[#011]長野オリンピック・メダルを手掛けた人物が、漆蒔絵で腕時計を製造

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文・小野正章/『世界の腕時計』副編集長

長野オリンピック・メダルのプロトタイプ
長野オリンピック・メダルのプロトタイプ


1998年に長野で開催された第18回冬季オリンピック。日本は男子スキージャンプを始めスピードスケートやショートトラック、女子モーグルなどで5個の金メダル獲得し、銀と銅を含めると合計10個ものメダルを量産した大会だった。

ところで、このときのメダルの絵柄を覚えている人はいるだろうか? 

最先端の金属加工技術によって作られたメダルは、日本の伝統工芸である漆蒔絵や七宝技術が駆使されて、それはまさに芸術的といえるほどの高い完成度を誇ったのである。

さて、この漆蒔絵を長野冬季オリンピック組織委員会に提案し、実行に移したのが木曽平沢で漆器店を営む伊藤猛さんだ。

伊藤さんは世界で初めて金属に漆を塗る方法を考案し、セイコーの提げ時計などで実用化を図った人物。オリンピック・メダルの製造にもそのノウハウを応用して、日本独特のすぐれたメダルを作り出した。

その伊藤さんが久々に腕時計を手掛けたという情報を入手し、さっそく木曽平沢の工房を取材した。

今回、完成させたのは“月”と“太陽”と名付けられたふたつのデザイン。ともに金粉や銀粉を漆の文字盤に蒔いて、オリジナルのユニークな表情を完成させた。

ここでは製造工程の一部と製作途中の文字盤のみをお見せする。腕時計の全貌は本誌No.108(6月8日発売)に詳しいので、ぜひご一読いただきたい。

精製した漆を文字盤に塗布精製した漆を文字盤に塗布精製した漆を文字盤に塗布
精製した漆を文字盤に塗布。さらに蒔絵を施して徐々にデザインが完成する。
まる又漆器店まる又漆器店
作業中の伊藤さんと木曽平沢のお店「まる又漆器店」。