ユネスコ無形文化遺産に登録されたイタリア料理 〜伝統と革新が融合する「イタリア料理アカデミー」〜

パスタやリゾット、ピッツァなど、いつの時代も多くの人から愛されてやまない美食 イタリア料理。2025年12月には、世界を代表する伝統的な料理として、ユネスコの無形文化遺産に登録された。

そんな今、本場イタリアには、その伝統を保護し、イタリア国内外でその改善を推進、奨励することを目的とした文化機関「イタリア料理アカデミー(ACCADEMIA ITALIANA DELLA CUCINA)」(以下AIC)が存在する。

活動の歴史は長く、1953年にミラノのジャーナリストのOrio Vergani(オリオ・ヴェルガーニ)氏が文化、産業、ジャーナリズムの分野の優秀な代表者らと共に、ミラノに設立。2003年から、イタリア共和国の文化機関として認められている。

料理をその国の文化を最も深く表現するもののひとつとして捉え、守り受け継ぎ、国境を越えて表現するために、卓越した知識を世界的に促進する活動を70年以上にわたり行なっている。

1月にイタリア大使館で開催された、AICの代表団による「AIC賞」の授賞式では、新旧が融合し進化を続けるイタリア料理の魅力が披露されたので、その様子を紹介しよう!

開催を記念して最初に挨拶を述べたのが、ジャンルイジ・ベネデッティ(Gianluigi BENEDETTI)前駐日イタリア大使。

スピーチを述べる、ジャンルイジ・ベネデッティ前駐日イタリア大使。

「在日イタリア大使館とイタリア料理アカデミーが、一体となって取り組んだ本授賞式は、イタリア料理がユネスコの無形文化遺産に認定されたことをも祝福するものです」

「イタリアにとって、料理は単なる食ではなく、文化であり文明そのものです。本授賞式は、文化的な価値にとどまらず、経済の向上にも発展するものです。食文化のつながりにより日伊の絆が、これからも深まることでしょう」とスピーチを述べる、ジャンルイジ・ベネデッティ前駐日イタリア大使。

続いて、イタリア料理アカデミー東京支部代表を務めるエマヌエラ・オリギ(Emanuela Orighi)氏が登壇し、開催のスピーチを述べた。

イタリア料理アカデミー東京支部代表を務めるエマヌエラ・オリギ氏。

「イタリア料理は、社会的な知識体系として、世界中でこれまで、世代から世代へと受け継がれてきました。この遺産は、何よりも家庭の台所に息づいており、レシピは世代間の愛情深い対話を通して時とともに進化し、シェフや美食のプロたちの手によって、より体系的な表現へと昇華されています」

「ユネスコ世界遺産に登録されたイタリア料理は、もはや一国だけのものではなく、人類共通の責任として、集団的かつ国境を越えた保護を必要とする人類の遺産です。私たちは、この遺産のために尽力するよう求められているのです」と語るエマヌエラ・オリギ氏。

大使館の多彩なメニューをまとめた、デジタルブック「東京イタリア大使館 メニュー 2021–2026」。

さらに、こうした文化遺産を保護する取り組みとして、前大使夫人のサビーナ・ダントーニオ(Sabina D’Antonio)氏やエマヌエラ・オリギ氏、農業政策部の農業専門家アンナ・イエーレ(Anna Iele)氏らにより、これまでイタリア大使館で提供された多彩なメニューをまとめた、デジタルブック「東京イタリア大使館 メニュー 2021–2026」が披露された!

(左から)ジャンルイジ・ベネデッティ前駐日イタリア大使、エマヌエラ・オリギ氏、夫人のサビーナ・ダントーニオ氏。

日々多くの人の力や連携によって、イタリアの伝統的な料理が支えられ、世界的な文化遺産が守られていることを垣間見ることができる。

グッド・キュイジーヌ賞を受賞した、ステファノ・ダル・モーロ氏。

イタリア国内外で伝統と品質を尊重して、イタリア料理を提供するレストランやトラットリアに与えられる「グッド・キュイジーヌ賞(Diploma of Good Cuisine)」は、東京におけるイタリア料理の真髄を体現する格式ある「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ(Antica osteria del ponte)」が受賞!

