指先サイズの動く工具!? 日本一トンがった鋳造メーカー・キャステムの”日本の新・ものづくり” #3

”日本の新・ものづくり” #3

日本一トンがった鋳造メーカー・キャステムに垣間見る、素晴らしき日本の新・ものづくり第3回。東京・日本橋にあるコンセプトショップ「metamate(メタマテ)」の金属雑貨コンシェルジュ・長瀬友行さんが語る「ミニチュアツール」を作った本当のワケ。

前回の「キャステムの日本の新・ものづくり #2」はコチラ


やってダメならすぐ撤退!まずは先に走ってみる

mono:数々のユニークな展開について世間的な反響はいかがですか?
長瀬:製造業界の中ではトンがっているなとは言われますが、一歩外に出てみると、まだそんなに浸透はしていないという感じでしょうか。話題になったモノには気づいてもらえますが、そこからキャステムへ繋がっていくかというと、繋がっていなくて。なので、「メタマテ」はキャステムのアンテナショップであり、お客さまにしっかり届く、価値の届け方を模索しています。

mono:キャステムの本業の方もようやく元に戻りつつあるとか?
長瀬:そうですね。キャステムはなるべく特定の企業や業界に売上が集中しないようにしていて、半導体関連や医療機器、工作機械など幅広い業態をカバーしています。どこかがダメでも別のところは大丈夫といったように、景気に大きく左右されることは比較的ありません。急激には伸びにくいけど、急激に落ちることない。ただ、鋳造業自体、斜陽産業と言われているので、今後20年先に向けて鋳造に変わる柱を作っておかなければなりません。とにかくやってみようの精神でアイアンファクトリーでは新しいものづくりを行っていますし、実は農業も。沖縄の宮古島でトマトを栽培しています。やってみてダメだならすぐ徹底。まずは先に走ってみる。というのも、その時にしかわからない肌感というのがあるじゃないですか。その辺りはやはり技術者の会社なんでしょうね。机上の空論は何も生まない、という感覚です。

mono:「メタマテ」では何を伝えたいですか?
長瀬:しっかりとモノの価値を伝えた上で、日本の技術力と、いいモノを大事に長く使うという日本人の精神を伝えたいですね。そのことをわれわれ製造業から発信した方が説得力があると思います。商品を買うときに作家の名前で買うというのはありますが、アソコの技術は凄いから買う、というのはあまりありません。そういう状況がもどかしいのです。この技術だから1万円で買うんだとか、技術が凄いから買う、というムーブメントを起こしていきたい。技術力で値決めできる。ここ「メタマテ」でそういう動きができるといいなと考えています。

”日本の新・ものづくり” #3

技術者をも唸らせるモノを作りたかった

mono:ところで、この「ミニチュアツール」を作った理由は?
長瀬:「ミニチュアツール」も技術を伝えるのが一番にあって。展示会でキャステムのメタルインジェクション製法(※)の技術を伝えるために作ったんです。微細加工が得意で内視鏡手術に使うハサミとか、顕微鏡で見ないとわらかないような微細なモノを量産できる技術です。例えば「ミニチュアツール」のすきばさみは櫛刃のギザギザまで忠実に再現しています。コレ、量産できますか?って言ったら正直、どこも無理。それがメタルインジェクションならできる。まあ、金型を作るのがソコソコお高いんですけどね。イニシャルコストはかかりますが、大量に作るならメリットがある製法です。世界最高峰の企業からオーダーもいただいていますし、世界に誇れるレベルの技術だと思います。
※メタルインジェクション製法:米国で特許を取得したキャステムの独自技術で、医療機器や電子機器などの精密な部品など微細成型加工で活躍。粉末状の金属粉とバインダーを混ぜ合わせ、金型に射出することで目的の形状の金属部品に加工できる。


”日本の新・ものづくり” #3


mono:全部、本物の工具と同じように動くんですよね?
長瀬:ハイ! 技術を伝えるために作ったので、動くことには結構こだわっています。最初に作ったミニチュアのハサミは切れると危ないので切れない仕様だったのですが、(キャステムの)戸田社長が「切れないとハサミじゃないよね」と言い出しまして……。せっかくだからちゃんと作ろうよ、と。現場的にはオモチャの工具で指を切ってしまたらクレームになりかねないと言うのですが、戸田社長は「いやいや、オモチャでななくて、本当に切れると説明すればいい」。結果、すべて実際の工具と同じように動く「ミニチュアツール」ができたわけですが、ミニチュアサイズだけど、パーツを研磨して切れるようにしたのではなく、キャステムのメタルインジェクションで射出成型したパーツを組み立てるだけで、ハサミとして切れる精度になる。技術者が聞いても、あ、凄いなと思われるものを作りたかったんです。  

mono:ピンズもラインアップしているんですね!
長瀬:一般販売するときにパッケージをリニューアルして、それでもまだインパクトが弱いので、裏にピンをつけて身につけられるピンズタイプも販売したわけです。今後、横に広げていこうというアクセサリー展開ですね。ただ、ピンズは素材にステンレスを、通常モデルには工具鋼を使用しています。本物志向というか、言わなきゃわからないモノを作る。例えば、アルミ削り出しと言われても、一般的にはそれって何?となるじゃないですか。でも、その技術が実は凄いことを伝えられれば、あ、なるほどね、となると思うんですよね。  #4へ続く


”日本の新・ものづくり” #3
”日本の新・ものづくり” #3

「ミニチュアツールセット」:サイズ26cmと指先サイズながら本物と同じように動くミニチュアルール11種のセット(価格1万780円)、単品(990円)でも購入でき、身につけられるピンズタイプは3300円〜。

”日本の新・ものづくり” #3


”日本の新・ものづくり” #1

「meta mate」
金属雑貨コンシェルジュ
長瀬友行さん
1980年岡山県生まれ。2011年キャステム入社。経理、新事業部アイアンファクトリー、広報を経て現職。「ネタ系商品もたくさんやっていますが、日本の技術力の魅力を伝えていきたいですね」。

meta mate誠品生活日本橋店
東京都中央区日本橋室町3-2-1 COREDO 室町テラス2F
TEL/03-6910-3530 営/10:00〜21:00※時短営業中(11:00〜19:00)定休日/元旦のみ https://www.metamate.jp

キャステム https://www.castem.co.jp

下川冬樹(fuyuki shimokawa)
  • 80’sをこよなく愛するグラサン男。モノづくりやライフスタイルに強いこだわりを持つ人々の熱血応援サポーター。みなさんの熱いハートと想いを写真と文でほどよくゆるくお届けします!