菊池雅之のミリタリーレポート 米国際観艦式で見た各国帆船

2026年7月4日、ニューヨークにおいて、アメリカ合衆国建国250周年を記念して、国際観艦式が開催されました。2025年に米海軍は創設250年を迎え、これを祝して昨年より実に様々な式典や公開行事を行っており、今回の観艦式は「Navy and Nation250」として、建国記念式典でありながら、米海軍創設を祝うものともなっていました。

会場となったのはニューヨーク州とニュージャージー州を流れるハドソン川です。その河口からマンハッタンの中心街に沿って、招待された各国海軍艦艇が停泊しました。南米や欧州、そしてアジア、アフリカから海軍艦艇が参加し、その中には、日本の「かしま」と「やまぎり」の2隻からなる練習艦隊も含まれていました。この2隻は遠洋練習航海の途上、国際観艦式に合わせニューヨークへと寄港しました。各国艦艇は、船体を旗で彩る満艦飾を実施しており実に華やかでした。

当日は、ハドソン川上空を米軍や世界各国の航空機による航空観閲式が行われました。その模様につきましては、航空ファン10月号をご覧ください。

今回注目したいのは、ハドソン川を舞台とした帆船パレードです。

帆船とは、マストに張った帆に風を受けて進む船のことです。なんとなく優雅な船旅をイメージされる方が多いのではないでしょうか。実は、世界では、今でもこの帆船を運用している海軍や海上法執行機関などがあります。役割は若手士官や乗員の教育が目的です。それを練習帆船と呼びます。もちろん、世界広しと言えど、現代では、帆船を戦闘に用いている海軍はありません。あくまで、仲間との絆を深め、シーマンシップを醸成することが目的です。現代の帆船は、風だけを推進力としているわけではなく、ディーゼルエンジンを搭載して、それを補助動力としています。役割も、操艦も、かつての帆船とは大きく異なるのです。

国際観艦式には、数多くの帆船が参加したので、一部注目すべき帆船をご紹介したいと思います。

まず、「白い貴婦人」や「浮かぶ大使館」とも呼ばれているチリ海軍の練習帆船BE-43「エスメラルダ」です。就役したのは1954年のこと。そこから今まで、改修を加えながら、世界を巡ってきました。その途上、何度か来日しました。

イタリア海軍の練習帆船アメリゴ・ヴェスプッチ。1931年2月22日にイタリア海軍2番目の帆船として就役。「世界一美しい帆船」との呼び声も高い。

美しさで言えば、世界で一、二を争うイタリア海軍の練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」を忘れるわけにはいきません。1931年2月22日に就役しました。2024年8月25日に東京国際クルーズターミナルへ寄港しました。これが初来日となりました。

最後にちょっと信じられない話を…。なんと、ナチス・ドイツ海軍の帆船は現在も生きています。それが、米沿岸警備隊が保有する練習帆船WIX-327イーグルです。1939年、ナチス・ドイツ海軍の練習帆船として就役しました。しかし、第2次世界大戦が終結すると、賠償艦としてアメリカに引き渡されました。受け取ったのが米沿岸警備隊であり、1942年5月15日に再就役させました。そこから、士官候補生の教育などに当たってきました。

帆船はその美しさから、ファンも多いです。逆に日本では知名度や関心度が低いようです。しかし、今回取り上げた「エスメラルダ」を筆頭に、来日する帆船も増えており、ゆっくりとしたペースですが、少しずつ人気も上がっているように見受けられます。

皆様も是非、帆船にご注目されてはいかがでしょうか?

菊池雅之(masayuki kikuchi)
  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75

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