伝統と品質の精神に基づき、レストランの美食ビジョンを統括するステファノ・ダル・モーロ(Stefano Dal Moro)氏に賞が捧げられた。

「レストランでは、イタリア料理の伝統を守るため、トリュフやポルチーニなど、四季折々イタリアの本格的な食材を使用しています。クオリティの高さが自慢で、責任を持ちお客様に、真のイタリア料理を提供できるものと信じています」と、語るステファノ・ダル・モーロ氏。

「イタリア料理は、もともと健康に良い料理です。長い目で身体の健康を考えて、伝統的なイタリア料理の味わいに是非触れて頂きたいです」とも話す。

マッシモ アルベリーニ賞を受賞した、ニノ・レンティーニ氏が創業した「Nino Caffé(ニノ・カフェ)」!

地域の伝統、倫理規定や規制を尊重し、優れた品質の食材と技術により作られた職人活動に授与される「マッシモ アルベリーニ賞」を受賞したのは、ニノ・レンティーニ(Nino Lentini)氏が創業した「Nino Caffé(ニノ・カフェ)」!

ニノ・カフェは、職人技による品質と強いコミュニティ意識が日々融合する、イタリアの社交の象徴的な場所だそう。受賞者はマッシミリアーノ・ムサッチ(Massimiliano Musacci)氏だ。

これらかけがえのない賞の受賞者は、イタリア料理の真髄をこれからも守り続けていくことだろう。

続いて会場では、イタリア料理の革新性を披露! 「Pinsa Romana(ピンサ・ロマーナ)」と呼ばれる、新たな種類のピッツァが紹介された。

2001年にローマのパン職人コッラード・ディ・マルコ(Corrado Di Marco)氏によって考案された、特徴的な楕円形のフォルムを持つ新たなピッツァ「Pinsa(ピンサ)」。

「ピンサ」という名称は、ラテン語の「pinsere(ピンセレ)」に由来し、「押す」、「生地を手で成形する」という意味。

現在では世界的に認知されたフードカテゴリーへと急速に成長し、特にヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアを中心に、イタリア国外でも消費者の関心が高まっているという。

楕円形の形をしており、ピッツァよりも外側はカリッとクリスピーな食感で、内側はモチっと柔らかく、ヘルシーで味わいが特徴だ。ひと口食べれば病みつきになる美味しさ。まさにピッツァの進化形といえるだろう。

DI MARCO JAPAN代表取締役のジョバンニ・カパネッリ氏。

2025年10月に東京に発足した、一般社団法人日本オリジナーレ・ピンサ・ロマーナ協会(Japan Originale Pinsa Romana Association)の会長を務めるDI MARCO JAPAN代表取締役のジョバンニ・カパネッリ(Giovanni Capannelli)氏も登壇し挨拶を述べた。

「ローマで25年前に生まれた『ピンサ・ロマーナ』は、小麦粉に加え、米粉を使ったブレンド粉で作られている新しいピッツァです。72時間長時間発酵し、天然酵母を使っていることから、グルテンを分解しやすく消化しやすいのが特徴です。米粉を使用しているので、日本人の味覚とも相性が良いでしょう」と語る、ジョバンニ・カパネッリ氏。

「私たちは、食べ物をライフスタイルのひとつとして捉えています。ピンサは、味の主張が強すぎないニュートラルな食べ物であり、甘い素材から塩味系まで幅広い食材と組み合わせることができ、多様なレシピ展開が可能です」

「海苔や明太子など日本独自のレシピを数多く生み出すことが可能です。皆さんが是非そのレシピを考えてみてください!」とも話す、ジョバンニ・カパネッリ氏。

そしていよいよ、この日のために考案されたというイタリア料理を披露! 北から南まで郷土色溢れる、イタリアの家庭に共通する特別な料理だ。

「Pinsa romana rosso(ピンサ・ロマーナ・ロッソ)」は、トマトソースをベースにし、ローズマリーソルト、サルサベルデ、エクストラバージンオリーブオイルで作られたシンプルな味わい!

