菊池雅之のミリタリーレポート
富士総合火力演習とは?
【第4回 日本の島嶼防衛戦術を知る①】

上陸しようと試みる敵の上陸用舟艇や装甲車を攻撃していく即応機動連隊の16式機動戦闘車。今回の総火演の主役となっており、改めて戦車の時代が終わりつつあることを知った。

2部構成の総火演!後段、陸自の戦術を知る


 総火演後段は、シナリオに沿った訓練となります。これは総火演がスタートした当初から続いています。陸自がどのような戦術をもって、その時代ごとに脅威に立ち向かっていくかを知ることが出来ます。そのシナリオは、時代とともに変化しているのです。

 長らく、日本へと着上陸を果たしたソ連(とはもちろん名言していませんが…)の戦車を中心とした機甲戦闘団を撃破するという流れでした。
 それが、2012年より、島嶼防衛を念頭に置いたシナリオへと変わりました。これは、言うまでもなく、中国の脅威が高まったからです。
 2021年の今年は、「敵の着上陸阻止から撃破に至る一連のシナリオに基づき、国土防衛戦における陸上自衛隊の戦闘要領を展示」(陸上自衛隊の資料より)するものとなりました。 
 ここ数年通りの島嶼防衛シナリオではありますが、主役となったのが、即応機動連隊と水陸機動団でした。冷戦期に主役として活躍した戦車は、これら部隊を増強する形となり、いわば脇役となりました。

敵のミサイルから防御部隊を守る03式中距離地対空誘導弾。通称“中SAM”。発射の際は、車両後部に積まれたミサイルランチャーを起立させる。
水上目標から装甲車までマルチに対応できる中距離多目的誘導弾の発射シーン。通称“中多(ちゅうた)”と呼ぶ。

日本領海内に侵入した敵を叩け!


 空自のレーダーサイトや早期警戒管制機、海自の哨戒機、そして陸自の沿岸監視隊などによる警戒・監視の結果、敵上陸船団の情報を入手したところからスタートします。
 師団司令部は、システムを活用して、海空自の情報を共有するとともに、沿岸部での戦闘を準備します。敵艦艇を迎え撃つため、12式地対艦誘導弾及び捜索評定レーダー、03式中距離地対空誘導弾、NEWSこと電子戦ネットワークシステム、82式地上レーダー装置が展開します。ここで、会場モニターでは、「火力戦闘指揮統制システムFCCS」という言葉が突然出てきます。これが非常に重要です。統合による対艦戦闘を実施する司令塔となります。
 こうして迫りくる敵艦艇に対し、洋上では護衛艦がSSM-1B艦対艦ミサイルを発射(想定のみ)し、陸上からは12式地対艦誘導弾を発射(想定のみ)、上空からはF-2戦闘機に搭載されたASM-3が発射(想定のみ)されました。
 こちらを攻撃するため、敵艦が発射した巡航ミサイルは、03式中距離地対空誘導弾が撃破します。
この攻撃の間、NEWSが、敵の電波を無力化し、こちらの攻撃の効果を上げていきます。

UH-1Jにより運ばれてきた偵察部隊。機内から偵察用オートバイを下ろして、内陸部の敵を偵察する。
偵察部隊の主装備である87式偵察警戒車(写真手前)。その進出を支援する16式機動戦闘車。即応機動連隊や偵察戦闘大隊では、このコンビが中核となる。

遂に敵が上陸!即応機動連隊が戦う!


 ここから機動師団主力による戦闘へと移ります。展開してきた即応機動連隊は、地域配備師団と連携し対艦戦闘及び着上陸阻止を行います。即応機動連隊の主装備である16式機動戦闘車が火を噴きます。
しかし、敵部隊は、上陸に成功し、内陸部へと攻め入ります。
 そこで、今度は内陸部の敵を撃破すべく、水陸機動団及び第1空挺団の事前潜入部隊が、水路・空路などのあらゆる手段を用いて作戦地域へと潜入していきます。まずは水陸機動団主力が上陸できる環境を整えます。
 そして、見つけ出した敵の細部位置を支援火力調整所へと報告。この情報を元に、護衛艦「てるづき」の主砲である62口径5インチ単装砲にて、敵陣地めがけて攻撃していきます。引き続き、F-2により、レーザーJDAMが投下されていきます。
こうして海岸にいる敵を艦砲射撃や爆撃で制圧したことで、水陸機動団主力が、水陸両用車AAV7で上陸してきました。これを「海上機動による強襲上陸」と呼びます。この上陸を支援するため、AH-64Dアパッチが空から機首下部にある30㎜機関砲で攻撃していきます。
 AAV7は、着上陸に成功するや否や、砲塔にある12.7㎜重機関銃や40㎜自動てき弾銃を発射し、目前の敵を蹴散らしていきます。その間、後部ハッチから水陸機動連隊の隊員たちが下車展開し、小銃や機関銃にてこの攻撃に加わっていきます。
 こうして一連の射撃の後、さらに前進するため、隊員たちはAAV7に乗り込み、さらに内陸部へと進みます。
 一方、内陸部近傍にて、水陸機動連隊先遣部隊によるヘリボーン作戦が展開されました。AH-1Sで守られた空中機動部隊を乗せたUH-60JAやCH-47JAから、隊員たちが、ファストロープで次々と降下してきます。

 第1空挺団も同じように、空挺降下にて内陸部へと進出する予定でしたが、悪天候のため、中止となりました。

 こうしていよいよ最終決戦へとコマを進めていきます。(第5回へ続く…)

上陸してきた水陸機動団戦闘上陸大隊の水陸両用車AAV7。後部ハッチから水陸機動連隊の隊員たちが下車展開。
地上部隊の戦闘を空から支援するAH-64Dアパッチ。敵の装甲車を次々と撃破していく。
菊池雅之(masayuki kikuchi)
  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75