジコンカーの楽しさを世界の皆さんに知ってもらえれば成功ですね」と正美氏。
 将来的には動画の収益化も視野に入れ、さらには各企業との協力を行うことで、企業側にも十分なメリットを還元できるようにしていきたいと語る正美氏。かつては世界トップのRCカーレーサーとして、操縦テクニックの研鑽とマシン開発に全身全霊を注いでいたそのスピリットは、動画制作においても存分に行かされている。


連載・広坂正美のいま、そしてこれから

取材日には、テストマシンを操縦する正明氏の姿も撮影していた。笑顔で送信機を持つ父親とそれを撮影する息子。二人の姿はまるで普通に休日を楽しむ親子のようで、かつては親子鷹コンビで世界を転戦し、過酷な戦いを繰り広げていたとは思えない。
連載・広坂正美のいま、そしてこれから

RCカーサーキットのピットエリアで撮影した動画をチェックする正美氏。動画の撮影は主にiPhoneで、動画編集ソフトはFilmoraを使っている。実際の細かい編集作業は、ノートではなく自宅のデスクトップパソコンで行っているとのこと。
連載・広坂正美のいま、そしてこれから

この日は“ラジコンユーチューバー”としては先輩にあたるRCパーツメーカー・TNレーシング代表の飯塚幸司氏に動画編集に関するレクチャーを受けていた。飯塚氏の動画はYouTube内「TNRACING」で検索すれば視聴できる。
連載・広坂正美のいま、そしてこれから

テスト用マシンのセッティング変更を行う正明氏。マシンは正明氏のブランド「ひろさか」で販売する4WDカーをRWD(リヤ2輪駆動)に改造したもの。正明氏が予想以上によくしゃべるため、当初の予定より大幅に動画の本数が増えている、と正美氏。
連載・広坂正美のいま、そしてこれから

もちろん、テストドライバーとしてマシンの走行テストも行う。世界の頂点で戦っていた時に比べれば表情も柔和だが、ときおり見せる鋭い視線に、何者も寄せ付けないスピードでRCカーを操っていたころの片鱗を感じさせる。

「広坂正美のラジコン街道」:
・第1巻
・第2巻
・第3巻
・第4巻

広坂正美YouTubeチャンネル「MASAMI RC CHANNEL」:
https://www.youtube.com/c/masamichannel
廣坂正明YouTubeチャンネル「MASAAKI RC CHANNEL」:
https://www.youtube.com/c/masaakircchannel
広坂正美facebookページ
https://www.facebook.com/masamihirosaka1970
ラジコン世界チャンピオンメカニック「ひろさか」サイト
http://www.hirosaka.jp/

連載・広坂正美のいま、そしてこれから

連載・広坂正美のいま、そしてこれから

連載・広坂正美のいま、そしてこれから


今回広坂親子がマシンのテストとYouTube動画の撮影を行っていたのは、群馬県富岡市にあるRCカーサーキット&ショップのWORLD JAM RACING。天候を気にせず走行できる屋内型サーキットで、10分の1スケールカーが走行可能なカーペット路面のコース(上段右)と京商・ミニッツレーサー用ウレタン路面サーキット(下段中央)、さらにはミニ四駆用コースもある総合ホビー施設だ。RCカーのキットや補修パーツなども販売されている。ショップでは店長の佐俣礼典さん(下段左)が笑顔でお出迎え。
URL:https://blog.goo.ne.jp/jamnaoayataka26
取材場所:WORLD JAM RACING

長谷川 敦(Atsushi Hasegawa)
  • RC(ラジコン)カーの記事を中心に、模型や実車などのメディアで編集・執筆を行うフリー編集者兼ライター。余暇のほとんどを競技用RCカーの走行や整備に費やす立派な(?)ラジコン廃人。9割以上がラジコンの話題で埋め尽くされるブログ「すべては12分の1のために」は、ごく一部の読者に好評継続中。
  • http://1-12thonroad.cocolog-nifty.com/blog