心躍る新装備
2021年5月22日に行われた「令和3年度富士総合火力演習」では、新しい装備やレア装備がいくつか登場しました。
今回はその中から3つの装備をご紹介しましょう。
何よりも大きなニュースとなったのが、「UAVスキャンイーグル」の登場でした。実は総火演前に防衛省で行われた記者ブリーフィングにおいても、今回の目玉としてスキャンイーグルが紹介され、新聞テレビ各社は質問攻めをしていました。
これは、ボーイング社の子会社であるインシツ社が開発した中域用の無人偵察機です。双日が仲介し、三菱重工が協力企業として名を連ね、陸自へと配備されました。最初に購入を決めたのは2012年頃にまでさかのぼりますが、それ以降、何機を購入したのか、どのような訓練をしているのか、などは全く発表されず、報道公開されることもありませんでした。
取り扱うのは情報科となります。ただし、実際の運用をどのように行うのかは未だよく分かっていません。
今回は、従来の偵察用ドローンのスカイレンジャーとともに登場、会場をゆっくりと飛行していきました。これまで陸自が配備してきたUAVの中で、1番長く、そして高く飛ぶことが出来ます。
更に注目を集めたのが、水陸機動団に配備された「汎用軽機動車」です。
水陸機動団は、移動の手段として、第1ヘリコプター団に配備されているMV-22Bオスプレイを使います。しかし小型の機体ゆえ、陸自が配備する車両を搭載することが出来ません。そこで、オスプレイに搭載するための小型車両を新たに配備する事になりました。それが汎用軽機動車です。人員輸送や物資輸送の他、120㎜迫撃砲RTをけん引するなど、文字通り“汎用性”が高い車両です。
米海兵隊もオスプレイで運用するために、グロウラーIFV(Internally Transportable Vehicle)を配備しました。これよりもさらに機動力が高いポラリス社のMRZR4(エムレーザーフォー)が現在の主流です。
陸自もMRZR4を採用するという話もありましたが、最終的にカワサキモータースジャパンが販売するMULE(ミュール)となりました。こちらを今後、汎用軽機動車の名前で配備していきます。基本的に市販車とスペックは大きく変わりません。
そしてもう一つのレア装備、それが「19式装輪自走155㎜りゅう弾砲」です。2019年の総火演で初登場しました。現在日本全国の特科部隊の主力火砲となっている155㎜りゅう弾砲FH70に代わる大砲です。ドイツのMAN社製の8輪式の大型トラック「HX44M」に155㎜りゅう弾砲が搭載されています。車体は輸入品ではありますが、ちゃんと右ハンドル仕様となっています。
FH70は8名での運用が必要でしたが、この装備から5名で移動から射撃まで行えます。そして5名は、運転席及び車体中央のキャビンに分乗します。砲を降ろすことなくそのまま射撃できるので、機動力も高く、運用効率も良いのが特徴です。火力戦闘指揮統制システム「FCCS」とネットワーク化されており、数値化された座標をタッチパネル式のモニターへと入力等の操作をし、射撃までを行います。砲弾は自動で砲に装填されますが、装薬(火薬)は、人力での装填が必要な半自動式となっています。
世界でも装輪式のりゅう弾砲が主流となりつつあり、フランスやチェコ、イスラエルなど数か国ではすでに実戦配備されています。スピードとハイテク、省人力化を目指した新しい大砲が、まもなく全国の部隊へと配備されていきます。
今回の総火演にて、「射撃が初公開されるのでは?」と思われていたのですが、残念ながら今年も機動展開のみでした。来年の総火演に期待しましょう。
水陸機動団の最新装備である汎用軽機動車。オスプレイに搭載可能な4輪バギーで、機動力の高さに期待大。
小物にも注目…
さて、総火演は、防衛大臣による視察も行われています。やはりこれだけの訓練でありますし、防衛省のトップが顔を出すのは当然と言えば当然です。特に火力戦闘の様相をこれほどまでに端的に見ることが出来る演習は総火演ぐらいです。
防衛大臣以外にも国会議員をはじめ、地元の県議・市議などVIPもたくさんやってきます。また他国の武官もやってきて、陸自について学びます。
今回の総火演では岸信夫防衛大臣が視察されました。観覧用のひな壇の中央に座します。例年だと、ひな壇は多くのVIPや特別招待者で大賑わいなのですが、実に閑散としています。これもソーシャルディスタンスを保つためです。
さて、大臣が着用している黒いマスクが気になりました。富士学校のマークが入っており、特別に作られたもののようです。よくよく見てみると、このマスクを着用している方は多くいました。
これもコロナ禍の総火演ならではの光景ですね。
岸信夫防衛大臣が視察。富士学校のマーク入りマスクを着用していた。ちなみに被っている部隊帽も富士学校のものだった。