小麦粉、米粉、大豆の3種類の粉に加え、天然酵母を使用したブレンド粉から作られ、驚くほど軽くてサクサクとした食感が特徴だ。

「Pinsa picante(ピンサ・ピッカンテ)」は、トマトソースをベースにした生地に、サラミ・ピカンテやリコッタチーズ、セミドライトマトをトッピングした、ピリッとした辛さが特徴のピンサ。

一般的なピッツァと比べて、グルテン含有量が非常に低く抑えられており、消化によく食べやすいのが魅力。栄養面においても、脂質、カロリー、炭水化物、タンパク質などが低く、ピッツァより健康的な食品とされ、人気が高まっている。

風味豊かでありながらも、ピッツァよりもヘルシーで、誰もが気軽に食べることができる。伝統を守りつつも進化を遂げるイタリア料理が、いかに人々の健康を根底から支える存在であるかが分かる。

南イタリアの伝統料理である、ブロッコリーソースのパスタ料理「Cavatelli con broccoletti(カバテッリ・コン・ブロッコレッティ)」。

穴のあいた貝殻のような形のパスタ「Cavatelli(カヴァテッリ)」を、ブロッコリーと一緒に煮込み、アンチョビ、ニンニク、唐辛子と絡めるのが定番。くたくたに柔らかく煮込んだブロッコリーの素朴な味わいが、パスタと絡まって絶品!

小麦の生産に不適な北イタリアの寒冷な山岳地帯で、主食とされてきたとうもろこし粉のお粥「Polenta(ポレンタ)」。

「Polenta con salsiccia(ポレンタ・コン・サルシッチャ)」は、熱々のポレンタに、イタリアの生ソーセージである、香ばしく焼いたSalsiccia(サルシッチャ)やトマト煮込みを添えた、イタリア北部の代表的な冬の家庭料理だ。粥状で、日本人の味覚にもマッチする優しい味わいが特徴だ。

イタリアを代表する、日本でもポピュラーなパスタ料理であるボロネーゼの「Lasagna(ラザニア)」。ミートソースとラザニア生地を層状に重ねてオーブンで焼き上げた、濃厚な味わいの一皿は、特別感があり、たまらなく美味しい!

イタリアの伝統料理であるローストポーク「Porchetta(ポルケッタ)」。外側は香ばしく焼き上げられジューシー、中は柔らかくしっとりとした骨なしのポークロースト。爽やかなハーブの香りが合わさり、極上の美味しさだ。

またイタリア料理といえば忘れてはならないのが、デザート「Dolce(ドルチェ)」! この日披露されたのは、伝統的なイタリアのデザート「Zuppa inglese(ズッパ・イングレーゼ)」と、近年新しいデザートとして考案された、スイート・ピンサ!

特に象徴的なのが、焼いたメレンゲが表面に施された、高級感のあるデザート「ズッパ・イングレーゼ」。イギリス的な要素はなく、起源は16世紀のエステ家まで遡るという格式高いデザートだ。

リキュールを染み込ませたスポンジケーキと、カスタードを層にした、ティラミスを彷彿とさせるデザートで、焼いたメレンゲの風味が合わさり、特別な美味しさを醸し出す。イタリア料理の歴史の深遠さを、実感することができるデザートだ。

レモンとチリの大胆な組み合わせのピンサは、程よい辛さと酸味、甘さが絶妙に調和した、フレッシュな味わいを楽しめる!

カスタードクリームとオレンジのピンサも、デザートとして食べることができるスイートピンサ。クリームが加わることで、サクサクした生地の食感がより強調され、これまでに味わったことがない美味しさ!

伝統的なケーキやデザートと比べて、スイートピンサはバランスが良くカロリーも低め。旬のフルーツなどと組み合わせれば、ダイエット中でもヘルシーに食べることができるのが嬉しい。

「スイートピンサは、通常のピンサと同様の生地を使用していますが、健康的であることから近年人気があります。持続可能なデザートという訳です!」と、ジョバンニ・カパネッリさんも語る。

伝統を守りつつも、次々と新たな挑戦を続けるイタリア料理は、“生きることの喜び“ を体現する料理といえる。その根底には、作り手の想いや料理への愛情、健康にかける願いが込められている。だからこそ、時代を超えて、人々の記憶に残る美味しい料理がこれからも受け継がれていくのだ。

イタリア料理アカデミー
在日イタリア大使館
アンティカ・オステリア・デル・ポンテ
Nino Caffé
一般社団法人日本オリジナーレ・ピンサ・ロマーナ協会
(Japan Originale Pinsa Romana Association)

Pinsa Romana専門店「Bontà Italia」

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