菊池雅之のミリタリーレポート UNITAS2025

ブラジル海軍ニテロイ級フリゲートの5番艦「インデペンデエンシア」(写真手前)と米海軍フリーダム級LCSの12番艦「クーパーズタウン」。アメリカはこうして南米各国軍とパートナーシップを深めるため「UNITAS」を実施している。

米海軍は世界中で数多くの軍事演習を実施しています。世界の警察を公言し、地球上で一番影響力のある国であるアメリカは、たくさんの国々と安全保障上のパートナーシップを構築する必要があるからです。。

軍事演習は、各国との戦術技量の向上に欠かせないだけでなく、回を重ねることで参加国間での相互運用性も高めることが出来ます。

米海軍は、7つの海をまたにかけて演習を繰り広げています。特にアジア太平洋エリアは、そうした演習の機会は多く、日本も度々参加しています。

今回注目したいのは、大西洋で行われている米海軍主催多国間共同演習「UNITAS」です。1960年に第1回目が行われており、60回以上を数える歴史ある演習です。昨年66回目を迎えましたが、今年の開催は危ぶまれています…。アメリカとイスラエルによるイラン侵攻、さらにベネズエラ大統領逮捕などさまざまな出来事が重なり、米軍と南米間の足並みが少し乱れているのがその理由です。

グアテマラ海軍最大規模の艦艇である「ケツァル」。国旗にも描かれている国鳥であり、通貨の単位でもある。艦種としてはLCUではあるが、多目的に運用している。
ペルー海軍カルバハル級フリゲートの5番艦「アギーレ」。元はイタリア海軍のルポ級「オルサ」で、1979年に就役した年季の入った艦だが、2004年に配備。
コロンビアDIMAR(海事総局)のヘリ・ドーファン。エアバスAS365N3がベース。2019年よりカリブ海航空群(Grupo Aeronaval del Caribe)に配備された。

もともと「UNITAS」は、米海軍と中南米諸国海軍によるパートナーシップを構築していくことを目的とした演習です。名称も「Unity(結束)」と「Oneness(一体)」を表すラテン語に因んでいます。

日本では報じられることはほとんどありません。そこで、2025年に実施された「UNITAS2025」をご紹介したいと思います。26ヶ国が参加し、9月15日から10月6日の間実施されました。カリブ海や大西洋が訓練の舞台となり、対空・対潜・対水上戦や着上陸訓練まで幅広く行われました。中核となったのは。メイポート基地(フロリダ州)に司令部を置く米第4艦隊CTF138です。

実は、日本も参加しました。それが「かしま」「しまかぜ」です。この2隻は、初級幹部の教育を行う練習艦隊として北米及び南米を巡っており、その途上メイポート基地に寄港しました。寄港理由は、「UNITAS2025」に参加するためです。というのも、2026年、米海軍は創設250周年を迎えます。そこで今回の「UNITAS2025」にも “米海軍創設250周年記念” という冠が付いておりました。まさに特別回だったわけです。

スペイン海軍のアルバロデ・バサン級イージス艦の2番艦「アルミランテ・ファン・デ・ボルボン」。

中南米だけでなく、スペインやドイツなどヨーロッパからの参加もありました。まさに多彩な参加艦艇の来訪に、演習開始前から基地内は非常ににぎわっていました。こうした海軍演習は、基本的に「ハーバーフェイズ」と「シーフェイズ」に分かれています。「シーフェイズ」は文字通り洋上で行う訓練です。「ハーバーフェイズ」とは、陸上にて行われる訓練のことです。指揮所演習や特殊作戦などの訓練が行われる他、サッカーやバレーボールなどのスポーツ交歓、レセプション(パーティ)、相互艦艇見学など、交流を深めるための行事も多数行われていきます。今回も、基地内の飲食店、スポーツ施設などがUNITAS用に開放されていました。売店では、Tシャツやキャップなどの「UNITAS」限定グッズも販売されていました。ちなみに、私は民間人であり、UNITASパスを持っていなかったので買えませんでした…。

相互艦艇訪問は自由に行われ、各艦ではメダルや帽子の交換が行われました。特に日本からの参加は珍しいこともあり、出港直前まで、「かしま」を訪れる人たちが後を絶ちません。

こうして充実したハーバーフェイズを終えると、9月19日、各艦はメイポート基地を出港していきました。出港直後より、通信訓練など基本的な訓練が2つのグループに分かれて行われていきます。

メイポート基地を出港するチリ海軍「アルミランテ・コクラン」。元はイギリス海軍の23型フリゲート。
メイポート基地に停泊中のメキシコ海軍の戦車揚陸艦「リオ・パパロアパン」。メキシコ海軍はアメリカ海軍よりニューポート級を2隻購入しており、その内の一隻。

その夜、発光信号によるクイズ大会が行われました。“ハンブルグ” や “ニューヨーク” などの都市名を打ち、それを早押しでこたえていくと言うものでした。優勝したのは「かしま」でした。確かに日本人向きのクイズだったかもしれませんね。

翌日はフォトエキササイズが行われました。これは、いわゆる記念撮影なのですが、各艦は陣形をきっちりと揃える必要があるため、それなりの技量が必要です。

これが終わると、対艦ミサイル実射訓練SINEXや着上陸訓練などを本格的な内容で実施していきました。

フリーダム級の「クーパーズタウン」。ステルス化した小型の船体が特徴的。
菊池雅之(masayuki kikuchi)
  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75

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